現代政治の理論と実際レポート

『環境税導入と環境会計の確立を目指して 環境保全のために』

作成者 長田 元  所属 宇都宮大学国際学部 990143k

 

キーワード 環境保護 税制 環境経済 資本主義

*環境破壊から私たちの生活を守る方法は『自然を保護すること』ではない。科学技術の発達、炭素税導入によって市場経済に環境の要素を取り入れ、市場によって環境を保護することである。

1章 はじめに

環境保護は私たちにとって重要な課題となっている。産業革命以来の人類の経済活動は地球環境に大きな負担を強いることになった。この状態は現在も続いており、今後も継続されるなら地球上の生命は生存が困難になることが予想される。この現況を打開するために私たちは何ができるのかを考察したい。今回は、税制、環境経済について考えた。

まずは環境保護を訴えているNGOの主張が正しいのかを考察した。NGOの主張といっても一概に断定することはできないが多くのNGOに共通していることは「自然を保護する」という考えではないだろうか。ほとんどの団体は「産業界及び生活者の出す温暖化ガスを減らす」事を求めている。「減らす」と言うことはつまり、生活にある程度我慢を要求しているということだ。NGOは「我慢」で地球環境を守ろうとしている。その「我慢」は、経済にどのような悪影響を及ぼすだろうか。 消費によって成立している市場経済に「我慢」が入ると経済のバランスが崩れて経済危機を引き起こす。NGOの主張をそのまま受け入れると確かに「環境」は保護できるが「経済的崩壊」を招く可能性がある。→消費の落ち込みは需要供給のバランスを崩し経済的崩壊を引き起こす。それは失業を生み、国の財政が破綻することで、保健医療も機能しなくなり、教育もずさんになる。環境保護を気にとめる余裕が人々の心からりゴミの反乱、有害物の垂れ流しなどがおこり、逆に「環境破壊」を速めることになるだろう。それゆえ、いまのNGOが唱える「環境保護」では「人間生活環境」は守れない。  

2章 私たちはどうすればよいか? 税制の面から

私たちはどうすればよいのだろうか? それは炭素税の導入である。

環境税は環境を確実に保護する 環境税とは?

炭素税の導入で環境は保護できる。環境税とは環境保護の考え方を盛り込んだ税金の制度である。例えば工場が有害なガスを排出していても製品の価格はあまり関係がない。環境問題は市場だけでは解決しにくい。そこで排出ガスの量に応じて製品に課税するなどの方法で市場経済に環境の要素を導入するのがグリー税制の考え方である。つまり、環境への負荷に応じて税金をかける仕組みで、消費エネルギーのCO2排出量をもとに課税する。CO2排出につながる電気やガス、ガソリンなどに課税することでエネルギー消費を抑えるということだ。

3章 実際の取り組み 環境会計を考察する

環境会計とは、企業等の環境保全への取り組みを評価するための会計基準である。企業の環境保全への取り組みをより効率的で効果の高いものにしていくための経営管理上の分析手段である。経済の主体である企業等は、経済活動に大きな地位を占めているので、それぞれの事業活動の中に環境に対する意識を組み込んでいくことが、環境保全の大きな原動力となる。実際にアメリカのIBMが約10年前から環境会計の開示の公表を行っている。日本企業は99年に富士通が日本ではじめて3月期決算にあわせて独自算定の環境会計を公表している。そのほか製造業では日本IBM、トヨタ自動車、流通業ではイトーヨーカ堂などが同様の取り組みをはじめている。

しかし、環境会計には共通の枠組みがないという課題があった。そのため、共通の枠組みを構築するものとしてガイドラインが必要となっていた。そこで環境庁が専門的で公平な立場から環境会計の基準を考えた。

99年3月、環境庁は「環境保全コストの把握及び公表に関するガイドライン(中間とりまとめ)」を公表した。このガイドライン案を公表することにより、企業等における環境会計の導入を促そうとしている。99年を目途にガイドライン案の見直しを行い、より良いものへと改訂することとした。

このガイドライン案の公表を一つの契機に、それ以降これまでの間に、日本企業の環境会計の導入が相次いだ。そして、99年11月、環境庁に「環境会計システムの確立に関する検討会」が発足した。

さらに、環境庁は環境会計を促進するためにホームページから環境会計のためのプログラムを配布している。

(1) 実際の取り組み ガソリン税

環境庁の「環境に係る税・課徴金等の経済的手法研究会」は炭素1tあたり約300円ガソリン1lで約2円の環境税を化石燃料に課すという提案を盛り込んだ報告書をまとめた(1997年12月)税収は太陽電池の普及など温暖化対策の補助金に当てる。資産では2010年にCO2の排出量を1990年比2.6%削減でき国民一人当たりの負担は年間1万円弱。GNPの影響は年間−0.06%で経済への影響はほとんどない。

また、環境庁は

95年運輸省は運輸省政策審議議会総合部会の答申で3つの案を出している。

1 燃費だけを基準とする課税方式

2 排気量や重量に関係なく車種ごとに適用される燃費基準を設けそれにより燃費のよい車には減税、悪い車には増税する案。

3 現行の税額を基準としつつ排気量や重量ごとに燃費基準を設定、燃費のよい車には減税、悪い車には増税する案。

(2) 東京都の取り組み

現在、石原都知事が率先して行っている、東京都からのディーゼル車の排斥。東京を住みやすい生活環境にするために必要な大きなプロジェクトだ。自治体の取り組みとして東京都の「ディーゼル車NO作戦ステップ2」を紹介する。

