地方自治体における国際交流協会設立の経緯

 

1.地方自治体における国際化

   地方自治体では1980年から1990年代において積極的に国際化に取り組んできた。今市市においても、情報化、高齢化、国際化への対応が最重要課題とされ、「国際化」への対応として様々な施策がとられた。

   最初に取られた施策としては、市内の事業者が交流のあるアメリカ合衆国サウスダコタ州ラピッド市との交流を今市市に働きかけ、市当局でも国際交流の必要性を認識し、国際姉妹都市が締結され、その後の交流及び国際理解促進に関する事業促進のために国際姉妹都市委員会が設立された。中高生及び会員の相互海外派遣事業が主な事業である。

その後、今市市国際交流協会が設立され、協会は国際交流に関する諸活動を行い、市民相互の親善と国際理解を深め、住み良いまちづくりの推進に寄与する事を目的としている。

では、地域の国際化とは何か、国際理解とはどのようなことなのか、地域の国際化を再検討したい。

 

2.姉妹都市交流の歴史

   姉妹都市交流を最初に提携したのは長崎市とアメリカのセントポール市で、その後各地域で積極的に国際化に取り組んできた。

   姉妹都市交流はアメリカのアイゼンハワー大統領が提唱したもので、米ソの雪解けを迎えた米国で、大統領のイニシアチブにより都市と都市を結び市民レベルでの交流を盛んにする世界平和を目指した運動として展開され、その働きかけに日本の地域社会は積極的に呼応した。戦後の日本社会では、戦争に対する反省が大きな契機となり、平和の構築の手段として海外との友好親善を深めるために姉妹都市を通じた国際交流が盛んに行われた。

   1950年代、60年代は過半数が米国の都市との締結で、あらゆる面で米国の強い影響下にあった。

   1970年代は、これまで欧米中心であった自治体の国際交流にアジアとの交流が増加するようになる。戦後関係が薄くなっていたアジアとの交流が地域レベルでも再開される。

  1980年代になると、自治体は国際交流を地域社会の活性化の中に位置づけるようになる。地域づくりの戦略の一環として、地域の国際化が地域行政の中でとらえるようになった。また、日本海沿岸の諸県では、歴史的、文化的につながりが深い、韓国、中国、ソ連、北朝鮮と積極的に交流の活発化に取り組む。

   姉妹都市提携数は20014月現在、1,407件を超え、全自治体の1/4にあたる自治体が姉妹都市交流に参加している。また、2000年度の自治体における予算総事業費は1044億円に達している。

   活発化した自治体の国際交流活動に対し、自治省も1989年に「地域国際交流推進大綱の策定に関する指針」を都道府県と政令指定都市に提示し、自治体が国際交流に対して明確な方向性のもとで行うよう求めた。さらに、1995年には自治体の国際協力活動への取り組みを推進するために「自治体国際協力推進大綱の策定に関する指針」を提示した。

自治体では、国際交流の取り組みを進めるために、国際交流協会や国際交流センターを作り、市民レベルの国際交流活動の中心的な役割を担うようになる。

また、市民による国際交流活動は、姉妹都市に関する交流活動、英語等の外国語学習サークル、

ボランティア通訳などのホームステイの受け入れから出発し、地元に滞在する留学生との交流活動、1990年代には在住外国人への日本語教育、生活支援、外国人労働者問題等にかかわるようになる。

 

3.国際交流と教育課題

   地域社会で行われてきた国際交流は時代とともに変遷を遂げ、目的自体も大きく変化してきた。

地域社会のレベルで、外国と交流することがまれな1950年代には姉妹都市交流活動が海外と直接交流する貴重な機会を地域住民に提供した。また、当初は自治体の幹部や一部の人たちに限られていた姉妹都市交流に次第に一般市民が参加するようになり、自治体が地域の国際化を主導し、日本人の国際的視野を広げる機会となっていた。

 1970年代から始まったアジアとの交流は1980年代以降次第に活発化してきた。従来の米国の交流とは違う新たな意義が生まれている。国際協力活動を行うNGOが主催する途上国へのスタディーツアーに多くの青年が積極的に参加し、貧困の問題、開発に伴う様々な問題を考える契機となっている。

 また、文化が近いアジアとの交流の中で、日本の歴史や文化を考える契機となっている。アジアとの交流の中では歴史認識についても配慮することが求められ、単なる語学でけではない様々な要素が交流の中に含まれている。

 地域の学校では外国人子弟の受け入れが迫られており、日本語が不自由で、教育レベルの異なる子どもたちをどう受け入れるか、教師達にとって大きな課題となっている。

 地域社会ではこれまでの国際化の取り組みをさらに一歩進める時期を迎えている。世界の辺境に暮らしていても影響を受けざるを得ない時代を迎えている。グローバル化への対応の視点から地域の国際化を再検討することが求められている。

 グローバル化の時代に対応するには単に語学能力を高めるだけでなく、グローバルな視野を持ち、国際的なレベルで意志疎通ができる能力を高める為の配慮が行わなければならない。公正な世界の実現に寄与するバランスのとれた世界観を持つ人材を養成することが求められる。

 

引用

新教育辞典−地域の国際化 毛受敏浩