現代政治の理論と実際
《介護保険制度の仕組みと実際の介護の様子》 中村泰子(t002560X)
T 介護保険制度の仕組み
平成12年4月から、ついに介護保険が始まりました。しかし私は、介護保険といっても
どんな制度なのか、またどんな人が対象となりどんなサービスが受けられるのか、理解し
ていませんでした。また、保険料を払っていても、充分なサービスを受けられていない人
がたくさんいます。そこで介護保険の仕組みや介護を受けるまでの流れなどについて調べ、
高齢者やその家族たちの負担などを考えていきたいと思います。
1 介護保険制度のはじまり
私たちは今、高齢化社会の中にいます。21世紀半ばには3人に1人が高齢者という時代
を迎えようとしています。
このように、寝たきりや痴呆の高齢者が増える一方で、介護者の50%以上が60歳以上
と介護する側の人間も高齢になり、また介護者の85%が女性であるにも関わらず、働き
に出る女性も増えているので、家族だけで介護することは難しくなってきています。
そして、この介護を社会全体で支えようと生まれたのが「介護保険制度」です。
2 介護保険制度の仕組み
@介護を必要とする状態になっても、自立した生活ができるよう、高齢者の介護を社会全
体で支える仕組みです。
A身近なケアプラン作成事業者に相談すれば、これまで福祉と医療に分かれ、窓口も別々
出利用しにくかった介護サービスを総合的に受けられる利用しやすい仕組みです。
B社会保険の仕組みにより、受けられる介護サービスと保険料との関係が分かりやすい仕
組みです。
介護保険に加入するのは、40歳以上の人で、
・ 65歳以上の第1号被保険者
・ 40歳から64歳までの第2号被保険者 とがあります。
第1号被保険者:寝たきりや痴呆などで、入浴、排泄、食事などに常に介護が必要な状態
(要介護状態)と認定された人、常時の介護までは必要ないが、家事や身の
まわりのことができないなど、日常生活に支援が必要な状態(要支援状態)
と認定された人、が対象となります。
第2号被保険者:初老期痴呆、脳血管疾患など老化が原因とされる病気により介護や支援
が必要(要介護要支援状態)と認定された人が対象となります。
介護保険で受けられるサービスは、
在宅サービス:要支援状態・要介護状態の人が受けられるサービスです。ホームヘルパーや
看護婦などが家庭を訪問、施設への短期入所サービス、福祉用具の貸与・購
入や住宅の改修、介護サービス計画の作成といったサービスが受けられます。
施設サービス:要介護状態の人が受けられるサービスです。特別養護老人ホーム(介護老人
福祉施設)、老人保健施設(介護老人保健施設)、介護職員が手厚く配置された
病院など(介護療養型医療施設)を利用できます。
このように介護を委託することによって、高齢者の家族は介護に拘束されることなく、負
担も軽くなります。また介護業者は万全の体制を整えて迎えてくれるため、介護を受ける
高齢者は整った施設で行き届いたサービスを受けることができ、高齢者にとってもその家
族にとっても大変いいことだと思います。
3 介護保険を受けるために
介護保険からサービスを受けるためには、寝たきりや痴呆などサービスを受けられる状態
かどうかの認定(要介護認定)を受けることが必要です。この要介護認定では、介護が必
要な状態かどうかだけではなく、介護の手のかかり具合(要介護度)も判定されます。
要介護認定の申請から認定まで
利用者(被保険者)は市町村に要介護認定の申請をします。そして、訪問調査や医師の意見
書をもとに介護認定審査会による審査判定後、要介護認定を受けられます。これを認定した
場合、介護サービス計画がつくられます。
要介護度とは、1日あたりの要介護時間により全6段階で区分したもので、次の表のよう
になります。
要支援 |
1日あたり30分未満であって、全体の介護の時間が25分以上か、または 洗濯・掃除などの家事援助や機能訓練の合計が10分以上である状態 |
要介護1 |
1日あたり30分以上50分未満である状態 |
要介護2 |
1日あたり50分以上70分未満である状態 |
