現代政治の理論と実際

「遺伝子組み換え食品の安全性」            野沢知葉(t002562H)                

 今日、遺伝子組み換え食品がわたし達の生活空間に広く出まわるようになってきています。遺伝子組み換え技術は様々な期待をもって発達する傾向をますます強くすることでしょう。しかし、大きな期待がある一方で、遺伝子を組み換えるということにおいて、その食品を今までの食品と同じように扱う上で問題が色々と出てきています。そこで、遺伝子組み換え食品のメリット・デメリットを含め、その安全性などを考えていこうと思います。

1.遺伝子組み換え食品とは何か?

生き物はすべて細胞からできていますが、この細胞の中には遺伝子があります。ある生物の中に他の生物から都合の良い(例えば、「病害虫に強い」「特定の除草剤に対して抵抗力がある」といった)遺伝子(これを「有用遺伝子」という。)だけを取り出して組み込み、新しい性質をもった生物をつくり出す技術によりできた食品です。今までの品種改良でできた食品とはまったく異なります。(下線;これが遺伝子組み換え。)以下、その違いを述べました。

《遺伝子組み換えと品種改良との違い》

品種改良⇒交配は人為的、しかし自然の中でつくる。⇒メリット少ない。

 遺伝子組み換え⇒人為的に新しい種をつくる。⇒メリット多い。

従来の品種改良はいろんな作物で交配を行いますが、この過程にはかなりの時間がかかり、また、必然的でないという事実がありました。しかし、この遺伝子組み換え技術が品種改良を効率的にできるようにしたのです。

「遺伝子組換え技術を応用することで、生物の種類に関係なく品種改良の材料にすることができるようになりました。・・・略・・・人工的に遺伝子を組み換えるため、種の壁を越えて他の生物に遺伝子を導入することができ、農作物等の改良の範囲を大幅に拡大できたり、改良の期間が短縮できたりすることです。

http://www.mhw.go.jp/topics/idenshi_13/qa/qa.html

○ このように、必要とする遺伝子だけを農作物などに組み込むことができ、作物を生産するにはあらゆる面で効率が良いのです。生物の種類に関係がないということは、すべてのものに対して、人間が都合の良いように本来の生物にはないような性質をもった新しいイキモノをつくり出し得るわかだからとても魅力ある技術だと思います。  

 いろんな利益はおおいに期待されることですが、一方で「人工的」「種の壁を越える」といったことに眼を向けると、このような操作で出来上がった食品をわたし達は日々生きていく上で摂取することになるわけで、人の健康への影響はどうなのか不安な点がでてくると考えられます。そして、わたし達、人間だけでなく周辺の生き物の対しても同じことが言えるわけですから、生態系にも何らかの影響は考えられると思います。(そこで、遺伝子組み換えの安全性について以下に記す。)

2.遺伝子組み換え作物の安全性

 遺伝子組み換え作物には、除草剤に強い作物、殺虫毒素をもった作物etc.があります。

      除草剤に強い⇒除草剤をかけても枯れない⇒これは、「除草剤耐性作物」という。

この作物は、植物ならなんでも枯らしてしまう強い農薬を浴びても枯れません。この結果、この強い農薬が残っているかもしれない作物をわたし達は摂取することになります。 

      殺虫毒素をもっている⇒特定の害虫が食べると死ぬ⇒これは、「害虫抵抗性作物」という。

この作物は、細胞全体に殺虫成分が存在するので、虫は作物のどこを食べても死んでしまいます。これより、虫が毒素に対して強くなるような免疫がつき、そのためにもっと強い農薬が必要になる可能性が考えられるのではないかとの懸念があります。

○ 農業を営む人に対し、メリットとして農薬を撒かなくて済み、人件費も減らせるなど、大きなコストダウンにつながると思います。しかし、消費者側は上記のように健康面での安全性が気になるところ。ここで、「害虫抵抗性作物」についての安全性をみてみると、人間には害はないようです。虫と人間では、からだの仕組みが違うからです。(以下、理由)

