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まちづくり〜市民団体のあり方、行政との関わり方を考える〜 担当:清水 文香、田面木 千香
八日の市議会一般質問。市民協働[i]のまちづくりへ、地域分権の必要性を問われた福田富一市長は
「地域の意思形成や自主活動を推進する住民組織づくりに、積極的にかかわっていく」
との強い姿勢を示した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2001年3月27日(火曜日)下野新聞より抜粋
*福田市政のとりくみ[ii]
・ワークショップ方式などの手法の取り入れ
・清原、豊郷、国本の三地区でパイロット的な支援事業の展開
→住民自ら地域の課題を発見し解決する仕組みがどうあるべきかの模索。予算額120万円
・市民と共に進める第四次総合計画の基本計画見直し
→公募を主体とする60人規模の「市民会議」を立ち上げ、素案の段階から市民と市がアイディアを出し合い、計画を練り上げていく。
→「財政的にも、行政はこれ以上肥大化できない」(市民生活課)…現実
→「行政にできないことを市民が積極的に補う市民自治の確立」 …理想
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2001年3月27日(火曜日)下野新聞記事より要約
〇「うつのみやまちづくり会議」都市自治分科会に参加して
私たちは10月25日の木曜日、宇都宮市総合福祉センター9F会議室において行なわれた「うつのみやまちづくり会議」第一回の都市自治分科会に参加した。今回、この会議には、学識者の方を含む分科会のメンバー8名と市の職員の方など3名、そして私がこの会のメンバーではないので傍聴という形で参加した。
今回の分科会は初めてということで、会の進行方法やルールなどについてどのようにするかという話し合いからはじまった。「都市自治」とは?この分科会の果たすべき役割とは?ということを整理するため、とりあえずやってみようということで宇都宮大学教育学部助教授の陣内先生の指導のもと、KJ法[iii]を用いてそれぞれの関心事を出し合い、グルーピングを行った。グルーピングによってそれぞれタイトルがつけられたものを下に挙げる。
(田面木のメモであるので多少ニュアンスに差がでているものもあると思われる)
・マイノリティ(&こども)の(社会)参加
・広域への配慮
・住環境
・市民参加のルールづくり
・顔の見える住民
・行財政改革(構造改革や既存組織の改革による経費削減と業務の外注)
・協働
・(市民)活動の拠点づくり
・PR
・(自分のまちに対する)誇り
・積極市民(住民の意識改革)
これらについて次回の分科会から、課題の現状把握と共に具体的な話し合いが行われていく。
→このような会に積極的に参加されている方たちだけあって、メンバーの方たちが皆、日頃から“まちづくり”に対して積極的に考えられたり、活動されたりしているであろうことを、その個々の発言から強く感じた。問題点などが次々と挙げられ、言われてみればそうだよなぁ、といろいろ感心させられた。と同時に、自分の“まちづくり”というものに関する意識の低さと知識のなさ、自分がいかに日々のんのんと生活しているかということについても痛感させられた。このままではいけない、自分たちがやらなければならないという危機感のようなものも感じられた。
〇“まちづくり”についての考え
私たちは“まちづくり”に積極的に関わっている、いろいろな人に話を聞いてみようと思い、「うつのみやまちづくり会議」の都市自治分科会にも参加していた宇都宮大学教育学部助教授の陣内雄次先生と、特定非営利活動法人とちぎボランティアネットワーク[iv]の矢野正広さんにお話をうかがった。
陣内先生・・・
・経歴について
もともとは都市計画、建築の方面。教授になる前は民間のシンクタンク[v]にいた。教授になったきっかけとして自分の話を聞いてほしい、(←肩書きなど)というのがある。また、自分の教え子が先生になったとき、自分のところで学んだことを子供たちに教えてほしい。
小、中学校で来年から高校では再来年から、生徒が興味を持つものを授業でやる「総合学習」というのが始まるのだが、これに“まちづくり学習”を取り入れてはどうか、と提案している(12月2日には市内で、小中学生と教師を募り、まちづくりワークショップが開催される)。
・NPO[vi](法人)について
NPO=民間非営利組織。ここでの“非営利”の意味は、必要経費として職員の給料などは捻出されなければならないものの、資本の蓄積はしないという意味での“非営利”。
「特定非営利活動促進法」(平成10年12月1日から)が施行され、法で定められた条件を満たしたボランティア団体や民間非営利組織は法人格を取得できるようになった。法人となると税金の控除が受けられるといったメリットがあるのだが、この取得のハードルは高い。こうした背景には、利益目的などの悪質なNPOを規制するという面から、国としてはやむを得ないという状況がある。しかし、こうしたNPOは今後、淘汰されていくであろうし、そうでなくてはならない。
いくら“非営利”といっても福祉関係のNPOにはお金が流れてくる(確実に需要があるため)ため、福祉関係のNPOは非常に多い。これらの利点は、多品種少量生産で利益目的でないために細やかな対応、応対ができる点である。
行政は“公平性”をもっとも重視するが、民間は異なる。