「ディーゼル車NO作戦ステップ2」

東京都がだしたよい自動車購入ガイドライン ディーゼル車排ガスに挑む9つの施策 『条例化による義務づけ』
『グリーン購入ネットワーク(GPN)の「自動車」購入ガイドライン』 大型貨物車やバス等へのディーゼル微粒子除去装置の装着義務づけ
燃費が良く、二酸化炭素排出量が少ないこと ガソリン車等と同等の排出ガス基準を満たさないディーゼル車の使用制限、代替義務づけ
排出ガス中の窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素、粒子状物質(PM)が少ないこと より低公害な自動車の使用促進
エアコンの冷媒にオゾン層破壊と地球温暖化影響の小さい物質が使用されていること 自動車に関する環境情報の公開と説明の義務づけ
鉛の使用量が削減されていること 軽油優遇税制の是正
使用後に分解して素材のリサイクルがしやすいように設計されていること 軽油硫黄分規制の強化と新長期規制の前倒し実施
再生材料が多く使用されていること 東京の走行実態と乖離した排出ガス試験方法の是正
車外騒音が小さいこと 車検制度の環境面での充実と黒煙規制の強化
  燃料電池車やモーダルシフトをも展望した長期戦略の確立

東京都のホームページより抜粋 (http://www.metro.tokyo.jp/index.htm

(3)実際に調べてみて

 実際に調べてみて政府や自治体は行動しているようだが一般に普及するまではまだまだ時間がかかると感じた。一部の経済界からの反対や省庁どうしの対立もあるようだ。これからより積極的な取り組みが迫られるであろうと思う。しかし、東京都などの一部の自治体では自動車税、ガソリン税を値上げするなどの対応を取っている自治体があることもわかった。東京が先導的立場になって他の自治体も動かしてほしいと感じた。

 環境庁の「環境会計システムの導入のためのガイドライン」は、大きな進歩である。今後も検討を続け、より充実した会計制度を確立していくべきだと思う。また、企業の多国籍化を考えると、現地の環境法制の差異を反映して環境対策の内容やその効果の現れ方に違いが出ることが予想される。海外でも通用する環境会計システムを確立していくための検討も必要だと感じた。最後にこのレポートを作成するために学んだことを生かして私なりのまとめを行った。

4章  自分の考え 環境会計と循環型経済

オイルショックが起こったとき石油を輸入していた日本は低燃費、小型化、ソフト化などの技術革新で自動車産業を中心として、オイルショックを乗り越えようとした。

 その結果はどうなったか。普通なら、技術革新でコストがかかった日本の車が国際競争に負けるのだが、実際は、その低燃費や小型化や省エネなどの技術が日本車の世界でのシェアの飛躍をもたらした。

 「環境問題」もこれと同じ構造ではないだろうか。「環境問題」を税制と技術革新で乗り越える。私は、現在の社会が「環境問題」を乗り越えるとき、大きな変化が起こると考えている。

 それは、消費経済から循環経済への変化である。今ある物を循環する経済構造が成立すれば、環境を破壊することなく、資本主義が生き続けることが可能になる。

 これは資本主義の大きな進化である。そしてこの進化は経済構造の変化を起こす。新しく生まれた「環境産業」は新たなビジネスとして大きな位置を占めることとなるだろう。これから導入されるであろう「炭素税」などによる、燃費の効率の向上を望む需要と循環経済を支えるためのリサイクル需要などから「環境産業」は大きなウェイトを占めてくるだろうと思う。 そのとき最も有効な税制は炭素税である。特にガソリン税は私達の生活に最も影響を与える。私はガソリン税を今の2倍から3倍にしてもよいと考えている。ガソリン税を上げることで燃費のよい自動車の開発を刺激することになるし、高いガソリン税を払いたくない人は交通手段を自動車から電車などの環境に優しく、効率的な交通機関に移るからだ。これこそ私達の生活水準を落とすことなく環境を保護する方法である。燃費や効率のよいもので代替できるものはどんどんよいものに代替していけばよいのだ。

自治体はまず環境税・環境会計の導入が率先して地元の「環境産業」の育成を目指して行っている人を支援することが重要だと思う。市場は、もうすでに「環境産業」に向けて対策を取り始めている。市場は、もうすでに「環境産業」に向けて対策を取り始めている。それは京都会議を見れば明らかである。

京都会議でヨーロッパは強い立場をとり続けていた。なぜか。環境に対する意識が高いからか?そうではない。ここでは、環境保護が経済に反映されているのだ。

 ヨーロッパや日本の「環境産業」の技術はとても高い。対して、アメリカはあまり得意な分野でないことは明らかだ。京都会議で、ヨーロッパの主張が受け入れられ、世界経済をヨーロッパ・日本型へと変えていけばヨーロッパと日本は世界経済の覇権を握ることができる。京都会議は環境保護という良心を盾にヨーロッパがいかにして経済的に他国より有利に立てるかと交渉だったのである。

市場は需要に敏感である。人間が環境保護を求めれば市場ではそれが産業となって動き出す。市場は「環境問題」を解決する。私達はもう今の生活を捨てて生きていくことは不可能である。

参考文献・リンク先

東京都  http://www.metro.tokyo.jp/index.htm

東京都のホームページです。ディーゼル車に関する情報、都の環境に関する条例などが載せられています。都の取り組みが詳細に掲載されています。

環境庁  http://www.eic.or.jp/eanet/

環境庁のホームページです。環境基準、環境庁の取り組み、環境税についての記述がありました。環境会計に関するプログラムの配布も行っています。

通産省  http://www.miti.go.jp/

通産省のホームページです。リサイクルに関する記述があり、とても充実していました。内容も豊富でとても見ごたえのあるページです。

私のホームページ http://bt_nagata.tripod.co.jp/

私のホームページです。環境経済に関すること、地球温暖化について、その原因と温室効果ガスについての記述があります。