2004年10月19日(火)

授業:比較政策研究

国際学研究科

国際社会研究専攻

MK040108 竹内幸子

 

宇都宮市中心市街地活性化−宇都宮大学と日野町商店街との協働−

 

1.今なぜ中心市街地活性化が必要なのか。

 現在において中心市街地空洞化問題は全国共通の普遍的課題である。これは郊外大型店の展開やモータリゼーションの進展が大きく影響しているといえる。2001年12月、宇都宮市中心市街地空洞化問題についてフィールドワーク調査を実施し、次のことが明らかになった。第一に、駅前大通りとオリオン通りは中心市街地の南北問題といえること。換言すると駅前大通りは上野デパートの倒産に象徴されるように空き店舗の増加と建物、アーケードの老朽化が進み、且つ廃業によりシャッター通り化している。これに対してオリオン通り側は、テナントの増加はあっても空き店舗は皆無に近い。第二に、オリオン通りに隣接する日野町商店街のInvisible Barrierによる回遊遮断現象(略してIB現象)である。即ち、東武デパートからオリオン通りを通過し、パルコ或いは長崎屋へ向かう回遊パターン(その逆もあり)はあっても、日野町商店街はあたかもIBによって回遊が遮断されているかのごとき状態を呈している。このように中心市街地には二層構造+IB現象が露呈しているといえる。

以上のような実態を踏まえ、日野町商店街に現れているIB現象を抑制するため宇都宮大学と日野町商店街振興組合の協働による振興策を提起していきたい。この提起は私どもが現在進めている事例に基づいている。

2.IB現象の打開に向けて

(1)実行主体

宇都宮大学国際学部生1名、大学院在学生1名、ならびに卒業生1名からなる任意団体「ホッと・雷都・HOT」を2004年5月に発足。その他、出資支援者として教員1名、院卒業生1名がいる。

(2)「ホッと・雷都・HOT」の活動目的

1)地域貢献を念頭に宇都宮市が抱える課題の一つである中心市街地活性化に取り組む。

 2)具体的には、宇都宮大学と日野町商店街振興組合が協働して日野町商店街への人の流れを作る(IBの溶解)。

3)また、地域住民の方々と接する機会を定期的に設けることで中心市街地が直面している問題点をより直接的に抽出し、さらにその解決への糸口を探る(協働の振興策)。

 4)その窓口が「ホッと・雷都・HOT」であるが、この団体が、宇都宮大学農学部付属農場(以下、付属農場)で栽培された季節ごとの農産物を販売し、その活動を通してIBを溶解し、消費者の回遊を生じさせる。

 5)同時に、付属農場の広報を行い、より多くの人々に農場、さらには宇都宮大学のことを知っていただく場を提供する。

 6)また、付属農場産品ブランドとして市民に定着し得るかどうかも考察する。

  7)そして、中心市街地活性化に関する地域住民からの情報収集も行う。

(3)「ホッと・雷都・HOT」の経営活動

  1)「ホッと・雷都・HOT」が付属農場とメール等でコンタクトを取り合い、販売品目、数量、価格を決定し、販売前々日(金曜日)に購入する。農産物購入は、「ホッと・雷都・HOT」メンバー出資金を原資として行う。

2)「ホッと・雷都・HOT」が付属農場から購入した農産物を日野町商店街振興組合が毎月第四日曜日に行っている「ひのまちルネッサンス」で販売する。

3)実際の販売は7月から開始し、現在までに3回販売した。販売品の鮮度との関係で7・8月はひのまちルネッサンス開催前日の土曜日にも販売した(9月は日曜のみ販売)。7月、8月の販売品は以下の通りである。

第1回(7/24・25)

数量×売値

第2回(8/21・22)

数量×売値

とうもろこし

枝豆

じゃがいも(500g)

じゃがいも(1kg)

うどん(250g)

うどん(1kg)

ズッキーニ

朝顔

48本×45円

20袋×300円

18袋×80円

11袋×150円

11袋×150円

6袋×600円

4個×50円

4鉢×1,000円

なし(幸水)

