郵政三事業民営化

 

 行革班は郵政三事業民営化を考えるにあたり問題の多さと複雑さからまとめて扱っては問題が整理しにくいと思い、三事業を分けて考えることにした。

 

 T、郵便問題

郵便事業民営化において問題となるのは主に2つある。一つは民営化した場合のユニバーサルサービスの問題であり、もう一つは民間の信書配達の問題である。郵便事業のユニバーサルサービスは郵便物を「全国どこでも、いつでも、公平に」提供することが目的である。葉書が全国一律50円で送れるのが一つの例だ。郵便事業が相互の資金補填によって成り立っていることを考えると、民営化した場合離島や過疎地域においても同様のサービスを求めるのは難しい。民営化による整理縮小を行なうとこのサービスが破綻する可能性も残る。

そこで電気、電話のサービスと同様に供給責任を負わせることが必要となってくる。供給責任とは生活に必要なものは利益追求の方向から外れても供給をし続ける責任のことである。この供給責任の見返りとして『地方の部分的独占』を合法的に許すことも必要だ。しかし消費者のデメリットとして地域間の料金格差が生まれる可能性がある。

もう一つの道は地方においては企業同士が共存することだ。具体的にいうと宅配便が輸送を受け持ち地方では郵便局が荷物を引き受けるという形にする。そうすると宅配業者は各家庭へ持っていくよりもコストダウンになり、郵便局は収入増を図れる。

 

図1-1       郵便局民営化後の経営モデル

 

郵便局

民間業者

地方

荷物の引き受け業務

代理店としての役割

地域拠点までの輸送

 

都市

現行業務の経営発展

無店舗販売事業、地域福祉サービス

地域総合状況センターなどの付加価値

業務の推進

競争によるさらなるせービスの向上

様々な業種との提携による受け入れ口の拡大(コンビニ、スーパー、クリーニング店など)

 

次に信書問題に触れたい。信書とは手紙や書状などを指す。法的には「差出人が特定の相手に意思や事実を伝えること」と定めている。

信書問題の根底は信書は民間が扱ってはいけないという郵便法の是非にある。

参考 クレジット問題

2年前郵便局の聖域とされていたクレジットカードの宅配をヤマトが開始し、大きな波紋を呼んだ。鹿児島市内のある商店街が発行するカードが更新期に他人の手に渡り悪用されるという事故がきっかけになり、ユーザーである商店サイドが発送方法を郵便からヤマトに切り替えた。明治時代に制定された郵便法にはクレジットカードの明確な表記がなく、カードが信書か否かという点が郵便局側とヤマトとの議論の焦点になっている。

それぞれの言い分

郵便局側・・・個人を対象として受け取る人しか使えない文字や数字を送ることは郵便法5条でいう「信書の配達」にあたる。

ヤマト・・・カードは信書ではない。カードはあくまで物品購入のための『ツール』に過ぎない。

 

U、郵便貯金問題

 郵便貯金の問題は(郵貯問題)は郵便局と民間金融で不公平であること、郵貯で集めた資金が市場に出回らないという2点である。

 郵便局と民間の間にある不公平として次のようなものがある。

表1-2               郵便局の特典

 

内容

税金面

法人税、住民税、印紙税、事業税、固定資産税等の免除

信用面

国営というブランド、預金などの保険料免除、運用リスクなし

 

税金面の特典は国からの補助金とも言われている。その効果が一番現れているのは郵便局の主力商品である定額郵便貯金である。定額郵便貯金の特徴は市場よりも高い金利と半年複利、そして半年経てば利率は自由に変えられることだ。しかも書き換えなければ利率はそのまま継続されるので高いときに設定すればそのまま続けることができる。「この商品を民間で売り出すには難しい」「郵便局だから扱える」と民間銀行でも郵便局でも同じように言っていた。

信用面について銀行側は運用リスクが少ないことを挙げている。20014月から郵便貯金資金は郵政事業庁によって全額自主運用が開始された。それまでは郵貯資金は大蔵省の資金運用部に運用を一任していたので、自主運用になれば問題は解決されたようにも思える。しかし公社化では自主運用されても安全性の高い国債や財投債に流れてしまうことは避けられない。しかも郵政事業庁は運用に関して経験が浅いためその投資能力に不安がある。また郵政事業庁は特殊な金融機関のため金融監督庁の管轄から離れる。民間銀行では「銀行にとって資金の運用は難しい。資金運用のための人材を育てるのには大変な労力と時間がかかる」といい、郵便局も民営化したあと苦労があるのではないかといっていた。

 

2、銀行側の主張と郵便局側の主張

全国銀行協会が平成1211月に各銀行に示した案内書によると、郵便局の公社化にあたって施策が述べられている。まとめると次のような内容である。

1、便貯金事業の目的が「簡易で確実な少額貯蓄手段の提供」であることを明確にする。

2、受け入れ限度額を1000万円から300万円程度まで引き下げること(国民の平均預貯金残高が299万円のため)

3、法人税や預金保険を払うこと

4、金融監督庁による経営状況のチェックを入れること。資金管理責任を明確にすること。

5、運用リスクを子会社も含めて情報公開すること

6、郵便局の機能から郵便貯金を独立運営させること

郵便局側の主張は「郵便貯金2001」総務省郵政企画管理局発行の冊子から抜いてみた。

1、少子化・高齢化が進む中で自らの生活を高めようとして貯蓄を大切にする社会システムは不可欠である。

図1-1  各金融機関の預貯金総額に占める個人貯金の割合

 

銀行などの値は平成12年度末、郵貯は134

資料:日本銀行「金融経済統計月報」と総務庁調査                     

2、職員の知識向上、ATM機能の向上をはかる。

3、リスク管理について金融コンサルテイング会社のアドバイスを受ける。外資系会計事務所による外部評価を実施。

 

銀行に話を聞きに言って感じたことは郵貯民営化は銀行側にとってあまり現実的な話ではないのかなということだった。郵便局のATMとの提携も今後入金ができるようにするなど機能を増やしていく予定のようだ。