大学院『比較政策研究』レジメ 第2回発表
mk020111 武田祐也
中村祐司助教授
住民投票条例活動記
2002年11月13日
前回の発表では主に無投票当選という制度について、取り上げ、様々な矛盾点をあらわしてきた。今回、第2回発表では、その矛盾点に基づいて、私が行ってきた住民投票を制定する活動について、取り上げ、述べていきたい。
(単純な疑問1)なぜ、議会に対する陳情をするとした方法で活動をしようとしたのか?
それについての動機は2つある。
現在の自分の学問に対する疑問点と、世間の動きに対する疑問点である。
一つ目は、自分が勉強することで世の中、何が変わるのか、という疑問点である。地方自治論や行政学というのは現実的な動きを見極める学問である。現実的に帰られなくては、勉強している意味がないのではないか、ということについて非常に疑問があった。だから、確かに無駄な行為かもしれないが、少しでも現実政治を見て、現実的に僕が学問をすることで現実社会という『現実』を変えていきたいと考えたのだ。
二つ目は、地方自治論や行政学という学問といえば、あくまでも行政という部門ばかり見て、議会という立法部門は軽視されてきたように思われた。そもそも『議会学』という科目がないということはおかしいのである。だから、私は三権の中の議会という立法部門にクローズアップを当てたいと考えたのだ。
(単純な疑問2)なぜ、提出者、一人で行うのか?
今の政治行為を住民が直接行う選挙に対する問題点とは何か、と考えると、低投票率化ではないだろうか?
なぜ、低投票率となり、有権者が選挙に行かないのか、と考えると、多数意見は『自分一人が選挙に行っても何も変わらない』という意見に他ならない。
そうした、一人で行っても何も変わらない、という無気力感があるのだ。
そんな社会に対して、一人でも何かは変えられるんだ、一人と位置からはものすごいんだ、人間という力はものすごいんだという姿勢を見せたかったのである。
2000年6月議会・千葉県我孫子市議会
『無投票当選に対する信任・不信任の住民投票条例』を陳情
「不採択」
委員会採決 採択することに0−7
本会議採決 採択することに1−28
記念すべき、初活動、初審議である。
2000年6月議会では、千葉県我孫子市議会において陳情をした。内容は、無投票当選の住民投票条例を制定してもらうことを陳情した。
結果は、「不採択」となった。ここに委員会審議で出された理由と、私の意見とを記しておく。
@ 解職制という制度で補完ができている。
・ それについては現在では解職制もあまり利用されていない現実→有権者の3分の1の署名
(無投票当選の住民投票はその解職制を後押しする効果)
・ 地方自治法第80条→地方自治法第84条但書
A そんなに無投票という形の現職に不満があるなら、その不満がある人が立候補すれば良い。
・ 立候補することの精神的苦痛、経済的苦痛
B 住民投票を行うと、公費がかかる
・ 実際の選挙をスライドさせる
C 前例がない。我孫子には無投票当選となった前例がない。
・ 見本に→発展途上の地域のお手本となるような先進市になって欲しい。
また、委員会において、陳情者に陳情の説明をさせたらどうか、という意見も出た。
これに対し、事務局の答弁は、継続審査になるくらい意見が均衡しないと、陳情者は意見を述べたり、反論したりできないのだそうだ。
全体的な議会の感想としては、例え、一人の陳情で委員会メンバーの全員が反対であったとしても、立場上、誰か一人は陳情者の立場で、賛成者の意見で行なうべきではないかと思われた。裁判においても、弁護人がいて、意見を対立させて進行させるのである。陳情の場合は、裁判のような犯罪者ではないのだから、全員で集中して反対する事はなくて当然だと思われる。立場上、誰か一人でも、賛成者の立場で発言する人がいても良いように思われた。
2000年7月 学部指導教官より、議員を紹介される
2000年9月議会・栃木県議会
『無投票当選に対する信任不信任の住民投票条例』の制定を求める陳情
「不採択」
委員会裁決 採択することに0−7
本会議裁決 採択することに ?