要介護3 |
1日あたり70分以上90分未満である状態 |
要介護4 |
1日あたり90分以上110分未満である状態 |
要介護5 |
1日あたり110分以上である状態 |
4 介護保険を広域で進めるために
介護保険の事務を効率的に行ったり、財政を安定させたりするため、またいろいろなサービ
スを効率的に提供するためには、隣接する市町村が協力して広域的に取り組むことが有効で
す。そこで次の2つについて、それぞれのメリットをあげてみます。
・要介護認定の共同実施(介護認定審査会の共同設置や広域連合などで行います)
メリット @医師、看護婦など審査会の委員の確保がしやすい
A隣町との公平な認定ができる
B要介護認定の事務が効率的にできる
・ 介護保険財政の共同化(合計を1つにして、保険料の水準をそろえます)
メリット @隣町との保険料の不均衡がなくなる
A保険財政の面が安定する
B介護保険の事務が効率的にできる
C隣町と協力して施設や在宅サービスを整備することにより、いろいろなサービス
を確保できる
介護サービスが効率的に提供されるようになれば、利用者はより一層充実したサービスが受
けられるようになります。そのためには、安定した介護保険が運営される必要があると思いま
す。市町村、都道府県そして国全体の協力が求められています。
参考;(株)社会保険研究所「介護保険」,小坂樹徳「新版看護学全書 第8巻 保健医療論」,
社団法人 厚生統計協会「国民衛生の動向」第47巻第9号
U 具体的な介護を考える
まず、実際に介護サービスを受けている人を例にあげてホームヘルパーなどの必要性について
考えてみました。ほとんどの場合、下に示した表のような介護サービス計画書を用いて介護を
行っています。ただし、利用者の要介護度や身体の状態などによって内容はすべて異なります。
(例)要介護4の76歳の場合(表の中は省略します)
介護サービス計画書
生活全般の解決すべき課題 (ニーズ) |
援助目標 |
援助計画 |
||
長期目標 |
短期目標 |
介護内容 |
頻度 |
|
|
|
|
|
|
この人の場合、生活全般の援助と本人の希望である在宅での入浴援助が主な課題となっていま
す。しかし、この家庭での主な介護者は長男一人であり、身体的・精神的負担が大き過ぎると
思います。特に入浴援助は施設のような場所ならともかく自宅で、しかも何の知識ももたない
人が行うのは大変難しいと思います。大人一人支えるだけでも思った以上に力がいるし、水の
中に入るとさらに重くなります。だからといってやらないわけにもいきません。そこで、ホー
ムヘルパーなどが必要になってきます。ホームヘルパーたちはあらゆる利用者に対して適切な
介護を行うことができます。また自宅にいながら介護を受けられるというメリットもあります。
家族だけでは介護が難しくなった人でもよりよい介護を受けられるようにホームヘルパーなど
は不可欠だと思います。
次に、介護サービスが効率よく進むようなものについてインターネットからいくつかの事例を
抜粋し自分の考えをまとめてみました。
・バリアフリー
12月3日には、金沢市、市文化ホールで「みんなで考えるバリアフリー交通フォーラム」
というものが実施されました。その中の一部で、「メルシーキャブ」というサービスが取り
上げられました。このサービスは、「日常車いすを利用しバスやタクシーの乗降が難しい市
民が買い物や通院、行楽などに出かける際利用してもらおうと、年会費と利用料、ガソリ
ン代の負担だけでボランティア運転手が車いすごと好きな場所まで運んでくれるサービス。」
で、金沢市では約3年前から導入されています。しかし利用者は多くても、専用車が少なく、
範囲も限られてしまっています。
http://www.kaigo-fukushi.com/barrierfree/200012/barrierfree2000120400.html
私は、このようなサービスがあること、そして何よりほぼボランティアで運営されている
ということが大変すばらしいと思います。車いす利用者や高齢者にとって交通機関を利用
