2005年1月18日
宇都宮大学院国際学研究科
MK040111
ディーコフ パーウェル
NPOと企業、NPOと行政の差異について。
NPOはNot-for-profit
Organizationという意味です、その英語の意味には非営利組織という日本語が当てられています。
※Non-profitとNot-for-profitの差異
営利か非営利かという問題はNPOという概念を構成する一部を担っていますが、全てではありません。すなわち、「非営利であればNPOである」というのは間違った考え方です。もちろん、「営利目的であってNPOである」という事はあり得ません。
非営利(Not for profit)→NPO活動・・・これだけでは不足している。
営利(For profit)→NPO活動・・・・・・これはあり得ない。
NPOとはどういった組織体について、その非営利組織という言葉から考察してみます。
営利とは何か?
非営利であるという事は、利益を上げないという意味です。では利益とは何を指しているのでしょうか?
例えば1,000円のお弁当を100個、販売するとします。1,000円×100=100,000円という 売り上げが生まれます。その売り上げから材料費などのコストを差し引きます。
100,000円ーコスト50,000円=50,000円
この50,000円から、人件費などの直接商品を構成していない費用を差し引きます。
50,000円ー45,000円=5,000円
この5,000円を純利と呼びます。この純利がProfit、利益に当たります。
この純利の追求を目的としない活動がNPO活動であるために必要な一つの要素であると言えます。
ですから、NPOとは、人件費やその組織を維持するために必要な様々な経費を獲得する事は非営利という言葉です。 NPOであるには、組織維持のための経費を捻出している事が条件になります。
この、組織を維持しているということが重要です。NPOは組織体を意味する言葉であり、その組織を維持する活動は「お金」と密接に結び付いているのです。
よく、「NPOの事業だから、無料でしょう」と言われる事がありますが、むしろ「NPOだから有料です」という考えが正解です。
ミッションについて
NPOであるために必要な一つ要素が「利益の追求を目的としない」、それ以外の要素は、ミッションという要素になります。
このミッションという要素はNPO活動という概念の本質であると言えます。このことは、ミッションという要素が本質であり、非営利(Not for profit)であることは本質ではないという事です。
そのことは他のセクターと比較してみるとよくわかります。セクターというのは日本語では部門と訳される言葉ですが、社会を構成するセクターは3つであると考えるのが一般的です。
第一セクター 行政
第二セクター 企業
第三セクター NPO
これらのセクターを比較してみましょう。
1企業とNPO
先ず注意しなくては行けないのが、組織の運営維持という意味では、企業とNPOには差異がないという事です。
・人件費が必要
・意志の決定機関が必要
・運営の責任者が必要
・お金の流れを明確にしなくてはならない
まだ他にもあるが、組織を運営していく上での主だったものは、企業とNPOは共通だと言えます。
ここまで一緒だと、例えば収益のあがっていない赤字経営の会社はNPOであると言えるような気がしますが、やっぱりそれは違います。
その差異を担っているのが、ミッションという要素です。
「ミッション」は日本語で「使命」と訳されますが、今ひとつ何を言っているのかわからない感じがします。
アメリカではキリスト教を基本とした社会貢献事業が数多くあります。その社会貢献を行う根拠は神から与えられた使命(ミッション)を達成するための活動だと定義されます。
しかし、この感覚は日本の社会においては、なかなか理解出来ないもので、日本にも社会貢献事業はあり、またそういった活動を行いたいと考えている人もたくさんいます。その活動を行いたいと感じる根拠は「使命感」よりも「個人的な倫理観」であり、ミッションと言ったときの意味は「社会的な目指すべき目的」と言った方が日本にはあっている。
アメリカなどの場合はNPOであることが、様々な優遇措置の対象となったり、活動支援の基準となったりしますので、ミッション型の活動を行う場合には必然的にNPOセクターに所属するという事になります。こういった点では日本では、NPO法人を取得すること、又はNPOセクターに属する事は無意味だと言う人がいても不思議ではありません。
