2003/10/20
科目名 |
比較政策研究 |
指導教官 |
中村祐司教授 |
学籍番号 |
MK030110 |
氏名 |
韓相榮(ハンサンヨン) |
研究テーマ;地域経済活性化(韓日比較研究分析)
1.研究の目的
韓国の地方経済政策は中央政府が主体となって行われてきたため、地方政府の実質的な経済機能の微弱であり、中央政府に依存している状態である。地域経済を活性化させるためには中央と地方間の機能を調節し、政策決定権の地方委譲が確立するほかない。また、中小企業の保護育成も、地域経済の振興には欠かせない決め手である。資本の集中も日本以上に激しく、三星、現代、LGなどの大企業に生産力が集中しており、人口の集中と相関関係を成している。 もうひとつの大きいな問題は地域格差である。ソウル地域を除くと、半島東部の慶尚道には比較的大きいな都市があり経済的にも豊かだが、半島西部の全羅道は過疎地域であり、しかも両地域は政治的にも対立している。この意識は世代交代と共に消滅しつつあるがさしあたり大きいな問題である。
筆者の母国である韓国の状況と比較しながら研究していきたいと思う。韓国の人口が現在約4500万人だが、首都ソウルにその1/4が集中している。韓国人の4人に一人がソウル市民というわけで、これは日本における東京以上の集中度である。(表1参照)若者はソウル、釜山などの大都市に出て、田舎では年寄りだけで農業をせざるを得ず、土地の荒廃も目立っている。それでも正月やお盆には皆が帰省するから高速道路は大渋滞となり、一歩も進めない悲惨な状況に迫る。世界にも類をみない民族の大移動である。
地方間機能配分でおかれても中央集権的な領域で残っている部分が地域経済部分である。いままでの地域経済政策は中央を主として行われてきたため、地方自治の実際的な経済機能は脆弱して、中央政府に頼って言っても過言ではない。地方自治は地域の経済資源をうまく活用しながら地域にある地域産業を振興させるべきである。地域産業の中心となっているのが中小企業であるので地域経済活性化のためには中小企業の振興が重要な課題である。これから筆者は地域活性化させるためには地方自治の役割を全般的に検討して地域特性に合う地域開発戦略と手段を提言したいと思う。
2.地域経済活性化を研究背景
学部のゼミの時、先生の御指導で、「市町村合併による地域活性化」について研究したことある。日本における市町村合併の方式、メリットとデメリット、商店街活性化の成否などがその内容である。市町村合併のメリットとは何よりも財政問題である。地方交付税が減少しないように財政危機への対応一辺倒だと言ってもいいだろう。デメリットというのは@地域によっては役場が遠くなって不便になる。 A大都市に吸収され伝統行事など地域の個性的文化が消滅する。〜などの問題が明らかとなった。
また、合併以後の膨張した予算に基づく合併バブルの発生や合併特例期間が過ぎた10年後におけるバブルの清算。15年後の地方交付税の大幅な減額及び合併特例債の償還などさまざまな要素が重なって、将来的には今以上に自治体の財政は苦しくなる予想される。
長期不況苦しむ国が多い中、日本もその例外ではなく税収不足→デフレの進行→設備投資の低下→失業率上昇→個人消費低迷という悪循環に陥っている。この状況を背景として、各地方も生き残りをかけて、面子のこだわることなく合併の道を模索しはじめた。その象徴が2000年5月の“さいたま市”の誕生であったが、この傾向は衰えることなく、栃木県においても合併推進の動きがある。(資料1)
そして、補助金・交付金をめぐる中央と地方関係は相変わらず利権と選挙協力の引き換えの場であり、あるべき地方自治の姿を歪めてきた。今まで私の結論は合併による地域活性化の決め手は、「交通・情報効率に配慮した対等合併」である。例えば、複数の自治体が合併すると、最も大きいな都市に人・モノ・情報が集中して、中心部がマヒし周辺部が衰退する危険性がある。ですから、庁舎の廃合はまず最小限に止め、IT化の進行をにらみながら徐々に進める。勿論、歴史ある町名は庁舎と共に残して、その伝統分化・産業を保護するべきである。交通面でも、ITビジネス街と旧市街衛星状に配置して、副都心、副々都心を形成しやすくする。公害対策、緑地の保存災害対策その他、あらゆる面に配慮して理想の地域開発を進めるのが私のねらいである。
市町村合併は地域活性化の大きいな決め手である。ちなみに、私が那須大学入学した1999年当時、栃木県へ国会移転が話題になった。これは、大都市の人口分散のためにはよい発想であり、地元でも期待の声が高かったのを記憶している。
ここに、集中の利便性と均衡する開発。さらに、環境保護と地域発展という相反する課題が秘められているようにも思われる。
3.地域経済活性化のため地方自治体の役割
