ウズベキスタンの経済連合
25.10.2002
キムアントン
旧ソ連邦中央アジア諸国が独立を達成してから11年が経過した。「国際社会、特にアジアに新たな国家主体が登場した。中央アジアの諸国にとって、独立国家として国民の総合のシンボルを何にするか、複数政党主義の導入などの民主化をどこまで進めるか、憲法制定、大統領の権限をどうするか、民族語とロシア語の関係といった言語政策やロシアの国籍問題を含む民族政策などの独自の解決すべき課題が次から次へと登場した。それと同時に大きな注目を浴びている市場経済化(体制転換)という課題が非常に重要である。
ソ連型の社会主義か資本主義への転換(市場経済化)は歴史上前例の無い実験であった。それは単なる経済的な側面に限定できない多面的な内容を持つ改革であり、社会主義を理念として掲げた歴史の遺産から単純に逃げられないという面を有している。通常市場経済化といった場合、中央指令型計画経済の廃棄、価格統制などの各種規制の撤廃と市場メカニズムを通じる価格設定、国営企業の民営化による所有権の転換が中心となった。だが市場経済化-再資本主義化といっても簡単なものではない。社会主義化される以前の中央アジアは、資本主義の未発展な段階であり、それがソ連型社会主義に組み込まれたわけである。したがって単純に市場経済に戻るというわけではない。その上、中央指令型の価格メカニズムを無視したソ連型社会主義の崩壊には、そこに内包していた多くの歪みが原因であるとしても、市場経済化で問題が自動的に解決するわけでもない。」(1)
「ウズベキスタンは連邦解体直後の混乱期に国内生産活動の大幅な縮小を回避し得た点で中央アジアの中で最も成功を収めた国であるとの評価を受けている。他方、その経済改革の進捗度に関して、国際金融機関を中心に批判的な見方が優勢である。しかし経済体制転換という国家単位の長期的な課題を見る場合、改革の速度ばかりが問題ではない。体制転換の最終到達点として資本主義市場経済が標榜される限り、経済発展の起動力となる企業活動を根底で規定する経済諸制度の構造と機能に多くの注意がはらわなければならない。特に、中央集権制の下で生成された旧ソ連の工業企業は、自律的経営権の脆弱性という点で大きな問題を抱えており、市場経済に向けた生産構造の転換を果たしながら、経済権力の分権化を促進し、将来にわたってこれを維持する制度の設計がウズベキスタンにおいてきわめて重要な意味を有している。」
ウズベキスタンにおいては、独立以降大統領のスローガンでもある比較的緩やかな改革路線が選択されたこともあって、今なお中央集権的なシステムが根強く生き続けており、政府が価格形成や信用仲介等に強く介入するやり方が広範囲に行われているため、企業の経営の実態は外から見えにくいままになっていると思われる。ソ連解体による経済機構上の欠陥を補完するために経済連合という産業部門企業団体組織とその管理機構(KUB)が登場した。新しい機構の要素であるKUBはどんな役割を果たしているか、政府と企業の仲介役をしながらどれだけ行動決定を出来るか、または時間とともに変化する状況のなかでKUBの機能がいかに変化しているかが興味深いことである。それに、経済連合の理想的な役割と重要性を理解するには他国の経済連合の実態、例えば日本の経済連合を研究する必要がある。
(1)清水学 中央アジア
(2)岩崎一郎 ウズベキスタンにおける工業部門の転換