「害虫抵抗性作物」中には「Btたんぱく質」をつくる遺伝子が組み込まれています。この「Btたんぱく質」は酸性に弱い

虫の消化管(腸)はアルカリ性であり、また「受容体」という部分と結合するため消化管が壊れます。そして、栄養が吸収できなくなり、死んでしまいます。

人間の消化管の場合、最初に胃がありますが胃は酸性なので、すでにここで毒性はなくなります。かつ、胃を切除した人にも安全です。胃の次の腸(アルカリ性)には「受容体」がありません。つまり、「Btたんぱく質」は虫では有害、人間では無害。ということです。(しかし、長期的に様子をみていくことが必要。安全性には疑問が残るとのこと。)

それでは、生態系ではどうなのか?

特定の害虫に害を与えるはずの「Btたんぱく質」を含むトウモロコシの花粉がオオカバマダラ(蝶の一種)の幼虫に影響を与えたようです。このトウモロコシの花粉をトウワタの葉にまぶしたものをオオカバマダラの幼虫に食べさせたところ、「4日間で幼虫の44%が死亡し、生き残った幼虫も発育不全になった」そうです。しかし、この研究に対抗する意見もあるようで「自然条件では組み換えトウモロコシの花粉が飛散する期間は1週間から10日とごく短期間」よって遺伝子組み換えトウモロコシは危険だと早急には決め兼ねないというものです。

http://www.mhw.go.jp/topics/idenshi_13/qa/qa.html

○ 結果としては、長期的に様子をみていくことが必要だと思います。

以上のことから一体、安全性は日本においてどう評価されて商品化されるのでしょうか?

3.安全性の評価

〜商品化されるまで〜

@      製造者は実験室で遺伝子組み換え作物をつくるが、これを行うには科学技術庁により『組み換えDNA実験指針』を基にして行う。⇒組み込んだ作物の性質の検査、本来の作物との成分などを検査。

A      実用化に入る。農林水産省の『農林水産分野における組み換え体利用のための指針』を基にして、「隔離された田畑」において行う。⇒生態系に及ぼす影響などを検査。

B      食品としてどうか、その実用化に入る。厚生省の「安全性評価指針」を基にして行う。⇒本来の食品との栄養成分を検査、組み込んだ遺伝子のつくるたんぱく質が安全かどうか検査。

これらの3つの段階を経た後、製造者は厚生省に遺伝子組み換え食品の「安全性検査の確認を申請」しなければなりません。ここまでは製造者が行います。(*下線;強制的ではない。後に記述。)   

製造者から厚生省に申請書が提出された後

@      厚生省は「食品衛生調査会」に審査を要求。専門的に審査される。⇒「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性審査基準」を基に確実に製造者が「安全性評価」を行っているかをみる。

A      「食品衛生調査会」の常任委員会は「バイオテクノロジー特別部会」(11名で構成されている分野別の専門家で成り立っている。)に審査を依頼。

B      「バイオテクノロジー特別部会」は常任委員会に結果を報告。(この委員会は、専門家に加えて生産者・消費者の代表から成っている。)

C      「食品衛生調査会」は厚生省に答申する。

「国の機関が直接組み換え食品の安全性を審査する事はない。」そうです。

これらの過程の後、遺伝子組み換え食品の「安全性評価」が確実に行われていれば、商品化されます。行われていなければ、製造者は再検査をして、また「食品衛生調査会」で審査を受けなければなりません。

      ここで、「安全性評価指針」は、製造者の自主性により使用されます。「法的な強制力はない」のです。「しかし、遺伝子組み換え技術が高度な先端技術であり、また食品分野への応用経験が少ないことから、厚生省は、製造した組み換え食品に対して安全性評価指針に基づく安全性検査を実施するよう、製造者や輸入者に強く求めている。」

http://contest.thinkquest.gr.jp/tqj1999/20161/Japan/test3.htm

しかし、消費者の遺伝子組み換えに対する意識が高くなってきていること、また不安の声が多くなっていることにより2001年4月1日から、安全審査検査は法的に義務化。これを受けていない食品などは、「輸入、販売等が法的に禁止」とのこと。⇒対策が遅いのではないか?