1)地方自治体のより独自的地域開発
自己固有の独創性開発と差別性を最大に活かせる方向で地域資源を最大限利用するべきである。
2)地方行政の支援体制の強化
@地方の行政支援の機能強化
A地域経済関連専門スタッフの拡充
3)地方中小企業に関する支援拡大
@ 資金支援
a. 中小企業の資金支援体制の整備
資金の再整備とともに支援資金の扱い機関は統合して体系的に整備して窓口を単一化して、利用の便利を提供して手続きを簡素化するのが望ましい。
b.地方中小企業に関する支援・資金拡大及び優待、措置強化
c.資金支援手続き及び具備書類の簡素化
融資手続き簡素化作業で多少簡素化になったが、まだ銀行経営の健全性確保という側面で融資時、信用の調べから貸出金の事後管理までの複雑な手続きがあるが中小企業の資金を必要な時期に支援を受けられるように不必要な手続きを縮小して貸出の所要期間を短縮するべきである。
A 税制支援
直接支援方式である税額減免、所得控除、税額控除と税金徴収を猶予する予備金など間接支援方式がある。
4)工場用地の円滑な供給
企業が地方に移転する一番大きい理由は安い工場敷地を比較的に確保出来る利点があるからである。地方移転の希望業体の中で41.5%が「安い工場敷地の確保容易」を移転理由にさしているのをみると企業の地方誘致のためには地方で安く工場用地を円滑に供給するのが何よりもまず解決する課題である。
5)人力支援
@技術・技能スタッフ養成課程拡大
A兵役特例制度活用を通じて支援
B地域内以外の産業優秀人力誘致支援
C外国人の産業技術スタッフの供給拡大
4.研究シミュレーション
仮研究テーマ「地域活性化」のモデル都市として、私の故郷である全羅北道全州(チョンジュ)市を選択したいと思う。30年以上を過ごし、隅々まで知っている街なので、研究材料にしたいと思う。全州(チョンジュ)市について若干説明すると、人口は50万。その人口に比べて小中高学校が多く、中小の文教都市というところである。また古代国家百済の都であったこともあり、民俗特産品が多く、歴史と伝統の都市でもある。とりわけ、韓国の伝統食ビビンパ(混ぜご飯)発祥地であり、観光客もよく訪ねるところである。
筆者は、これらの要素をうまく生かして、理想的な町づくりを考えていきたい。
5.仮研究構造
6.おわりに
地方経済活性化ための地方自治団体が地方産業の誘致及び育成中小企業の海外市場開拓活動、ベンチャー企業の育成などを独自的なプログラムに従って支援するためには地方自治団体の特性に合う自治法規を制定して地域経済活性化をための制度的装置が一番至急だと思われる。地域経済活性化のための制度的な支援体制を具備するのが地域経済政策の効果的に推進するのは勿論地方自治団体が地域経済活性化寄与に主になる役割を担当させるのが地域経済発展に原動力になる。何よりも重要なことは無批判的、無条件的な地域経済活性化政策ではなくて地域特性と地域住民のニーズに応じる政策が必ず行うことである。これから私の研究は広範囲な資料収集を通じる事例の分析など現実に適応が実質的の面で限界があると思われるがもっと具体的、体系的な側面で継続な研究が必要であると思う。
(表1)韓国の6大都市の比較(2000年)
|
人口(千人) |
構成比(%) |
人口密度(人/ku) |
ソウル特別市 |
9,895 |
21.4 |
16,342 |
釜山広域市 |
3,663 |
7.9 |
4,831 |
大邱広域市 |
2,481 |
5.4 |
2,801 |
仁川広域市 |
2,475 |
5.4 |
2,583 |
光州広域市 |
1,353 |
2.9 |
2,698 |
大田広域市 |
1,368 |
3.0 |
2,535 |
全羅北道 |
1,891 |
4.1 |
235 |
全国 |
46,136 |
100.0 |
462 |
◎人口密度=総面積/総人口 (韓国統計庁資料参照)
【参考文献】
◎『地方自治(行政)体系の改編方案』、韓国地方行政研究院 1998
◎『地域産業振興のため地方自治団体の政策手段』、韓国地方行政研究院1996
◎『地域経済活性化の方案研究』、地方公務員教育院
◎『地方経済活性化のため中小企業誘致方案』韓国地方行政研究院
◎『地方開発戦略として地域産業育成に関する研究』
韓国健国大学修士論文 金ガップソン氏
◎http://www.doyukai.or.jp/database/teigen/990728.htm
地方の活性化・自立のための7ヶ条未来に希望の持てる、活力ある豊かな国にするために(1999年7月28日発表)
◎市民参加の町づくり NPO・市民・自治体の取り組みから 2001年10月
◎宇都宮市第4次総合計画改定基本計画 平成15年2月 宇都宮市
◎練馬区都市計画マスタープラン 全体構想 東京練馬区