することは自分自身大変でもあるし、周りの人に迷惑がかかってしまうだろう、などと考
えてしまい利用しない人がたくさんいると思います。そうなると自分で行動できる範囲は
限られているために出会う人はいつも同じで、そして家を出ることさえも少なくなってし
まうのではないかと思います。だからこのようなサービスを利用することで彼らは行動範
広げるとともに新しい出会いを求め、心身ともに元気になれると思います。ただ残念なこと
にこのようなサービスは現在ではごく一部に限られているため、専用車両が運行されるよう
になると交通規制の面にも問題が生じてくるだろうし、より利用しやすくなるためには一般
の人にも理解してもらうことが大切だと思います。少しでも早く全国展開されればいいので
すがそれまでにはまだもう少し時間がかかりそうです。
・施設
12月1日、小山市に3自治会運営によるお年寄りのデイサービス「みつわ」がオープンし
ました。介護が不必要でも家に閉じこもりがちな高齢者が気軽に集まって、仲間や地域の人
たちと交流できるように、と考えられたデイサービスモデル事業のひとつです。
http://www.kaigo-fukushi.com/shisetsu/200012/shisetsu2000120100.html
デイサービスなどを含む老人保健施設は全国に2300近くも開設されています(平成11年
1月)。これらの施設では、治療というよりむしろ看護や介護、リハビリに重点をおいた医療
ケアと生活の支援を目的としているので、普段塞ぎがちな高齢者にとって同じ立場の人と触
れ合うことは精神的にも大変いいことだし、積極的に利用する高齢者が増えればさらに充実
した介護が実現できると思います。
・住宅
介護の必要な高齢者にとって、ちょっとした段差が転倒などの事故につながる恐れがありま
す。部屋の敷居や玄関の段差などにスロープを利用することで、高齢者のつまずきを防ぐこと
ができ、階段、トイレ、浴室、廊下などに手すりをつければ、自力で部屋を移動することも
できます。車いすを利用するのなら、移動するスペースの確保や段差をなくすことにより、車
いすの機能をフル活用できます。また、エレベーターやリフトを利用すれば、高齢者の行動範
囲もさらに広がります。
http://www.kaigo-fukushi.com/juutaku/jutaku.htm
自宅というのは今までそしてこれから生活する場所であり、一番安心できる場所であると思い
ます。ただ、充分に施設が整っていないために生活に支障が出る場合があります。健康的な人
にとって何気ない数センチの段差が、高齢者や車いす利用者にとっては大きな障害となること
があります。そこで、最近ではバリアフリーを取り入れた住宅が増えてきています。床を平ら
にするというちょっとした工夫をするだけでとても住みやすくなるはずです。またリフトを取
り入れれば、入浴の際やベッドからの離床の際など、介護される側はもちろんする側にとって
も大変楽になると思います。行動範囲を広げることは自分で何かをすることができるという自
信を持つことにもつながってとてもいいと思います。
Vまとめ
誰もが直面する高齢時代によりよい介護を受けたいと思うのは当然のことですが、実際高齢
になってしまってからでは何も変えることはできません。私たちの次の世代もしくはその次の
世代に頼ることになるかもしれません。そう考えると、現在そして今後の高齢化社会を支え
ていくためには私たちの力が必要になります。私たち一般人でも高齢者や身体障害者の手を引
いてあげることで介護は始まると思います。自分が逆の立場で、だれも手を引いてくれなか
ったらとても悲しいです。きっと近いうちにこのような現状が、介護者が足らないという時
代がくると思います。その前に社会全体で介護について考える必要があると思います。少な
い介護者で多くの利用者を充分に介護できるような整った設備や方法が求められるはずです。
将来私たちは支えられる立場にある、ということを前提にこれからの介護に向き合っていく
ことが介護を充実させる第一歩だと思います。