現代政治の理論と実際
工学部・建設学科・002805H・井上 淳
1公共事業とはhttp://sun1.pref.toyama.jp/sections/1105/koukyou.html
公共事業費・主要県単独事業費の推移
※公共事業費とは・・・・・・・・・国からの補助を受けて県が実施する建設事業や、国が直接実施する建設事業に対する県の負担金である。しかし、国が直接行う事業はほんの一握りであり、地方自治体と共同ですることが多い。
主要県単独事業費とは・・・・・・国からの補助を受けずに県が独自に実施する建設事業である。
公共事業・主要県単独事業は、道路、河川、都市計画、土地改良、治山、北陸新幹線などの社会基盤の整備に使われている。また、近年では公共施設のバリアフリー化や公園施設の充実、道路における渋滞緩和のための交差点の改良など、住みよい街をつくるための大きな役割を担っている。
バリアフリー化とは・・・高齢者や身体障害者のために、施設を整えることである。具体的には、駅で階段を使わなくても、エレベーターやエスカレーターで移動できるようにすること。また、バスや電車に乗るときのために、補助台を設置することである。
2民主党の公共事業政策
http://www.dpj.or.jp/news/200006/20000614_koukyojigyo.html
鳩山代表「公共事業の中止を提唱」2000年6月14日
徳島県松茂町で記者会見をし、森総理は景気対策と称して公共事業予備費を切り崩し、バラマキをさらに続けるとしている。そのうえ、先の7党首討論では財政の構造改革を先送りすると明言している。
民主党は「構造改革」を勇気を持って挑戦し、これによって、国民生活に安心を保障をし、経済には活力をもたらす確実な道だと主張している。公共事業については「5年で2割、10年で3割の削減を行う」としている。公共事業の中止を含めた見直しは次のように提案している。
[1] 国営中海土地改良事業「本庄工区干拓事業」については、事業の継続の中止と堤防の開削を求める。ただし、地域の振興方策については、「中海・宍道湖」及び周辺域を活用する方向で、地元と国が白紙で検討するものとする。
[2] 吉野川第十可動堰改築事業(=吉野川可動堰)については、既に実施された徳島市民による住民投票結果をも踏まえて、計画を白紙に戻し、再検討する。
[3] 川辺川ダム事業については、事業を中止する。ただし、事業の中止が既に積み重ねられてきた関連事業や補償などに重大な影響を及ぼすことを考慮し、国策によって翻弄され続けてきた住民に対して、国が責任をもって十分な事後対策を講ずるものとする。
民主党政調会長 管 直人 2000年8月28日
「公共事業の抜本的見直しに関する三党合意」
与党3党は全国233ヶ所の公共事業の見直し、14ヶ所の継続を取りまとめ、政府に要望を行った。今回の見直しは、先の総選挙で民主党が掲げた「公共事業抜本的改革」の主張を有権者が支持したのを見て、与党が駆け足でまとめあげたものであるが、我々の主張を一部受け入れたことは評価する。しかし、具体的数値目標も無く、単なる目先改革ではないかという疑問がぬぐいきれないと称している。
私の見解;民主党の公共事業政策は具体的で、事業を中止した後の事まで考えている。しかし、民主党の政策が通れば、日本の多くの土木会社が倒産の危機に直面するはずだ。また、「5年で2割、10年で3割の削減を行う」という政策は、必ず起こるであろう東海道大震災で達成できないだろう。
3自民党の都市生活政策
http://www.jimin.or.jp/jimin/tosi_qa/index.html
自民党のホームページには、公共事業削減に関する直接的なものは無かった。そこで、公共事業に関係のある、自民党が考える都市生活について述べることにする。
1、大都市の交通インフラの抜本的整備
・ 都市圏における開かずの踏切の解消による交通円滑化
連続立体交差事業等により開かずの踏切(ボトルネック踏切)の集中的な廃止等、都市部を中心に踏切の改良を重点的に推進する。 このため、農地を公共事業の用に供するため一時使用した場合の相続税、贈与税、不動産取得税の納税猶予制度を拡充する。
2、都市生活の新しいライフスタイルをめざして
(1) 都市住民の住宅取得の支援
現行の住宅ローン控除制度は、都市住民のゆとりある住宅取得の支援及び景気対策としても大きな役割を果たしている。引き続き、都市住民の住宅取得や住み替えを強力に支援する税制上の措置を講じる。
(2) 住宅取得のための贈与税の拡充
住宅の取得が30歳代等の若年層にもより容易に行なえるよう、住宅取得のための贈与税の非課税額を現行300万円から1,000万円に拡充する。
