2004年11月30日 MK040104
比較政策研究
賈 臨宇
発展途上国の環境問題
日夜、間断なく発生する廃棄物への対処策として、最終的なゴミを適正に処理したり、埋立処分するよりは、ゴミを減らし、リサイクルに重点をおこうとする考え方は、ほぼ合意されてきたように思う。埋立処分場の立地が容易に進まなくなってきた、ダイオキシン問題から生じている焼却処分への懸念などが、この動きをより促しているともいえる。こうした動きは世界共通流れで、循環を意図した政策や循環保全ための技術開発が行われている。そうした流れの中で、開発途上国では、どのような環境問題が発生しているのだろうか。
一、焼却施設が整備されていないため、ゴミはほとんど処分地に野積みか、またそのまま埋めることになっているのが現実である。
中国N市の事例に、現地調査し、分析・考察を行うことにした。
中国N市では、人口は120万人規模の都市であって、一日一人当たり廃棄物量は0.9から1.2キログラム位で、ゴミの分別収集においては、極一部の所は、分別ゴミボックスが設置されたが、全体収集システムとしては、分別収集の対応が見られないため、一括収集の実態である。ゴミ収集責任は、区政府が監督し、業社に依頼することとなっている。収集の頻度は、毎日一回である。
廃棄物の中では、缶やびん、ペットボトル、紙類などゴミの中から金になるものを拾い集めることで暮らしている人々の仕事対象になっている。ある意味では、これらの人々からなり立った社会層は、リサイクルにおいては、ポジティブな意味を持っているともいえよう。一方、換金できるゴミを拾う際、ゴミを散らかしたり、搬運後、無断に捨てたりして、ゴミの拡散の面では、ネガティブな面も有している。資源化可能なゴミは拾われるが、行政としての強制施策や再利用・資源化の施策は特にない。有害物(乾電池、蛍光灯など)単独で収集の体制は十分でなく、実質的には規制が行われていないに等しい。そのため、有害物は一般ゴミと混在しているのは現状である。ちなみに、医療廃棄物は、別の収集方法があって、処分されている。
N市では、ゴミの中間処理方法は焼却ではあるが、合併により廃棄物量は増加する傾向が見られるため、唯一の焼却施設の焼却能力を超え、やむをえず、焼却しきれないゴミを最終処分場へとはこばれ、そのまま埋めることになっている。
N市には最終処分場は、合計差3ヶ所があって、2ヶ所が建設中である。中には、1986年使用開始、2001年11月に閉鎖されたA処分場は遮水工がなく、現在(2004年10月)、稼働中の2ヶ所の中で、B処分場には遮水工はないが、2001年9月に使用開始したC処分場は、もっとも進んだC処分場である。C処分場は行政と民間企業共同で、会社を設立し、ドイツの技術を導入して、焼却工場および最終処分場を運営している。C処分場は、焼却能力は一日900から1000トンぐらいで、余熱を利用して、発電装置も設けている。焼却灰は遮水工の完備した最終処分場に埋められ、浸出液も汚水処理施設へと浄化される。しかし、遮水工の設計基準および遮水シートの枚数などのデータは、企業秘密と主張している当事者から、入手できなかった。
閉鎖されたA処分場は、当初の計画によって、緑化して,公園が建設される予定の現地に、調査を行った。公園がなく、一部は工業用地として、新しい工場が建てられ、道添えの部分は少し緑化されているが、残りの大部分無残な状態で、ゴミの山がそのまま放置されている。
B処分場は現在稼働中の最終処分場として、焼却しきれないゴミすべて、ここに搬運されてきて、悪臭が大量発生し、海に瀕しているため、海洋および地下水汚染も心配される。
二、廃棄物の最終処分の主たる方法は埋立処分である。廃棄物の埋立処分施設はとは、都市ゴミの最終処分のために工学的に設計された施設をいう。高い埋立技術で設計することにより、土壌系、気系、水系ヘの環境負荷を最小化することをめざさねばならないが、このように、発展途上国では、混合廃棄物の多くを単に投棄してきた事実とこの投棄に似よる環境問題の顕在化がある。(酒井信一、2000)
一部先進国は、この事実への反省から、埋立処分は単なる混合系廃棄物の投棄から、漏水防止のライナー、浸出水処理装置、埋立ガス処理装置を有する工学的に高度設計されたシステムによる管理変わってきた。
日本では1997年に廃棄物処理法の改正が行われ、その改正に伴い「一般廃棄物の最終処分および産業廃棄物の最終処分に係る技術上の基準を定める命令」が1998年6月17日から施行された。その中では、管理型最終処分場に対して、遮水工にかかる基準強化、浸出水の処理などにかかる基準強化、地下水の水質検査、維持管理記録の作成保存が定められた。
様々な技術対策を講じて、廃棄物を封じ込め、浸出液を回収処理し、埋立ガスを制御したとしても、完全な環境進入防止がかかれるわけではない。かりに環境進入が起こるとすれば、その際に生ずる環境への影響は、インプットとしての廃棄物の性状次第であるといえる。(酒井伸一、2000)
こうした文脈で登場してきているのが、特定の廃棄物に対する埋立概念であり、すでに数々の国で政策展開されている。日本の廃棄物処理法において廃油、廃酸・廃アルカリを埋立禁止していることもその一例である。
オランダは特定の廃棄物に対して埋立禁止を政策として、明確に打ち出している。Bulletin of Acts, Orders and Decrees of the kingdom of the Netherlands[1995].
(表1)
ドイツでは埋立クラス1はTOC(全有機炭素量)1%未満の廃棄物のみ受け入れ可能とされており、これは埋立前に熱変換処理が必要であることを意味する。埋立クラス2にはTOC3%までは可能であるが、このクラスの埋立には厳しい条件がつくとされている。結果的に、ドイツでは混合された家庭ゴミを直接埋立処分することはできなくなりつつあるといえる
このように、環境への負荷を最小化することにより、埋立処分が重要な循環廃棄の総合的対策と一つの要素とならなければならない。減量、リサイクル、適正処理を重ねたとしても、幾許かの最終処分対象物は残り、埋立処分はゼロにすることがでないのである。
したがって、特定の物質や廃棄物を埋立から回避する考え方は、再生可能性の視点からも、汚染可能性を避けるという視点からも重要な政策となりつつある。
三、しかしながら、途上国では、一部の地方自治体は首長の業績を評価する際、この地区の経済成長率を評価基準とし、成長率が7%か8%より落ちた場合、解任される。したがって、首長の関心は経済成長率にあって、環境への配慮は薄くなるのも当然であろう。
ほとんどの途上国は経済成長至上主義的な政策の中で、経済成長を重視しるあまり、環境対策が遅れがちである。環境汚染を最も受けるのが貧困層である。大気汚染や重金属による海や河川の汚染によって、地元住民に健康被害が生じる場合、地方に住む人々の所得は低く、保健医療制度が整備されていないため、住民の健康管理は不十分で、汚染にさらされたとき、其の被害が大きいものとなる。しかも、途上国では健康保険制度は幹部されていない。したがって、健康被害を受けたとしても、治療費が負担できないため、満足な治療を受けられる人は、わずかである。
さらに、こうした被害を受けても、補償がなされることは少ない。住民は処分場などの浸出液、排煙と被害との因果関係を証明できるだけの科学的知識を持っていない。そして、裁判制度も、一般の住民が起こす公害訴訟に対応できる状況にはない。
参考文献
酒井伸一 他『循環型社会科学と政策』 有斐閣 2000
鈴木幸毅 『循環型社会の企業経営』 税務経理協会 2000