2000年9月議会では、場所を変更し、栃木県議会において陳情した。内容はそのままで、無投票当選の住民投票条例を制定してもらうことを陳情した。
@ このような所管に当たらない陳情は受け付けることができるのか。
「会派で一人以上賛成があれば受け付ける。何も所管に当たらないものが総務企画委員会に来る。」(議会事務局談)
A 憲法や法律で他の手段がある。(解職制、信任選挙)
前陳情の解職請求の部分を参照。
全体的な議会の感想としては、ここでは我孫子市議会との相違点が多数見られた。それらは、三つの点に挙げられる。
一つは、@においても少々でたが、陳情が委員会で審議されるまでの道程が長いということだ。まず、最初に事務局に提出する時、職員より、参考程度に全議員に配布するいわゆる「議長預り」か、委員会に付託するのか、の選択を迫られるのである。私は委員会付託を希望した。そしてその後、陳情書を各会派に送り、そこで全議員のうち一人以上、付託を希望してもらえて、やっと委員会審議となるのだ。
二つ目は、傍聴者に本日の委員会で使用される資料一式、すべて用意されていたということだ。これは、良い部類の感想に属する。特に、細かい陳情などの資料も用意されていたのには驚いた。我孫子市議会においては、未だに傍聴者への資料の配布がなされていない。たしかに、都道府県レベルと市レベルの違いはあるが、地方分権が進み、対等平等な関係となった現在においては、市のほうが議会改革を強く進め分かりやすくしても、違和感はないのであり、更なる精進が求められることであろう。
三つ目は、二つ目と関連してのことであるが、資料を一式用意するため、各委員会、傍聴者が三人に限定されてしまうことだ。希望者が三人を超えた場合は、抽選により、三人に絞るのである。幸い、私が傍聴した総務企画委員会では希望者が私を含め二名であったため、いわゆる「無投票当選」状態によって傍聴できたが、隣の委員会では、希望者が十名を超え、抽選していた。陳情や請願の代表者は優先されることや、審議をビデオに録画し、貸し出すなどの工夫が必要であろう。
以上が、栃木県議会での報告である。
2000年12月 東葛ステイツマンズクラブでの討論会
「東葛ステイツマンズクラブ」(流山市議会議員・松野豊代表)
千葉県北部の東葛地区にて、若手議員が集まり、政策や意見の交換などを行なっている
(無投票当選)
制度上の問題ではなく、地域特有の問題ではないだろうか
制度でどうにかしようと陳情するよりも、まず、社会の特徴や、若い人の考えなどを調べるほうが先決なのではないか
2000年12月 地方自治論講義でのアンケート
(トピックス)
◎投票率が低い若い世代であるのに、すべての質問において、高い関心を示していた
※ 確かに、地方自治論という政治学の講義に出席してきている学生なので、政治に関心がある若者に対して行ったのかもしれないが、それにしても高い数値を示した。
※ それは、2000年6月の衆議院選挙に行った人が6割も超し、これは国民全体の投票率をも超えているであろう。また、無投票の信任投票に対しても過半数以上の人が行くと答え、投票率50パーセント未満の方では7割を超え、住民投票で言えば、8割も越えているのである。確かに、これがそのまま投票行動につながるとは限らないが、少なくとも若い世代が住民投票というものに高い関心を示し、期待していることが分かるであろう。
2001年3月議会 千葉県我孫子市議会
『常設の住民投票条例』の制定を求める陳情
「継続審査」
委員会採決 継続審査とすることに7−0
本会議採決 継続審査とすることに29−0
(再び、場所を我孫子に戻した理由)
前年12月に行った、東葛飾ステイツマンズクラブの影響が大きい。このような、若手市議の集まりがあることに素晴らしいと思っただけでなく、その熱心な討論ぶりには感動した
そこに所属している我孫子市議の熱心な応対ぶりを見て、一種の希望の光を感じたから
(内容を常設型の条例に一新したこと)
無投票当選の信任投票を住民投票としてしまうのは、理解してもらうことに困難さがある
また、2000年の6月議会のときにもでたが、我孫子市には無投票当選の前例がなく、常設型の普通の住民投票条例であれば、時代的にも流行的にも理解が得られやすい
@
陳情書に盛り込まれた私案の条例案において、住民投票を発動させる要件が市民2500分の1と低く、濫用を招く危険性がある(議事録掲載)
・ 少数派の利益保護を目的として、このような要件にした狙い
・ ただ、多少陳情書に良くない部分があっても、それは採択されたから修正すれば良いのであり、陳情書そのものについては軽視している思惑
・ 趣旨採択という方法が慣習となっていない我孫子市議会においては、じっくり練り直して書く必要があった。
A
無投票当選の条項がある(議事録掲載)
・ この活動は無投票当選の解消を目的として始めたものなので、その余韻を残しておきたかった
