現代政治の理論と実際
「オークションから見るインターネット犯罪への対応状況」
阿久津徳寿(T002902M)
 
 インターネットが今までのメディアと大きく違う点は何かと問われたら、その答えの一つに個人が情報を受け取るだけでなく、世界中へ発信できることがあげられる。そこで今回は、「個人による情報の発信が現代に及ぼす影響」と言うテーマではあまりに広すぎるので、その一端であろうインターネットオークションにおける個人間取引で生じる様々な問題に注目してみたいと思う。
 
1.オークションにおけるトラブルの実体
 さて、最近はニュースなどでもインターネットオークション関連の犯罪が報道される機会が多くなってきているが、果たしてその実体はどのような物になっているのか、まずはオークションにおける代表的なトラブルをあげてみることで確認してみたい。
 
@詐欺行為
 代金を支払ったのに商品が送られてこない。その逆に商品を送ったのに代金を支払わない。または違う物が送られてきたなど。一般にパソコンやブランド品などの高額商品に多く見られる。一時はプレイステーション2がらみの詐欺が横行した。
 手口としては他人になりすまし架空口座へ代金を振り込ませるといったもの。捕まらないようにするにはそれなりの知識と技術を必要とするが、とりあえず相手に代金を振り込ませることだけならば非常に簡単にできてしまうので、高校生が遊ぶ金ほしさに数百万円の詐欺を働くなどと言うことは十分可能である。
 
A違法出品
 児童ポルノや薬物関連、偽ブランド品や架空口座など数多くの物がある。児童ポルノの件では先日逮捕者がでた。逮捕されるほど悪質ではないが、この手の出品は非常に多いため簡単に目にすることができる。
 
B名誉毀損等
 「私を買ってください」等のタイトルで実在の人物の個人情報を掲載しオークションへ出品。他には一人暮らしの女性から商品を落札し、個人情報を聞き出して電話をかけるなどの嫌がらせ行為をした例もある。
 
 私も実際に@の詐欺事件に関わったことがある。まだ合計取引件数は30件程度であるにもかかわらず詐欺臭い出品は多く見かける。事実警察庁(http://www.npa.go.jp/)の統計によるとネットワーク利用犯罪の検挙状況は、平成10年が116件、平成11年が247件、平成12年に至っては上半期だけですでに201件検挙されているので、このような犯罪は確実に増えてきているようだ。
 
 
2.警察の対応
 では実際に我々が被害にあってしまってどうすればいいかと考えたとき、やはり一番役に立ってくれそうなところと言えばこの警察ではないだろうか。そこで警察が果たしてどのような対策を行っているのか調べてみた。
 
 まずオークションを運営している企業へ出品者の身元確認の徹底、並びに違法出品物に対する管理体制の強化を要請したことが上げられる。これを受けてなのかどうかは分からないが、いくつかのオークションサイトでは登録の際にクレジットカードの番号を確認するシステムにしたため詐欺などのトラブルはほとんどなくなったようだ。
 
 しかしながら名実ともにおそらく国内最大であろうYAHOO!オークションでは未だに出品者の身元確認を行っていないも同然な状態にある。違法出品物のチェックは以前よりも改善されてはいるようだが数があまりにも多いためかまだまだ行き届いていない。現在もちょっと検索すれば簡単に違法な出品物を見つけることさえできる。
 
 他には警察自体がネットワーク犯罪へ対応するだけの技術と体制を身につけるという試みも行われているようだ。特に愛知県警(http://www.pref.aichi.jp/police/)のハイテク課は全国でもインターネット犯罪に対しての対応が進んでいることで知られていて、県警のホームページでもインターネット関連の犯罪手口などが丁寧に解説されているなど、非常に好感の持てる対応を行っていることが印象的である。iモード対応のページまであることには非常に驚かされた。ちなみに栃木県警のホームページも参照してみたが、残念ながらこちらはその手の情報のかけらすら掲載されていなかった。今後の対策強化に期待をしたいところだ。
 
 と、ここまでは表向きの対応策だがインターネットの掲示板等で実際に被害に遭われた方々の経験談を拝見すると必ずしも十分な対応を受けてはいないことがよく分かる。
 
 その原因としては警察のインターネット犯罪に対する対応力不足があるように思われる。たとえば被害届を出そうとしても担当者のインターネットオークションに対する知識が乏しく満足な対応をしてもらえない、被害額が少ないからと言って受け付けてもらえない、これは特に偽ブランド品に関する問題なのだが詐欺行為であったことを証明するのが難しい場合があるなど、実際被害にあってしまった人がいざ訴えようとしても少々問題が残るようだ。事実泣き寝入りを強いられてしまうケースも少なくない。
 