そのNPOのミッション達成のために事業計画を立てるなど、組織の舵取りを行うのがNPOの理事の仕事。無報酬。組織が成長していくため、より良くなっていくために、理事は外部から呼んで来るなどして変えていったほうがよい。
ボランティアは基本的にいい加減で無責任。これに対しNPO法人は、精神的なアマチュアリズムを持つことは大事だが、法人格を与えられている分、社会的責任をしっかり果たさなければならない。
・“まちづくり”について
“まちづくり”を頑張っているところは、“よそ者”が強いところである。(地元の人達はその中でのいろいろなしがらみで、言いたくても言えない状況、活動したくても活動しづらい環境というものがあるが、よそからきた人にはそれがない。)こうした“よそ者”と地元の人が一緒になると強い。逆に、大都市のほうが何か活動しようと思ったとき、人と人との関係性が希薄なために活動しやすい状況がある。
改正前の都市計画法ではすべての決定権は中央政府であり、地方自治体は行政の出先機関でしかなく、“まちづくり”においても画一的におこなわれ、自治体独自の活動というものができなかった。このように行政主導で行われてきた、これまでの“まちづくり”が失敗してきた、ということで今、行政と市民が一緒になって“まちづくり”を進めていこう、ということが言われている。しかし、行政サイドには、このような、市民の声を取り入れようという動きに反対する人もいる。これは、法的なことなど何も知らずに、自分の利害だけを要求するような人がいるからだ。
“協働”という言葉が、近年よく耳にするようになったのは、阪神・淡路大震災以後のことで、このときのボランティアの活躍によりその必要性が認識されるようになったためである。この“協働”が実現されるためには、行政も私たち一人一人も意識を変えていかなければならない。
最近、政策提言の作り方と行政へのプレゼンテーションの仕方を県内の女性グループに指導を頼まれたのだが、こうした積極的な動きからも状況はかなり変わってきているものと思われる。
“まちづくり”の定義は自分が活動していく中で見つけていくもの。
矢野さん・・・
・特定非営利活動法人とちぎボランティアネットワーク(とちぎVネット)について
平成7年設立(特定非営利活動法人としては平成11年8月9日認証を受ける)。活動範囲は県域。ボランティアをしたいという意志をサポートする中間支援団体。ボランティアの情報収集と提供(斡旋)を行っている。職員として勤務しているのは自分を入れて2人(民間公務員)だけであとはボランティア。
非営利団体・・・必要なことをやる⇔企業・・・もうかることをやる
・行政との関わり
市はとちぎVネットがあるのに、なぜ宇都宮市民活動サポートセンターつくったのか。民間を圧迫しているのでは?
行政側の財政が厳しいから民間に委託・・・×→民間ができることだから民間でやる。例えば、生活保護など今すぐやらなければならないようなことは行政がやるべき。他は民間でできる。
・ボランティアについて
ボランティアとは公共のことについて自発的、主体的に行動すること。
ボランティアは都市の発想。田舎なんかではやって当たり前、個々の役割のようなもの。
例えば、介護保険制度。この制度自体はいいのだが、一度、制度ができてしまうと作ったときの気持ちを忘れてしまう。これが問題。行政、民間、住民、何においても言えることだが、“プロ性”がとてもこわい。自分達(の活動)を客観的に見ることができなくなってしまう。おかしくてもそれに気づけない。そしてこのおかしさに気づくのが“アマチュア”。
“気づく”というのは“自覚する”こと。この自覚がボランティアにつながるとその活動も伸びる。
【ボランティアできない三大理由】←これは“アリバイ”にすぎない
@時間がない A機会がない B情報がない
こうした言い訳をする人はボランティア=福祉というイメージしかないから。ボランティアには様々なものがありその形態にしてもいろいろある。
ボランティアに関心があって実際に活動している人は日本全体でも5%ぐらいなもの。しかし、その関心度には地域差がある(京都など)。
ボランティア団体には2つある。
@人からお金をもらってでもやるところ
A自分達のできる範囲でやるところ
@については活動を明確にすること、活動をアピールすること、活動を伸ばしていくこと
が必要である。Aについては結局あまりやる気がないのでは?と言えなくもないが、こうした団体・グループの活動はそれこそ小回りがきく。
ボランティアに順番なんて関係ない。やりたいと思ったことをやればいい。問題の類はいっぱいある。
・その他(“まちづくり”について、現代社会に対する思い・・・など)
“社会がよくなる”ということは人とのふれあいなど、決してお金だけのことではない。
自分達の町を意識すること(誇り、プライドをもつこと)
←客観的に見て共通のイメージをつくること(個人の中の社会性をどう育てるか)
によって、良い面、悪い面が見えてくる。良い面は伸ばし、悪い面は直していく。自分達の町に自覚的に関心を持って、一人一人の力を合わせればできることがあるのだ、という実感を生むこと。“やる気”の意識を育てていくこと。興味を持って主体的に参加できるような仕掛けづくりが大切。
日本は制度が整いすぎていて全部外注できるから“公共”を自覚できない。
行政の仕組みが変だ=市民が変だ・・・住民は自立していない。行政に依存している。
さらに、大企業に比べると社会貢献活動に消極的な中小企業サイドの話も聞きたいと思い、私の知り合いで中小企業の代表取締役の方に、企業の社会貢献活動に対する考え方など、メールを通してうかがった。(以下メールの全文)
