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市民団体と行政、双方の関わり方について〜まちづくり分科会〜

担当:清水 文香、田面木 千香

 

*前回レポートについて

前回レポートに登場した企業について、その概要

操業

1986年9月

資本金

1,000万円

従業員数

80名

主要製品

工業用精密プラスチック成形加工、金型設計・加工

 

Report 日本財団の助成活動】の記事:http://www5b.biglobe.ne.jp/~s_mso/6_01.htm

 

 

〇『雀宮下町自治会 ボランティア・クラブ』

 宇都宮市雀宮下町自治会の中には、定年後のお年寄りでつくるボランティア・クラブが存在する。このクラブの活動などについてクラブの会長である氏家さんと総務・調整の野田さんにお話しを伺った。

 

*ボランティア・クラブについて

→クラブ会長:氏家 仁、総務・調整:野田 文夫、(ほかに委員10名)

平成1291日より開始。

下町自治会員の老人世帯に対し、クラブ委員が奉仕活動を行う。

 

・奉仕内容

()広域・・・地域内の河川の清掃、地域内の公園整備、地域内にある危険地帯の伐採及び除草。

()個人・・・戸があかない、鍵がかからない、戸のガラスの破損、水道洩れ、電気器具・球の交換、床又は棚が落ちそうだ、地震の家具転倒防止をしたい、手押し車の壊れ、周囲の物件又は植木等が危険な状態になっている。などなど細かい事柄で、老人世帯で不便又は困っていて、修理および復旧を望む場合。

     降雪量が多く、老人世帯で外出に困難な場合の除雪。

 

・費用

材料費(実費)は当人負担とし、労務費は一切なし、請求も行わず謝礼も受けない。

 

・要請方法

要請はクラブ委員に直接連絡し相談。

 

・クラブ誕生のきっかけ

会長の氏家さんと総務・調整の野田さんが発起人になって、自治会内にいる特殊技能をもったお年寄り(昔、大工や電気屋をやっていた、というような人たち)を表へ出そう、というもの。それぞれの技能を生かし、町内にいる身体的に弱いお年寄りに奉仕することで生きがいを見出そう、というもの。

 

・クラブの広報活動について

 クラブができたときに回覧版によるお知らせを行った。(規約は班長の申し送り簿に)

 年1回の自治会の総会と毎月1回の老人会のときに活用の呼びかけを行う。

 

・活動実績

 @一人暮らしのお年寄りで、寝ていて戸を壊してしまったものを直した。

 A地域内の空き地にはえた伸び放題の草を刈った。

  *町内の、雑草が伸び放題のまま放置されている空き地の持ち主を探し、火災防止のためにも草を刈るように要請するがやらないので、ならば自分たちでやろうということで、クラブ委員のほかに近所の人も加わり、総勢20人ほどで1日かけ、ごみ袋3040個分もの草を刈った。 

B植木の剪定。庭の草刈。

 ;断ったもの・・・庭の地上げ。←専門業者じゃないとできないため。

 

・約1年間の活動を通して

 ある程度、お金がある人は“ボランティア”を頼みづらいようだ。

 このクラブを活用する人が少ないのは、自分の家に他人が上がりこむのを嫌がる人が

少なくないということがあるようだ。

 まだ実際に苦情を受けたことはないが、仕事に関してやり過ぎ、行き過ぎは専門業者を

圧迫することになるので問題。このバランスが難しい。

 

・今後・・・

 クラブの活動は今後も、自分たちのできる範囲で、特にペースを上げることもせず、や

やっていくつもり。

 

*自治会について

 雀宮下町自治会←およそ1000世帯という大きな自治会。

 

・自治会と行政との関わり

 自治会に行政から補助金というのは一切ない。すべて自治会費でまかなっている。

 自治会の仕事や主催の行事を行うことのほかに、行政側の広報を、回覧版を通して住民

に伝える、というつなぎの役割を果たしている。

 