3、資源の有効活用等による循環型都市づくり
・ ディーゼル自動車の排気ガス対策
大都市部において問題となっているディーゼル自動車が排出する粒子状物質等について、その排出量を削減するため、除去装置の装着等に係る補助や税制上の措置を講じる。
私の見解;自民党の公共事業政策は、民主党に比べてもかなり良い政策が立てられている。しかし、事業を行った後の反省や対策がホームページに記載されていなかったことが残念だった。
4公共事業削減による建設業界への影響
http://www.tokachi.co.jp/kachi/jour/kensetu/1.htm
国の財政構造改革会議は6月、1998年度の公共事業費は今年度比で7%削減し、2000年度までの集中改革期間には15%削減すると打ち出した。さらに公共工事のコスト10%削減という政府の行動計画もあり、建設業界には2つのショックが襲う。
右上にあるグラフは、建設業界の収入の割合を示すものである。官庁の仕事が7割で、民間3割。公共事業費が削減されれば、かなりの打撃を受け、大変な状況になる。この辺が他の業界と違う所である。私の地元、山形でも、1999年の倒産した会社の内の7割以上が建設会社である。
土木会社は公共事業で収入を賄っているともいえる。在日外国人を職業別という統計を取ってみると、建設関係がトップである。このまま削減が行われると、特に外国人のリストラが盛んになると考えられる。日本の人口が減っている中、外国人の手を借りなければ、日本の将来は無い。もし、外国人への就職幅を広げなければ、建設関係の門を広げなければならない。そのような意味でも公共事業は大切である。しかし、その公共事業は無駄なものであってはならない。
5公共事業の必要性
はじめに、公共事業費削減という語句が国民に浸透し、公共事業の大切さが見失われる可能性があると思うので「公共事業の必要性」を述べることにした。
上の図は大まかな東京の断面図です。各一級河川の対岸にあるのは、スーパー堤防と呼ばれるものである。この堤防は30から40年に一回降るような雨に耐えられる構造を持っている。図のように都心は川の窪みに位置している。テレビで100年に1度降るか降らないかの大雨が降った時のイメージ映像を見たことがある人がいるかもしれない。都心が水の下になってしまうのは、東京が図のような地形を持っているからである。大雨だけでなく、現在話題の東海道大地震が起これば、堤防が崩れ、東京は水の下になってしまうのである。この断面図は東京だけでなく、淀川と大和川に囲まれた大阪など多くの日本の都市が同様の構造になっているのである。
下に参考として大まかなパリの断面図を記しておくが、先ほどと同様に考えれば、日本の都市よりヨーロッパの都市の方が、危険度が少ないことが分かる。(「大地の川」参照)
公共事業に必要なことは、上に示したような河川だけでなく、高速道路、一般道路、産業廃棄物処理上などたくさんある。公共事業費削減は大切なことですが、私達の生活には欠かせないものなのである。
6今後の政治家に必要なこと
全国の公共事業を見直せば、政治家と土木会社との金のバラマキと取れるような所があるはずだ。今後、このような無駄な公共事業を中止することは、経済的に大切である。しかし、この突如発生した「公共事業費削減」という考えが政府や国民に浸透することによって、必要なものまで、今後、行われないように思える。過去の歴史を紐解いても、手を緩めたことで、成功した例は少ない。私が考える無駄な公共事業の分のお金の使い道は、技術者の教育と研究、三宅島などの復興の役立てにすればよいと思う。
今回の「抜本的公共事業の見直し」は、今後に財産を残した。自然に手を出したものを元に戻すことは不可能である。つまり、公共事業(土木)は不可逆性なのだ。事業を開始する前に、無駄だと判断できたなら、こんなことにはならなかったはずである。その点、自民党より民主党は中止した後のことまで考えているので評価できる。自民党は、目先の理想的な良い政策を打ち立てるが、具体的な反省をしない。こんなことなら、建設業界には厳しいことになるかもしれないが、民主党を中心とする野党へ、政権交代があった方が良いかもしれない。
公共事業を指揮するのは土木技術者ではなく政府である。何の知識もないような政治家が地方自治体や大臣になってはどうかと思う。ただ、法律の下で行政を行って。側近に専門家がいれば良いのではないかという反対意見がでるかもしれないが、自分の頭に専門的知識を持って指揮することとはレベルが違う。21世紀の各大臣や地方自治体の長に必要なことは、いままで述べてきたような知識だけでなく、幅広く、吸収性のある人であって、そうした人を国民が選ぶことだと思う。