企業の地域社会貢献についての考え述べます。
1.税金を納める事・・・これが大分部の会社の理想です。
2.雇用の場の提供・・・これも大事です。
3.地球環境改善に貢献する・・・ISO14000の考えです。
4.働いている人が、生きがいを感じ、その仕事で、喜ぶ人がいる会社。
今、会社のほとんどは、1.を社会貢献の1番にしてます。
税金で、国を作ってます。教育してます。其の他も
依って、税金を多く納める事が、地域に国に貢献します。
2.は、人を多く雇うことが地域社会に貢献している事になります。雇用の場の確保といわれてます。
近年、地球環境が問題になり3.の考えでISO14000[vii]を取得する会社が大企業〜
中小企業まで広がってきました。会社も地球の一員であるとの認識からです。
トヨタは、エコカーをこの考えで発表してきました。
クリーンエネルギーもこの考えから出てきてます。
私としては、その上に4番の考えが必要と考えます。
或る会社は、或る時間に限って、ボランテアで社会貢献目指してます。
わたしの場合は、ボランテアでなく、仕事そのもので生きがい感じ、
喜びが、感じられる会社にしたいと考えてます。
但し、地球上のおおくのひとは、食べ物を獲得することさえ困難な人が、多く
存在します。
自分の道を自由に開ける、歩める国にいる人は、本当に幸せです。
本人がそれを感じてないほど、平和であるからでしょう。それを獲得する
過程を学んで下さい。
地域住民との交流大変良いことです。
しかし、本当に仕事に没頭すれば、そんな時間とれないのが
通常です。ノーベル賞の野依教授も時間ないはず。音楽家、
芸術家、農家等、仕事に没頭している人に時間ないはず。
その姿が理想と思えるのですが、実際は、そのよう人、多くいません。
定時で帰れる人、ボランテアの時間とれる人は、大いに
行動したら良い。
寄付金いっぱい有ります。お祭り、赤十字等
寄付金の基準は、地域社会に限ってます。
それ以上は、税金で貢献すべきと考えます。
〇市民団体の課題
宇都宮市民活動サポートセンターに行くと、掲示板にたくさんのボランティア情報を見ることができる。と同時に、そうした活動を行う団体の活動に助成金をだします、というビラも多く見かけた。このような、市民活動やボランティア活動をする団体を応援する、という支援団体の多くが“財団”であった。そこでサポートセンターの資料でちょうど、日本財団の方のインタビュー記事を見つけたので以下に記す。
Report 日本財団の助成活動
市民団体にとって資金の確保は重要な課題の一つです。寄付金や行政の補助金と違った助成財団による助成金が今、大きな魅力となっています。今回はNPO活動支援に本格的に取り組み始めた日本財団のボランティア支援部青柳光昌さんに、助成の趣旨や目的を聞いてみました。
(Q 今後の課題については?)
今のNPOを見ていると、この方たちは個人のボランティアのままでいた方が良かったのではないかと思うことがあります。自分たちの活動を明確に伝えられないというようなところが、助成金の申し込みをしてくる。審査に行こうにも、代表と連絡すらとれないこともままあります。
現在のNPOには、情報公開や財務会計を積極的に活用するという意識が乏しすぎるのではないでしょうか。「ボランティアだから」「もうけのためにやっているわけではないから」というのは、通用しません。情報公開というと、年に一回所轄庁に報告書を出すだけだと思っているNPOが多いようですが、来年はNPO法が施行後三年を迎えます。ずさんな財務管理をしていたNPOの存在が税務調査によって表面化すれば、税制優遇なんてとんでもないなんて事態にだってなりかねません。
しかし、多くのNPOには社会を生き生きと変えてくれる力があると思っています。その力を助けるのが日本財団の使命だと考えています。いっしょに社会を変えていきましょう。
日本財団プロフィール
日本財団は、世界の平和と人類の明るい未来に向け、様々な角度から公益事業をサポートする助成財団です。1962年に財団法人日本船舶振興会として設立されましたが、時代の要請と共に、海洋船舶事業だけでなく、公益・福祉事業、ボランティア支援事業、海外協力援助事業など、幅広い公益活動に支援を行うようになりました。そこで1996年1月1日から、ニックネームとして日本財団を使用しています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・NPOネットワーク情報誌 パレット コミュニケーション 第6号
(2001年7月31日発行)より抜粋
[i] 「協働」について http://www.infoseek.co.jp/GTitles?qp=0&nh=10&arn=GN0101600090&qt=%B6%A8%C6%AF&col=GN&st=0
[ii] 宇都宮市ホームページより【市長の施政方針】 http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/gj/gyouseiframe.htm
[iv] 特定非営利活動法人とちぎボランティアネットワーク
[v] シンクタンクについて
[vi] 栃木県ホームページより【NPOって何?】
[vii]ISO14000についての用語解説(p19)http://www.env.go.jp/policy/kihon_keikaku/plan/yogo.pdf