揺れる思川開発事業
教育学部環境教育
福地幸夫 001723思川開発事業とは
計画されたのは
昭和39年。東京は干上がっていた。五輪開幕を2ヶ月後に控えたこの年、異常渇水で水不足が首都政治問題化し「東京砂漠」の異名が着いたのもこの年だった。大容量のダムの必要性が高まった。そこで適地とされたのが
[南摩](思川の支流)だった。思川上流の鹿沼市上南摩町の南摩川に南摩ダム、支流の行川に行川ダム
(今市市)をか建設し水の相互融通を図る。目的は「都市用水の確保」「洪水調節」「発電」「県央畑作地帯の農業用水確保」が主とされる。引用
http//www.simotsuke.co.jp計画から
35年。取り残された水没地区1965
年「南摩建設反対期成同盟会」が発足。地元住民は建設に断固反対した。しかし、30年余の反対運動につかれ、水没地住民は苦渋に満ち移転合意の決断を下した。だが地区間の温度差は今もって消えない。新天地での生活再建を目指す人。「出来ればここにいたい」というひと。すべての地元住民の本当の心底は「故郷を出るのは悲しい」あきらめきれないのだ。そして水没地に行政は何もしてくれなかった。道路整備も、河川改修も優先度は低いとされ見送られた。南摩は見捨てられ、取り残された。引用
http//www.simotsuke.co.jp
流域各県の水事情
東京が降りた
東京都水道局は「
30年の間に水の手当てがつきダムの水は要らなくなった」と発表した。群馬県内の矢木沢、下久保ダムの水に続いて、利根川と荒川を結ぶ利根川導水路が完成。利根川河口堰でも都市用水を確保。さらに草木、奈良俣ダム、渡良瀬遊水地、霞ヶ関開発、霞ヶ関導水…・。さらに1985年を過ぎると水源量が、需要量をはるかに上回るようになった。都の一日最大配水料はここ数年横ばいから微減傾向にある。10−15年後に人口が減少に向かう中、都水道局は将来の配水量を下方修正しつつある。
引用
http://www.simotsuke.co.jp参考
利根川水系知事サミット
水不足の埼玉
1996
年の夏埼玉は慢性的な水不足に悩んでいた。水源を利根川と荒川に頼っていた。いわゆる水利権は必要な量の30%に過ぎない。足りないぶんは、河川水が豊富な時に限って取水できる暫定取水でまかなっていた。渇水期になれば水不足になるのは当然だった。人口の急増と地下水の過剰なくみ上げに寄る
地盤沈下が深刻化し、さらに大宮駅近くには「さいたま新都心」が完成し新たな昼間人口増が見込まれる。県の予測では
2015年の人口は100万人増の800万人に達し1日に必要な水も最大約360万トンと45万トン分を新たに確保しなければならない。これらの水は利根川上流の群馬や栃木に計画されているダムに頼らざる得ないのが現状だ。
参考
利根川水系知事サミット地下水依存の栃木
県内では
1日平均約69万トン(1997年実績)の水が水道水として使われている。その7割を地下水に頼っている。県南になるほど依存度は高く9割近くになる。工業用水も大半が地下水という。こうした状況は普通でないといわれる。地下水は汚染されている恐れもあり人の健康への影響も心配される
。また人口増に対する安定度も無いという。地盤沈下度全国一もあり、河川水への切り換えが必要である。南摩ダムで開発される都市用水は日量約
62万トンうち26万トンを県の水道用水と工業用水、小山市の水道用水で使う計画だ。
引用
http://www.simotsuke.co.jp参考
利根川水系知事サミット
争点
栃木知事選県単独事業
東大芦ダム渡辺氏
安定的な水源確保のため必要福田氏
無駄な事業、見直すべき 当選
知事選挙で元今市市長の福田昭夫氏(52)が当選したことにより、思川開発の
全面見直しの色合いが濃厚となった。当選後の記者会見で、小山市の水需要によっては、計画の縮小から更に
事業中止へ踏み込む姿勢を見せた。政府与党の公共事業見直し勧告を受け、大谷川からの取水を当面中止する方針を既に決めている。
引用
11月21日付下野新聞
思川開発事業を考える流域の会
ダム
本当に必要か同会は無駄な公共事業であるとして、思川開発事業に全面的に反対する考えを示した。「
予算と利権を死守するためにダム建設が進められている。」「公共事業では政財間のシステムが出来て、本当に必要なものというより予算消化のために造っている。」さらに、「ダムは百害あって一利無しというのは国際的な常識。」とダム建設そのものを批判した。引用
11月27日付下野新聞
考察
当初水不足解決の切り札とし計画された思川開発事業は、その必要性の低下により規模縮小から抜本的見直しへ変更されつつある。治水や利水など国民の生活に必要な事業目的もある。しかし。反対する福田新知事は
何の代替え策も打ち出していない。鹿沼市や小山市の水需要、下流埼玉県の安定した水源確保。やるにしてもやらぬにしても福田新知事と水資源開発公団は厳しい選択に迫られそうだ。僕が考える代替え案を示してみたい。下流自治体の安定した水道水、工業用水の水源確保のために、河川流量が1年中一定量以上ある必要がある。そのためには水源地が保水力のある森林でなければならない。ヒノキやスギなどの針葉樹林は保水力が劣るため、ブナ、クヌギなどの落葉広葉樹林である事が望ましい。国や自治体は積極的な植林事業を行う必要があると考える。
一方、治水面でも水源地の保水力の向上が重要な課題である。先進国の中で首都とその周辺部がこれほど洪水に対してきけんな状態にあるのは日本だけであるそうだ。戦後の復興期、家を建てるために盛んに木が切り倒された。そのしこりが今でも残っている。
ダムを造るよりは、水源の植林や、中流域の水田の保護、雑木林の保全の方が予算はかからないし、自然保護でもある。この「
緑のダム」を推進していく事が僕の考えである。
引用
下野新聞ホームページ http://www.simotsuke.co.jp参考
利根川水系知事サミット2000(8月29日東京ビッグサイト)