→行く前は、「自治会の中の、また新たな組織、自助グループ?」という感じを抱いていたのだが、行ってお話しを伺ってみると、自治会の役員の方たちが中心となってはじめたちょっとした(“ちょっと”ではないかもしれないが)活動という印象を受けた。定年後、自分たちの生活の中で、何か地域のため、社会ためにできることはないか、というのがきっかけということが受け取れた。自治会としての活動も含め、こうした活動を通して近所づきあいを深めること、人とふれあうことが、それ自体のメリットだけでなく、地域の犯罪防止にもつながる、ということもおっしゃっていた。せっかくの機会なので“自治会”についても少し伺ってみた。お話しを聞いた感想としては、今の若い世代というのは、人に対して干渉したくないしされたくないという感じが強く、近所づきあいにしてもそれほど重視せず、というところがあり、地域密着型の“自治会”の存在は今後、必要とされていくのか?という疑問をもった。この問いかけに対し、ボランティア・クラブ会長の氏家さんは、前述したような、自治会の市に対しての役割、市にとっての自治会の必要性という面や、やはり地域における、これまで自治会が果たしてきた役割という面から見て、近い将来なくなってしまうことはないのでは、ということであった。しかし、この下町自治会の役員の方というのは、役員をすでに20年ほどやっているということであったので、世代交代が行われてきていないということがわかる。こうした状態で、いざ、私たちの親以降の世代などが定年後、地域の自治会を運営していこう、となるのか?という疑問を抱いた。

 

 

〇市民活動団体の実態

 市民活動団体の実態を知るのに、ちょうどよい資料があったので、以下、自分の感想も交えながら見ていこうと思う。

 平成12年度内閣府委託調査として(株)社会調査研究所が行い、その結果をまとめた『市民活動団体等基本調査 報告書』の調査結果の要約のなかで、いくつか気になった個所があったので取り上げてみたい。

 

◎市民団体等の法人格の取得状況と法人格の取得意向

*法人格の取得意向

・今後NPO法人格を取得する意向のある団体が挙げる最大の理由は、

「営利目的でないことを理解してもらえる」(27.4%)、

「対外的な信用度が高まるから」(19.0%

である。―――p6  3.1(3)

→南那須まちづくり研究センターの荻野さんのお話しにもあったが、“法人格”を与えられるということは“法的に人格を持っている”と認められたことになるので、これを市民活動団体が取得すれば、その団体の存在が社会的に一定の評価を得たものとみなされ、この調査結果にあるように、対外的な信用度が高まり、これによって活動レベルのいっそうの向上を図っていくことができるのであろう。

 

◎市民活動団体の活動状況

*活動形態

・「親睦・交流の場・機会の提供」が41.3%―――p6  3.2(2)

→以前、宇都宮市のサポートセンターの中里さんにお話しを伺ったときにもおっしゃっていたが、今の社会において、人との関係がどんどん希薄になってきていて、人と触れ合う機会が少なくなっているという状況が、このように活動形態に影響しながら、90年以降に活動を開始した団体が全体の42.0%を占めているということからも、現代社会においてこうした状況が懸念されていることがわかる。

 

*団体規約の有無

・団体の運営等について、明文化された規約(会則)を持つ団体は全体の61.5%

*役員の選出方法

・役員選出に関して、明文化されたルールのある団体は49.8%で、特にルールを持っていない団体も32.3%みられる。―――p7  3.2(6) (7)

→この、規約やルールといった類のしっかりとした“締め”のない団体が少なくないという結果から言えるのは、団体として、よく言えば柔軟性がある、悪く言ってしまうと何かあったときの対処にもめてしまうことが懸念されるように思う。

 

◎市民活動団体の事務局スタッフと会員

*事務局スタッフ規模と属性

・職業では「家事従業者(主婦業)」が48.5%、「年金生活者・定年退職者」が31.4%になる。―――p8  3.3(1)

→この結果から、やはり、ある程度時間的に余裕のある人がこうした活動に参加していることがわかるが、こうした人たちのせっかくのスキルを生かさない手はないだろう、という部分が重要な点であるように思う。

 

*会員制度と会員規模

・会員の募集方法は「くちコミ」が61.2%と最も多くなる。―――p8  3.3(2)

→このことから、知り合いや友人の誘いなどが活動に参加する大きなきっかけになる、ということが言えるだろう。そうであれば、今後、より多くの活動への参加者を募るには、こうした点に注目する必要があるだろう。                                                                      

 

◎市民活動団体の財政

*財政規模

・年間支出10万円未満の団体が32.9%1030万円未満が17.8%で、30万円未満の財政規模の小さい団体が半数となる。

・特定非営利活動法人では、年間100万円以上の団体が半数となる。―――p8  3.4(1)

→法人格を取得している、していないで財政規模にかなりの開きが見られる。

 

*収入内訳

・収入内訳構成比は、

会費の割合が最も高く34.3%になる。

次いで、行政からの補助金17.2%、

独自事業の収入10.3%などである。

財政規模の大きい団体ほど会費の割合は低くなり、独自の事業収入の割合が高くなる。―――p8  3.4(2)

