中国は「環境問題のデパート[1]」と呼ばれるほど、近年その環境の悪化が深刻化している。その背景には、中華人民共和国建国、改革開放政策にかけて中国政府がとっていた、環境を全く省みない経済発展を第一に考えていた政策にある。そのため、環境保護は経済発展の影に隠れてしまい、人々の環境に対する関心も薄かった。したがって中国政府が環境対策に本格的に取り組み始めたのは、80年代になってからであり、その間は全くの野放し状態であった。中国の環境政策は、1979年9月に全国人民代表大会常務委員会によって、「環境保護法(試行)[2]」が採択されたことを機に、これに基づいて具体的な法律「大気汚染防止法(1987年)」、「水汚染防止法(1984年)」、「森林法(1984年)」、「野生動物保護法(1988年)」、「海洋環境保護法(1982年)」、「環境騒音汚染防止条例(1989年)」など次々と制定されることとなった[3]。こうして80年代にようやく本格始動した環境対策は、建国後30年間の環境破壊のツケを払いつつ、同時に経済発展に伴い新たに発生する環境問題にも対応していかなくてはならないという難題に現在直面している。
⇒そのためには、自治体の環境政策立案・実施と三洋電機との関係を明らかにする必要がある。(どうやって?)
[1] 大気汚染、酸性雨、水質汚染、砂漠化、廃棄物問題、地盤沈下など多彩な環境問題が同時に併発している。中でも特に深刻なのが、大気汚染と酸性雨。
[2] 10年間の試行を経て1989年12月に廃止され、「環境保護法」が全人代常務委員会によって採択された。「環境保護法」は、立法目的、環境保護の基本原則、法律責任などについて明文化した総合基本法。(中国研究所『中国の環境問題』新評論 1995年)
[3] 中国研究所同掲
[4] 酸性雨の原因となる二酸化硫黄の年間排出量(2004年)は、日本の約30倍の約2159万トンで世界最悪の水準(読売新聞 2005年5月11日付)。また、二酸化炭素排出量に関しても、2001年の排出量はアメリカに次いで2位となっている(谷口誠『東アジア共同体』岩波新書 2004年)。
[5] 大連市は工業用水の不足、大気汚染、海産物資源の枯渇などの問題を抱えている。
[6] 「環境マネジメントシステムに関する国家規格」に基づき、環境保護総局などが主要都市の国家レベル経済開発区やハイテク産業開発区、観光地区などを対象に認定している規格。モデル区には環境対策の強化や環境に対する企業行為の規範化、環境保護作業を経済発展のシステムに組み込むことが求められる。
[7] 以前、北京を訪れた際には全く見られなかった光景。
[8] 三洋電機ホームページ http://www.sanyo.co.jp/ 2005/09/27
[9] 三洋電機ホームページ同掲
[10] 両国の学生が大連市において市民の環境意識高揚のために、意見交換、ゴミ拾いやゴミ箱の設置、公園の草刈など環境美化運動を行った。