なす

白かぼちゃ

じゃがいも(500g)

じゃがいも(1kg)

うどん(250g)

シロスジアマリリス

サンスベリア

パッションフルーツ

40袋×450円

7袋×100円

32.7s×70円/s

9袋×80円

10袋×150円

9袋×150円

2鉢×1,000円

2鉢×800円

39個×50円

(4)仕入れの課題

  学生が農場から直接仕入れることができないため、現在は担当教授を通して行っている。今年4月から法人化されたことでもあり、学生は教職員と同様、大学の対等な構成員であり、公益を目的とした学生のつくる任意団体にも販売していただきたい。

(5)事業収益

  収益が上がった場合は、当面全額を次回販売の原資として活用する。継続的に収益を上げることができるようになった場合には、出資者への還元の有無と還元額を総会により決定する。

第1回、第2回販売の収支決算が下記の表である。   (単位:円)

第1回 収支決算(簡略バージョン)

第2回 収支決算(簡略バージョン)

内訳

支出額

収入額

残高

内訳

支出額

収入額

残高

出資額

 

35,000

35,000

 

 

31,607

31,607

初期投資

5,473

 

29,527

仕入れ

20,950

 

10,657

仕入れ

19,360

 

10,167

投資

1,475

 

9,182

売り上げ

 

21,440

31,607

売り上げ

 

31,260

40,442

合計

24,833

56,440

31,607

合計

22,425

62,867

40,442

上表から分かるように、1)第1回の全体の収支は出資額が35,000円に対して、総支出額が24,833円となり、第1回目販売終了時点での残高は31,607円となった。2)売値は仕入れ原価に対し平均25%の利益率で販売し、売り上げ利益は2,080円となった。3)しかしながら、文房具購入などの初期投資で5,473円の支出があり、赤字3,393円である。第2回は、4)第1回終了時点での残金が31,607円で、第2回の総支出額が22,425円、売上額が31,260円だったので、第2回目販売終了時点での残高は40,442円となった。5)売値は前回同様仕入原価に対し平均25%の利益率で販売し、売り上げ利益は8,940円であった。6)よって第1回の赤字分を差し引いた累積収支は5,442円の黒字となった。7)また、現在までに3回販売を行ってきたが、これまでに9,286円の黒字となっている。

3.広報活動のポイント

 広報として、映像媒体(とちぎTV)、紙媒体(下野新聞、もんみや8・9月号、広報うつのみや9月号、手作りチラシ)を活用し、栃木県全域に「ホッと・雷都・HOT」の知名度を高めることを目的とした。また、地元商店の方のご協力によって日野町商店街に手作りチラシを配布した。

4.「ホッと・雷都・HOT」活動の可能性と課題

現時点においてリピーター客が少ないことから、「ホッと・雷都・HOT」の知名度向上と宇大農産品ブランドの定着化が必要であると思われる。これまで3回の販売を完売で終えることができた背景には、宇都宮大学への信頼度が影響していることが考えられ、必ずしも「宇大農産品」ということではない。今後「宇大農産品」というブランドを確立することができれば、購買層の拡大に大きく寄与すると期待される。さらに、空き店舗を活用した宇大農産品常設販売店を開業すれば、回遊人口の増加にもつながると思われる。また、農産物の販売に加えて今後新たな企画を立ち上げることで日野町商店街への吸引力を高めることができると考えている。例えば、宇都宮大学には4学部が設置されており、地域問題を考えるスタッフも多い。それらスタッフと連携することで地域問題や宇都宮市、栃木県に関する講義(出張講義)を空き店舗を利用して行うなど、日野町商店街に長時間滞在していただけるような仕掛け作りを行いたい。また宇都宮大学のみが単独で行うのではなく、将来的には他大学の地域問題に関連するスタッフと協働してまちづくりの公開講座、共同研究実践などを行うことも視野に入れたい。商店街振興組合にあっても、店舗構成、賑わいの企画を大学と協働で構想することによって、これまでの人の流れを徐々に変化させ日野町商店街に人の流れを作ることが十分可能であると考える。