→活動が営利目的ではないぶん、団体にとって資金確保は大きな問題であろう。特に財政規模の小さな団体ほど、この問題には頭を悩ませていることと思う。独自の事業収入を上げることも必要なことかもしれないが、団体の理念や活動に賛同する会員を増やし、より多くの会費を確保すること、また、行政からの補助金の制度やその活用をもっと考えていく必要もかなりあるように思われる。

 

*支出内訳

・支出内訳構成比は、事業費・活動経費が77.2%になる。

(人件費5.8%、事務局運営費5.4%、事務所維持費2.5%)―――p8  3.4(3)p74  5.2(1)

→人件費の割合が圧倒的に少ない!                       

 

◎情報公開

*地域社会へのPR手段・方法

・団体の活動をPRする手段や方法では、

「行政の行事に参加」する団体が36.8%

次いで「既存のメディアや広報紙に活動の様子を掲載」(22.5%)、

「独自の機関紙やニューズレターを発行」(23.4%)になる。―――p9  3.5(4)

→この結果には少し驚いた。なぜなら、市民活動団体の活動をアピールするような行政主催の行事の類は、私の感覚から言うと、あまり一般の人たちの間に浸透していないように思う。しかし、活動をPRする手段・方法の一番がそういった行事に参加することというのであれば、その行事の様子を探る必要があるだろう。

 

◎外部支援

*外部支援の利用状況

・行政や企業からの支援を団体の59.6%が利用している。

・市町村からの支援が最も多く(70.1%←注:支援者別に支援状況を見た場合)、2位は社会福祉協議会(36.0%←注)となっている。

・市町村から場所の提供、資金援助を受けている団体はそれぞれ6割である。

・社会福祉協議会の支援内容は、「資金援助」が最も多く67.3%である。

*支援に関する満足度

・外部支援の中でも「活動や情報交換の拠点となる場所の提供」の満足度は、「満足している」と「ほぼ満足している」を合わせて8割近く(78.0%)になる。

・「活動に対する資金援助」の満足度(55.9%)は、他の内容と比べて低くなる。

*行政支援の必要性

・行政支援について、76.7%の団体が必要としている。

*必要な行政支援の内容

・行政支援の内容について、

要望が多い順に「活動に対する資金援助」(69.7%)、

「活動や情報交換の拠点となる場所の確保・整備」(49.7%)、

「活動に必要な備品や器材の提供」(44.1%)、

「活動への理解と参加を促すための広報・普及活動」(39.7%)、

「活動メンバーの能力向上のための研修」(36.2%)などである。

―――p9,p10  3.6(1)(2)(3)(4)

→この調査結果からだけでは一概に言えないが、行政に依存している?という感じがしないわけでもない。まずは行政の、市民活動団体への、活動面、資金面からの支援状況を見てみる必要があるだろう。

 

 

〇『NPO法人 南那須まちづくり研究センター』住民参加のまちづくりとボランティアのためのよろず相談窓口〜

*荻野さんとのその後のメールでのやりとり

> *行政は市民活動団体(ボランティア団体、NPO団体なども含む)やその活動に対して
>  どれほど、またどのように関わっていくべきだと思いますか?
 
相手の独立性を尊重し、お互いに自立した関係を築くために、ある程度のルール
を決めるなどしてつきあうことが大切。なあなあの関係や、逆に、行政の下請け
や出先機関のような扱いはつつしむべき。ボランティア団体は自由な意志に基づ
くフリーな団体であり、行政のお手伝いではない。また、NPO(法人)も独立
した組織であり、行政ができないことを安く請け負うための機関ではない。勘違
いしないこと。行政の責任転嫁につかわないこと。
 
 
> *現在の市民団体があり方や活動面で抱える課題や問題というとなんだと思いますか?
> 
ずばり、資金
でも、最終的には倫理観。倫理観より名誉欲やらなんやらが強くなったとき、市
民団体はただの「趣味の会」になるのでは?
倫理観もそうだけど、やっぱ、使命感かな。使命感、倫理観を大事にするってこ
とでしょうか。
 
 
> *市民団体は行政と関わっていく上でどのようになっていかなくてはならないと思い
> ますか?
 
まだ現段階ではある程度、距離をもったほうがいいかなー。「協働」には、行政
も市民団体やNPOも成熟が必要。あと、ルールも。それらがまだ、確立してな
いし。今は過渡期かな。
市民団体もちゃんと責任もって自立し、行政に過度に頼らない。頼ったツケは必
ずくる(自戒も含めて)。