しかし、日本でNPOセクターであることを言明し活動することは、マネジメント以外の部分で重要な意味があります。それは、「セクターの創造」という意味です。
もし、運営上も社会認知上も無意味だから、という理由でNPOセクターを無視したのならば、日本におけるNPOセクターは永遠に社会の中で位置付く事が出来ません。NPOセクターが社会の中で位置付かないということは、NPO活動の支援やNPOの社会的な価値は永遠に向上しないとを意味します。これは、新しい社会システムを創造するうえで大きなリスクとなります。NPOセクターであると言明する団体が増え、それを支援する人々が増えればセクターは構築され、社会的な整備(法律など)も整って行くと考えられます。
こういった大きな視点を持ってNPOとして活動していくことが、「今」という時代におけるNPOの責任一つだと考えます。
まとめ
NPOセクターと企業(第二セクター)との差異:
NPO(NPOセクター)の本質
非営利、独立的、自発的、この3つの基本を踏まえて、ミッションを中心としたマネジメントを行っている組織
第二セクター(企業)であるための本質
営利を中心としたマネジメントを行っている組織。
2行政とNPO
行政とNPOの差異もまた曖昧なものです。組織の運営に関する様々な機構は行政も企業もNPOも本質的に差異はありません。さらに行政は公益事業しか行わないわけですし、ミッションの意味から言ってもNPOとの差異を見つけることが出来ないかもしれません。
しかしNPOと行政の差異は明確です。それはミッション。
NPOがミッション型であると言ったときに、それに付随して表れる考え方に「ミッションを達成すれば解散する」というものがあります。NPOにおける全てのミッションがこういった考え方を持っている必要はありませんが、NPOのミッションには「ミッションを達成すれば解散する」という考え方をよしとするような何かがあります。
それに対して行政の掲げるミッションはそれを達成したからと行って、行政が解散するという事にはなりませんし、そういった事を言う人もいません。なぜこの差異が生まれるかと言えばミッションの「質」が異なるからです。
NPOが掲げるミッションは「明確」であるという特徴が必要です。行政のミッションは「公平、平等」である必要があります。
NPOミッションにおける「明確」の意味は、目的が絞れているという意味です。誰に対して何を提供し、どうしたいのか(どう変えたいのか)ということがはっきりと認識されていて、その目的(ミッション)に向かってまっすぐに進むというイメージです。
それに対して行政のミッションは出来るだけ多くの人々に出来るだけ公平なサービスを提供し、多くの人々が平等に福利を享受出来ることを目指しています。
このことがNPOと行政のミッションという視点からみた「質」の差異になります。
「公平、平等」を基本としたサービスが適したものも有ります。例えば日本の健康保険制度は「公平、平等」を基本にした素晴らしいサービスだと言えます。
このように、行政が行うサービスには、行政が行うに適したものとそうでないものの二つが有るのです。このサービスに関するゾーニングを行わなければ、サービスの質は永遠に向上しません。そして、行政が行うのに適さないサービスを担うのがNPOという事になります。
具体例を考えて見ましょう。
例えば、NPOがミッションとして「目の不自由な人への点字本の配布」という事を掲げたとします。そうすると、そのNPOはそのミッションのために資金を集め、そのミッションを達成するために全てをつぎ込みます。そして、もし点字本の配布が完了したならば、そのNPOは解散します。
これが行政だと、点字本の配布という同じプロジェクトを立ち上げたとしても、そのプロジェクトに予算の全てをつぎ込む事は出来ません。多くのバランスの中で、予算が決められますし、もっと優先順位の高いミッションが現れればこの予算はなくなる事もあります。これは税金が目的を定めずに徴収したものであり、行政が目指すサービスの基本は出来るだけ多くの人に福利をもたらす事にあるのですから、当然です。
それに関連して非常に少数の人々に向けられたサービスや革新的なサービスは行政ではなかなか出来にくいということになります。しかし、NPOでしたら、それがどんなに少数例えば1人であったとしても、賛同する人々がいれば活動は出来ますし、ミッションの達成も可能です。
このように行政とNPOのもっとも大きな違いは「ミッションの質」だと言えます。
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