 だが警察も無能ではない。被害者が複数に上り被害金額も高額になるような事件の場合は多くの被害者から適切な情報提供があればたいていの場合は犯人を逮捕している。一番良いのは詐欺にあわないことだが、万が一巻き込まれてしまった場合は他の被害者がいればその人とも協力して積極的にこちらから警察へ働きかけることも必要なのかもしれない。
 
 
3.政府としての対応は・・・?
 森総理が沖縄サミットの頃からことあるごとに言っていたIT革命、果たし森総理はその意味を理解していっていたのかどうかは知らないがその一環として国民全員がインターネットを使えるようになるとか言うプランがあるそうだ。だが今のような状態で初心者のみなさんがインターネットへ入ってきてしまってはますます犯罪被害が増えるばかりではないだろうか。はたして森総理はそのことに気づいているのか?そのことを確かめるべく政府としての対応を調べてみることにした。
 
 ・・・が、残念ながら今回私が調べた限りでは目立った収穫となるような物ははっきり言ってなかった。あえて言えば今年(平成12年)から「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」( 不正アクセス禁止法)が施行されたことくらいだろうか。この法律は他人のIDやパスワードを入手しその人物になりすます行為や、一般にハッキングやクラッキングと言われる行為の禁止を定めた法律である。今回のテーマであるオークションとも全く関係がないとはいえないが、直接的に関わる物ではない。
 
 このような状況をふまえると政府としてはオークションの問題に関わらずインターネットを利用した新たな取引形態に関しても現行法の適用により対応できるとの考えなのだろう。確かに現行法の適用で多くの場合は対応可能なのだが、前述した警察庁の統計からも分かるようにネットワーク犯罪が増加してきている以上、警察の能力強化や民間企業への働きかけなどは必要となってくるだろう。
 
4.インターネット犯罪への提案
 これまでインターネットオークションにおける問題とその対策について調べてきたが、最後に私なりにこれらの問題に対する有効な対策1つの提案をしてみたい。
 
 その提案というのはやはり警察の機能強化であるが、オークションにとどまらずインターネットに関連する犯罪が今後増加していくことは明らかである以上、設備の整備や人材の育成などやらなければいけないことはいくらでもある。
 
 そのような機能強化の一環として私が是非とも実現してもらいたいと思う物がインターネットポリスの設置である。これは私が勝手に付けた名前であるが、簡単に説明すればインターネット専門の警察とでもいえるだろうか。
 
 たとえば現在オークションで詐欺の被害にあってしまった場合は最寄りの警察署に被害届を提出するシステムになっているが、必ずしもその担当者がインターネットという物を十分理解できているとは限らない。それにネットワーク上では場所という概念がないので被害者が全国に散らばるケースが多い。この場合1件単位の被害が小さいとどうしても警察の対応は鈍くなるし、その事件の全体像もつかみにくい。そもそもインターネット上の犯罪を最寄りの警察で対応するというのは明らかに限界があるのだ。
 
 そこでこのような事態を避けるためインターネット上に相談窓口、すなわちインターネットポリスを設置し全国に散らばる被害者からの訴えを一括して受け付け専門知識を有する担当者が捜査を行う。そうすれば事件の全体像も把握できるし速やかな対応も可能になる。何よりインターネットの犯罪はインターネットで処理できれば一番効率的ではないだろうか。利用者側もわざわざ何度も警察署に足を運ばなくてもよいし、小さな犯罪でも気軽に相談できるようになればインターネット上の治安維持にも大きく貢献するはずだ。
 
 だがこのようなシステムを実現させるには警察の仕組みそのものを変える必要がでてくるかもしれない。それ故にすぐに実現するというのはかなり難しいことなのだろうが、ここまで行かなくても警察はもっとインターネットを利用しても良いのではないかと思うし、今後はさらにその必要がでてくると思う。
 
 インターネットが次世代通信メディアとなるかどうかはまだまだ分からないが少なくともこれからしばらくは発展していくことであろう。確かにインターネットは簡単で便利である。しかし果たして安全と言い切れるかというと現時点での答えはNoだ。インターネットがこれからも発展し、次世代の通信メディアとしての地位を確立するには、ネットワークの治安を維持できるかどうかが大きなポイントとなるであろう。
 
 
 
参照したサイトのURL
○警察庁
http://www.npa.go.jp/
見た目は地味だが有用な統計資料がある。
○愛知県警
http://www.pref.aichi.jp/police/
日本でもっともインターネット対策が進んでいる警察であると評判である。
iモード対応ページも公開している。
○AUCTION110番
http://auction110.tripod.co.jp/index1.html
オークションに関する情報を扱うサイト。
詐欺の手口や被害に遭わないためのポイントが紹介されている。
○WEB110
http://www.web110.com/
オークションだけにとどまらずインターネット全般のトラブルを扱うサイト。
インターネット初心者は一度はここで勉強するといいだろう。