・ ただ、常設型の住民投票条例に無投票当選者の信任投票を盛り込んだのはもちろん、全国初であり→注目
・ 前例がないと言って敬遠するのではなく、無投票当選のある市に先駆けて、模範となって欲しい
・ 地方自治の先導機能をフルに使い、先進市となって欲しいという願いを込めた
また、今議会では、総務企画委員会において、私の陳情があったため、住民投票を題材とした、行政視察が組まれた。それは、全国で初の常設型の住民投票条例を制定した、愛知県高浜市に決定した。しかし、日程上の都合で折り合いがつかず、結局は大阪府箕面市に行くということで決着がついた。
2001年4月 市民団体『岩崎学級』にて初参加 今後数ヶ月に1回討論
採択派議員2名と討論
2001年6月議会 千葉県我孫子市議会
「不採択」
委員会採決 採択することに0−6
継続審査とすることに1−0
本会議採決 採択することに0−26(着席3)
・ 住民の住民投票を発動させる要件が濫用を招く
・ 無投票当選の条項がある
・ 書式が良くないという意味合い
2001年9月議会 千葉県我孫子市議会
『常設の住民投票条例』制定を求める陳情
「継続審査」
委員会採決 採択することに2−4(欠席1)
本会議採決 採択することに8−21
@陳情の内容を変更→私案の住民投票条例案を陳情書より省く
Aそして、それを参考資料とし、陳情書に添付して、委員に配布するだけのものとする
B陳情書はただ、常設型の住民投票条例の利点や、必要性を4項目に書いただけのものに留めた
Cまた、条例化するにあたって、議員提案の方法にて行うように書いた。
(変更した理由)
私案の条例案があっては、細かい部分にまで指摘を受ける→継続審査となってしまう種
また、議員提案の方法にて行うよう徹底したのは、議会制民主主義を否定させるのではなく、議会と住民が共歩させるものが住民投票なのであり、それを首長の側でなく、議会の側から提案すれば、画期的だと思ったから
それと、我孫子市議会には議員提案の回数が少なく、議会の活性化という意味合いも込めた
@
議員提案をした前例が少ないので、勉強の時間が欲しい。ゆっくり、じっくり議論を深めたい。
・ 陳情を採択した後、議員提案について取り組みを始めても、遅くはないのでは?チャレンジ精神が見てみたい
A
現在、我孫子市において、街を二分化し、住民投票にかけるような問題がない
・ 街を二分化するような大問題がない今だからこそ、常設の住民投票条例は必要なのでは?
・ 何か起きてから一回、一回条例を制定したのでは遅いのでは?
・ そんな何か起こったときに冷静に対応できることが常設の住民投票条例の利点
・ そうでなければ個々の案件につき、一回、一回条例を制定して行わなければならなくなる
2001年12月 チラシ作り
採択派議員と一緒にチラシを作り、配った
2001年12月議会 千葉県我孫子市議会
「継続審査」
委員会採決 採択することに2−5
本会議採決 採択することに13−16
この議会より、委員会のメンバーが変更された
@ 議員提案をするのに時間が欲しい
A 我孫子には街を二分化するような大問題がない
2002年3月議会 千葉県我孫子市議会より
「継続審査」
委員会採決 採択することに2−5
本会議採決 採択することに12−17
この議会より、『議員提案』の文言を削除した
@
陳情書が一部訂正され、議員立法による方法と限定されなくなった 議員立法の研究のために継続にしていたのだから、継続審査にする理由がなくなった(議事録掲載)
A 議会制民主主義の空洞化を招く
B 問題が出たらそのときに行えばいい
C 何回も継続が続いている 一年以上も
D 何も陳情書は訂正してくれとは頼んでいない
2002年6月議会 千葉県我孫子市議会より
「継続審査」
委員会採決2−5
本会議採決14−15
@
前回に引き続き討論 市長が『市町村合併問題』で住民投票の存在を示唆した それ以外にも様々な問題や論点はあり、だったら、一回、一回条例を作るよりも常設方を(議事録掲載)
議会の意思の担保
A 陳情者が引っ越して市民ではなくなった
B いずれは 来年3月までには合併の方向性
C 改選まで延ばせば陳情がなくなる
あと一人のところまで来た。議会では、市町村合併が話題となり、そろそろ住民投票を行わなくては、との動きになっているようだ。
2002年9月議会 千葉県我孫子市議会より
「継続審査」
委員会採決2−5
本会議採決14−15
今定例会では、一般質問で採択派議員から、住民投票について質問があり、市長の答弁ではぜひ、住民投票条例を作りたい、とのことであった。
@ かなり継続が続いている 議員提案の文言もなくなった
時期尚早というのも、市長が合併で住民投票条例の必要性に言及している通り、必要になってきた(議事録掲載)
A 10月の庁内合併研究会の様子を見て
B スケジュールは迫っている 10月にはもうできるようにしないと
C 『議員提案』であったならスケジュールは迫っているがそうでない
D 市長も議会に判断を預けてずるい