KUB

ウズベキスタンの政府は国内経済状況が悪化する中、機構上の欠陥を補正するため、1992―3年の間に大きく別ければ次の政策を取った。まず、旧連邦省所管企業、旧連邦―共和国省所管企業、旧地方行政府所管企業を各社のプロファイルに応じて部門連合への加入させることである。次の政策は、部門連合を経済連合という業種別企業団体組織へ改組し、部門別省と部門連合管理局を経済連合へ本部組織(以下、KUB)として組み込むことである。更にKUB及び経済連合加入企業の株式会社化である。株式化の過程と言えば、KUB及び加入企業はまず国家が全株式を保有する非公開株式会社となり、次に発行株式の一部が原則として自由売買の対象となる公開株式会社へ漸次転換された。多くの場合、株式会社に際して国家が保有するKUB株式について、政府ないしKUB自身が、連合加盟企業のそれは、所属先のKUBが政府の委託を受けて管理していると言われている。国家機関の改造の面から見ると政府経済機関の統合や改組が挙げられる。それとともに、私有化政策を統括する国家国有資産管理 私有化委員会や中央管理貿易を所管する対外経済関係省の新規措置が挙げられる。

 新しい組織的構造図においてソ連型工業管理機構と比較すると旧来の生産課題や生産財の割当 分配制の廃止と「官僚会議と工業企業と」の間の組織的重層性の緩和 という二つの主な相違点が指摘し得る。

KUBは法的には、連合加盟企業に対して受動的立場にあり、また生産活動においては付随的 補助的な役割が与えられている。その上、大多数の企業にとって、経済連合への加盟は義務ではない、たしかに、ソ連時代と比べて経済連合の形式的な地位は大きく後退したかのように見える。実際には、やく60の経済連合が安定的に業務を継続し、なかには組織規模の大幅な拡大に成功したKUBも出現した。

ウズベキスタンの新しい経済機構は競争志向的な企業社会の創出とその自律的発展を促す制度配置への移行には失敗している。新しい産業管理メカニズムの下で、KUBは、政府機関や他の経済連合との密接な協同関係、資本参加や役人派遣による特殊商業銀行の経営権獲得、輸出ライセンスなどの排他的権益に裏打ちされた経済実権によって、ソ連時代の行政権力を代替する政治的 経済的地位を確立している。経営体制の変化あまりなく、 私有化を通じた自立的経営権の取得を目指すインセンチブすら生まれにくい雰囲気が生まれている。ソ連が解体して10年が経過した段階でも、多くの企業経営者がKUBを依然として部門別省とみなしているという意見がある。

KUBの役割は1)共和国内外の調査、2)連合加入企業のリストラ支援、3)外国投資の誘致などもあるが、政府のエージェントとして活動するKUBと工業企業産群との間の支配 従属関係は、市場経済化政策の実施課程において数多くの弊害を生み出していると思われる。この新しい経済制度が初期の段階で実を結んだが、これからの発展のためにふさわしいかどうか極めて疑わしい。

岩崎一郎 ウズベキスタンの工業部門の転換