比較政策研究
平成16年11月2日
MK040114 森澤絵美
国際的視点からみた日本の「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」
―女性に対する暴力特別報告者のDVモデル法案報告書と比較して―
●論文構成
はじめに
1.女性に対する暴力特別報告者のドメスティック・バイオレンス モデル法案報告書(E/CN.4/1996/53/Add.2)について
2.日本の「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV法)について
3.DVモデル法案報告書と日本のDV法を比較検討することからわかる日本のDV法の課題について
おわりに
●論文内容
「女性に対する暴力」
→公的生活で起きるか私的生活で起きるかを問わず、性別に基づいて起こる暴力行為であって、女性に対して肉体的・性的・心理的な傷害や苦しみをもたらす行為+そのような行為を行うという脅迫等をいう(例:性犯罪、売買春、DV、セクシュアル・ハラスメント等)
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国際社会が優先事項の一つとして取り組まなければならない課題の一つ
★1.女性に対する暴力特別報告者のDVモデル法案報告書について
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1996年、DV報告書(E/CN.4/1996/53)の添付書として、女性に対する暴力特別報告者*が人権委員会に提出したもの
内容:DV法制定の目的、DVの定義、抗議申し立てのメカニズム、司法官の任務、刑事上の手続き、民事上の手続き、サービスの規定について
→・DV法の範囲内に入る関係は妻、同居人、前妻、パートナー、恋人、女性親族、女性の家政婦を含むべき
・DVは家庭内の女性に対する家族によるジェンダーに基づいた肉体的・精神的・性的虐待の全ての行為をいうとされるべき
・被害者などからの申し立てにあたって、特に警察の義務について強調
・司法官の義務として、加害者の一方的な一時的拘束命令や、保護命令を出すことで、被害者の安全を確保すべき
★2.日本のDV法について
法律の目的:配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のため、配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備すること
内容
→第一章…配偶者からの暴力の定義とその被害者の定義(第1条)について
・「配偶者からの暴力」とは、配偶者(事実婚含む)からの身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう
・「被害者」とは、配偶者からの暴力を受けた者(前妻含む)をいう
第二章…配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のために働く配偶者暴力相談支援センターの業務内容について(第3条〜第5条)
第三章…被害者の保護における、DV発見者、配偶者暴力支援センター、警察官、被害者の保護のための関係機関の果たすべき役割について(第6条〜第9条)
第四章…被害者を加害者の更なる深刻な暴力から守る保護命令(第10条〜第22条)
第五章…DVに関する教育及び啓発の必要性、DVに関する調査研究の推進、DVに関わる民間団体への国及び地方公共団体による援助など(第23条〜第28条)
第六章…保護命令に違反した者の罰則と虚偽の保護命令申し立てを行った者への罰則
⇒・配偶者からの暴力に苦しむ被害者により視点をおく
・被害者の生命や身体に危害が加えられる危険性があるとき、被害者の申し立てにより出される保護命令への期待大きい
★3.DVモデル法案報告書と日本のDV法を比較検討することからわかる日本のDV法の課題について
@DVの定義について
・DVモデル法案報告書…DVは、肉体的・性的暴力から精神的暴力に及ぶもの
日本のDV法…「身体的暴力」
→身体的暴力と精神的暴力の区別することは、DVの被害状況の実態に即しているはいえないので、精神的暴力+性的暴力も含むように見直すべき
A保護命令について
・DVモデル法案報告書…保護命令の対象は、DVの被害者、親戚、福祉労働者、DV被害者を援助する人
日本のDV法…保護命令の対象は、配偶者+事実上婚姻関係と同様の事情にある者
・日本のDV法…接近禁止命令として、「被害者本人へのつきまとい等」の禁止
DVモデル法案報告書…接近禁止命令の際、被害者の子供に対するつきまとい等も含む
・DVモデル法案報告書…裁判所から保護命令が出されると、被害者の医療費、カウンセリング費用、シェルター費用は、加害者により支払われる
日本のDV法…規定なし
・DVモデル法案報告書…保護命令+一方的な一時的拘束命令
日本のDV法…保護命令のみ
→日本の保護命令には課題多い、司法部によるDVへの対応の見直しが必要
B加害者の更正について
・日本のDV法…被害者の更正により重点が置かれ、加害者の更正についての規定ほとんどなし
DVモデル法案報告書…加害者への更正サービス提供について明白な規定あり
→被害者だけでなく加害者への更正サービス提供についても明白な規定をおき、公的機関のより積極的な加害者への対応をあおるべき
⇒・DVモデル法案報告書と日本のDV法を比較することで、国際的に求められている最低限の基準をいくつか満たしていない日本のDV法の問題点が明白になる
・日本が、女性に対する暴力撤廃を目指す国際的な動きに遅れないようにするためにも、DV法の問題点を国内の運用状況から指摘するだけでなく、国際的な基準から比較検討し、より広い観点から、日本のDV法を捉えなおし、よりよく改正していくことが必要
* 女性に対する暴力特別報告者とは
→1994年、「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言」をうけ、人権委員会決議1994/45により創設
主な任務…家庭における暴力、共同体における暴力、国家による暴力、それらの撤廃
毎年の人権委員会に女性に対する暴力についての報告書を提出
人権問題がある国への訪問・調査、人権問題があるとされる国への通達の送信、被害者からの個人的な報告の受理、建設的対話への参加