自治体における国際交流のあり方と今後の方向性について
今市市国際交流協会青少年海外派遣事業の成果と課題を通して
(研究計画の概要)
1.背景
今市市国際交流協会は1996年に設立され、協会設立以前から交流のあったアメリカ・サウスダコタ州ラピッド市と姉妹都市として提携し、毎年夏に中高生の相互交流派遣事業を行っている。これまでラピッド市に派遣された学生数は147名にのぼり、アメリカより今市に訪れた学生数は164名にのぼる。地域の青少年の国際感覚を身につけることを目的として年間約3,000千円の予算を投じており、2004年で10年目を迎える。
しかし、これまでこの事業の成果や問題点はほとんど検討されてこなかった。交流に参加した中高生は、どの程度国際理解が進んだのであろうか。この事業の目的は達成されつつあるのか、あるいは目的以上の何かを生んでいるのだろうか。他の自治体の青少年海外派遣事業はどのように評価されているのであろうか。これらを明らかにすることによって、地方自治体における国際交流の在り方や今後の改革の方向性を明確にしたい。
2.事業の成果の視点
事業の成果としては、これまでも次のようなケースがみられている。
(1) 参加者自身の変容
今市きぬロータリークラブではラピッド市と毎年1,2名の長期(1年間)高校生相互交流を行っている。それを利用して留学している高校生の多くは、日米ともに夏季交流事業に参加した生徒であり、その後大学あるいは専門学校に留学している学生もいる。
また、ラピッド市の中高生も積極的に日本語を学習する様子が見られるようになり、自己紹介や簡単な会話は日本語で話そうとするなど日本文化に興味を示している。
(2) 参加者の家族の変容
主にラピッド市から参加した中高生の家族は、成人会員の相互訪問に参加して来日することが多く、その後家族間の交流が続けられ、今年の夏は結婚式に招待された家族もいる。
(3) 受け入れ家族の変容
ラピッド市のホストファミリーの中には、娘夫婦がALTとして市内の高校に2年間赴任し、その後も親交のあった家族と交流している。
今市のホストファミリーの中には、受け入れの対応を家族が一番心配していた頑固な祖父が、ラッピド市の高校生と孫の交流の様子を見て、教育の必要性や海外との交流の必要性を認識した。
(4) 自治体における変容
海外との交流及び国際理解事業に積極的になり、独自でCIRやALTを雇用し、学校や社会教育で活用している。今年ノルウェーとの高校生相互派遣事業も始まった。在住外国人のネットワーク組織を立ち上げた。
しかし、全体的な成果や問題点についての充分な検討はなされてこなかった。
そこで、日米双方のアンケート調査及びヒアリング調査を含む研究が必要である。これらを実証的にまとめていきたい。
3.研究計画
概ね次のような方法で研究を進めていきたい。
(1)自治体における国際交流の考え方
国際交流とは何か、その目的や位置づけを国際理解・国際協力・貢献の視点から検討していきたい。その上で何故、国際交流が必要なのか、自治体における国際交流を推進する意味は何かを明らかにしていきたい。特に自治体に民間の団体として国際交流協会が設置される意図や経緯を明確にしていきたい。また、これまで主に国が担ってきた国際協力・貢献について、自治体ではどのような対応がなされているのか、また今後どういう支援ができるのか等をNGOや国連の活動を中心に検討していく。
(2) 今市市国際交流協会の設立の経緯
今市市における国際交流協会設立の経緯を明らかにし、その中で中高生ラピッド市派遣事業の位置づけを明確にする。協会の保存資料などを活用して、設立にかかわった市民や行政の意図をあぶり出していきたい。
(3)中高生派遣事業の成果に関するアンケート調査
当該事業の目的に対してどの程度成果が上がっているのかを主としてアンケート調査及びヒアリング調査によって明らかにしていく。
○アンケート調査対象
@ 参加者自身の変容に関する調査(サンプル数:日147 米164)
A 参加者の家族(親)の変容に関する調査(サンプル数:日147 米164)
B ホストファミリーの変容に関する調査(サンプル数:日80 米80)
○ヒアリング調査し、それぞれについて5程度実施予定
以上のように今市市の青少年海外派遣事業を通して国際交流の成果と課題を明らかにすることによって、地方自治体の国際交流の在り方について研究を進めたい。