全体の考察

遺伝子組み換えについて、私が不安に感じる点は、過去、有名な水俣病等の公害がありましたが、遺伝子組み換えにも公害としての懸念があると思います。生態系での影響が出ているのも事実であり、直接、人が遺伝子組み換え食品を摂取しなくても、生態系の中で遺伝子組み換え作物が何かの影響で突然変異を起こし、本来は遺伝子組み換えされてない作物に影響を与えることは否定できないのではないかと考えられます。そして、間接的に人間の口へ入り、後々水俣病などの公害のような被害を引き起こすのではないかと思います。

 

遺伝子組み換えは、害虫や病気に強い作物をつくることで、農薬に頼ることがなくなり、そのため、農薬にかかる費用の削減が期待され、また収穫の量を大幅に上げるなど、メリットが大きい分、人・環境に対して、健康面、生態系の乱れにおける疑問、不安(上記に述べたような不安、その他)など、デメリットも大きいと思います。そうすると、生産者、企業にメリットが大きく偏っているように感じられます。ですから、生産者、企業と消費者のそうした偏りを無くすことがこれからの課題だと思います。そして、そのために第一に考えられることは、消費者の疑問、不安を取り除くことが大切です。

 

未知の技術でもあるので国がもっと遺伝子組み換え技術に厳しい制度を設けるべきです。今は、製造者の自主性で厚生省の安全性評価指針に従っています。来春からは義務化になりますが、最初の段階で、法的に義務づけるべきだったと思います。義務づけが遅くなった背景には、やはり、わたし達、消費者の遺伝子組み換えに対しての意識が低かったのが原因であると思います。これから、遺伝子組み換えの開発は増えることは間違いないので、国は、国民・マスコミに対し広く情報公開をし、また情報公開の場を増やして遺伝子組み換えにおける意識を高めさせることが必要です。そして、何より消費者の立場である側がこうした国の情報提供に耳を傾け、興味を持たなければなりません。なによりも、遺伝子組み換え食品を買うのは、消費者であるわたし達なのです。主導権は消費者にあるのです。

 

安全性の評価で、今まで、「食品分野への応用経験が少ない」と分かっていながら、安全性検査の実施を強く求めているだけということから、製造者からの申請書が提出されたあと、それをただ審査するだけでは不十分です。製造者とは異なる研究・審査グループを設けてそこで再検査をするべきです。時間はかなりかかることは予想されますが、人体・環境に関わる大切な問題であるので、万全に期す必要があると思います。

 

アメリカでは、遺伝子組み換え食品・作物がかなり浸透しています。そして、そのアメリカから大部分、今日の日本は、大量の食料を輸入していますが、日本での遺伝子組み換えの問題に目を向けるばかりではなく、遺伝子組み換えを行っている国との食料貿易も考えていく必要があります。相手国に対しては、日本での規制よりもっと厳しい規制を敷き、何か問題があった場合に即、対応できるようにすべきだと思います。

 

  http://www.mhw.go.jp/topics/idenshi_13/index.html

  上記「遺伝子組換え食品ホームページ厚生省生活衛生局」の中で、遺伝子組み換え食品、DNA・遺伝子それ自身について基礎的なことから専門的なことまで分かりやすい説明が載っているサイト。

http://contest.thinkquest.gr.jp/tqj1999/20161/index./html

 上記「遺伝子組み換え食品研究所」は、「遺伝子組換え食品ホームページ厚生省生活衛生局」他、公的な機関のホームページも参考にするなど、独自にまとめていて、遺伝子組み換えについて調べるにあたり便利なサイト。