2003/11/17

地方自治体の国際協力−政府による地方自治体への支援−

                              MK030103  木舟雄亮

 

1、各省庁の地方自治体への支援

 地方自治体の国際協力に対して、政府による支援が行われている。日本の政府と地方自治体の関係は政府の権限が強く、比較的中央集権的である。それは地方自治体の国際化政策においても同様で、特に自治省と外務省が、これまで地方自治体の国際化政策に対する支援を行っており、国際交流や国際協力に強い影響力を与えている。外務省はODA予算を使ったものによる支援を実施し、自治省は地方交付税を使って実施している。支援策は、まずは国際交流の充実を図り、そして次第に国際協力を拡大し、国際協力の比重を増やしていく形で行われている。

 

<外務省系の支援>

 外務省は外郭団体のJICAとともに、研修員の受け入れや専門家の派遣など、補助金による財政的支援と情報提供を中心に支援してきた。財政面の支援においては、地方自治体の国際協力事業に対し、1971年よりODA予算を使い、海外技術協力推進事業補助金(地方公共団体補助金制度)を設けている。

 この数年外務省およびJICAと地方自治体との関係に変化が生じている。以前では単独での研修生受け入れや専門化派遣のような比較的単純な事業形態が主であったが、近年では協力事業の計画策定や事業委託など、援助手法が多くのバリエーションに広がりつつある。JICAでも、これまでは地方自治体とは関係が薄かった事業形態での協力が進んでいる。

 

<自治省系の支援>

 自治省では、外郭団体のCLAIR(自治体国際化協会)とともに、財政支援、制度の整備、組織の整備を中心に支援してきた。財政支援では、地方交付税となる「国際化推進対策費」として、1994年以降、毎年1100億円以上の予算を地方財政計画に計上している。制度の整備では、まず1986年の「国際交流プロジェクト構想」に始まる。この構想の骨子は、@自治省が地方自治体の国際化施策の指針をつくる、Aこれに基づき地方自治体が国際化推進計画をつくり実施する、B必要経費は政府が財政措置を講ずる、の3点である。これに基づき、87年に「地方公共団体の国際交流のあり方に関する指針について」を通達し、地方自治体における国際交流の意義を地域の活性化として位置付け、その基本となる施策体制を明らかにした。1995年には、地方自治体の国際交流体制の整備が一段落したことにより、国際協力体制の整備を開始する。同年に「自治体国際協力推進大綱の策定に関する指針について」を提示し、地域社会の実情に合った総合的な国際協力政策の作成を推進している。組織の整備では、政府と地方自治体、そして地方自治体と民間国際交流団体とをつなぐ組織を整備してきた。まず1988年に地域レベルでの国際化を支援するために、地方自治体の共同組織としてCLAIRを設立した。そして93年には自治省内に、国際化の所管組織として国際室を設置し、その後順次地方自治体側においても国際(交流)課が設置されることで、政府と地方自治体双方に国際関係業務を担当する部局が整備されてきた。

 

2、ODAにおける地方自治体の役割

 国際協力においては、ODAが重要な役割を果たしている。ODAとは、中央政府・地方自治体その他の機関の援助資金である。ODAとなるものは、@政府ないしは政府の実施機関によって供与されること、A開発途上国の経済開発か福祉の向上を目的としていること、Bグラント・エレメントが25%以上であること、C無償資金協力・技術協力・国連諸機関・国際金融機関への出資・拠出および政府貸付などで構成されていることの4つの条件を満たした上で、DAC(開発援助委員会)が決めた対象国に対する援助を計上したものである。

 1990年代中頃までは、国会における地方自治体に対する認識不足が続き、ODA事業における地方自治体という視点が欠落していた。しかし、地方自治体の国際活動の発展により、1997〜98年を境に、政府と国会の双方において地方自治体の国際協力に対する議論が急速に深まっていく。

 地方自治体がODAに積極的に参加することの意義として、相手国のニーズにあったきめ細かな援助が可能になることや国民の幅広い参加、地方自治体の活性化があげられる。近年の経済不況下で、巨額のODA予算を継続して捻出するには、納税者である国民のODAに対する支持と理解が欠かせない。しかし、ODAは一般的に「顔の見えない援助」だと言われ、批判されることがある。そこで、ODA事業において、地方自治体を国際協力を担う重要なアクターのひとつとみなすことで、日本国民の参加を得ることのできる不可欠な中間組織であるという認識がなされ始めている。さらに、国際協力事業の実施時に、政府と地方自治体の間で従来見られたような上下関係を、平行な役割分担とする視点も出始めている。

 

参考、引用文献

テリー・ニコルス・クラーク/小林良彰『地方自治体の国際比較 台頭する新しい政治 文化』慶応義塾大学出版会、2001年

松下圭一編『自治体の国際政策』学陽書房、1988年

吉田均『地方自治体の国際協力』日本評論社、2001年

鷲見一夫『ODA援助の現実』岩波新書、1989年

古森義久『「ODA」再考』PHP新書、2002年