行政学演習Aレポート

商店街の活性化と行政

国際学部国際社会学科980138H松浦 愛

目次

1・はじめに

2・北上市の概況

3・中心商店街

4・北上都心開発公社

6・終わりに

 

1・はじめに

私がこの商店街の活性化に関心を持ったのは岩手が過疎化している街であると言われ続けていることからであった。最近、岩手のある商店街は、活気がなくもの寂しい雰囲気に包まれているという状況が今日見られるようになってきている、。岩手は他県に比べて大型店があまり進出していないが、それでもデパートが経営不信から撤退した話も出てくるようになってきた。地元のテレビでもデパートの進出や商店街については何年か前から取り上げていて、私はまだ詳しく何のことかはわからなかったにせよ、長い間強い関心を持っていた。人気のデパートが進出することを望む人ももちろんいる。しかしその一方で昔から商売を営んできた人には自分の生活にかかわる大きな転換点になると考えている人もいるし、またそう考えてもおかしくはない。だからこそ反対運動や署名運動などが起こるのであろう。実際に商店街は今、後継者難や中心市街地の空洞化によって深刻な問題を抱えている。何らかの変化がなければこのままほとんど商店街は衰退の一途をたどるだけになってしまうだろう。このような点に関心をもち、行政とのかかわりからこの問題を考えていこうと思った。その中で私は、岩手でも中核都市をなしている盛岡と北上について強い関心を持っているので、今回は最近大型店が商店街に進出した北上市を取り上げてこの問題を見てみようと思っている。

 

2・北上市の概況

(1)北上市の概要

  北上市は平成3年4月1日に旧・北上市、旧・和賀町、旧・江釣子村の合併によって誕生した人口90,213人・面積437,55平方キロメートルの市である。北上市の人口は、市全体としては増加傾向にあり、昭和55年から平成7年までの15年間で14.8%と高い増加率を示している。岩手県の人口の約6・3%を占めている。近年は一貫して増加の傾向にあり、増加率についても非常に高い水準にある。また年齢別人口構成比としては他市町村に比べて若年層の人口が多いといえる。

  人口は県内第2位、また工業製造品出荷額・農業粗生産額が県内第1位を誇る市である。また、平成9年には東北横断自動車道秋田線の開通により、北上JC・北上西IC・北上・金ヶ崎ICが増設されたことによって南北方向および秋田方面へのアクセスが非常に至便で、交通の要綱になっている。平成11年には全国高等学校総合体育大会(‘99岩手総体)のメイン会場地になるなど岩手の副都心的存在となりつつある。


(2)市街地の動向

「ヒト」の状況から商店街を見てみることにする。中心市街地の周辺に位置する地域を人口増加率でみてみると10%〜30%と比較的高い数値で表される。これは国道4号、国道107号沿線を中心に郊外開発が進み、住宅地が拡大したことに起因している。一方、中心市街地であり商店街地区である本通り、諏訪町、新穀町、青柳町、芳町では著しい減少を見せており、空洞化の進行がうかがえる。

    

地区名

人口(人)

減少率(%)

平成2年

平成7年

本通り

1,408

1,394

1

新穀町

913

841

7.9

芳町

198

179

9.6

青柳町

559

454

18.8

諏訪町

517

465

10.1

*これは主な商店街ある地域についてまとめたものであって他の地区では0・5%から18・8%の間で減少傾向がうかがえる。

 

(3)商店街の状況

北上市には18の商店街があり、本レポートで対象としているところは北上市十字路商店街振興組合連合会というところである。これは4つの商店街(本通り商店街振興組合、諏訪町商店街振興組合、新穀町商店街振興組合、本通り一丁目商店街振興組合)からなっている。なお、中心市街地およびその周辺には、5つの振興組合と4つの任意商店街が分布している。

本通りは商店街が集中する通称「十字路商店街」の1つで、藩制時代は奥州街道の宿場町だった。商店街の空洞化は、市勢が伸びても進んだ。十字路商店街幹部によると、人通りは最盛期より8割減。「江釣子がにぎわい、在と郷が入れ替わってしまった」と嘆く。十字路商店街は、全部にアーケードを架けたりしてきたが客の減少は止まらず、売り上げは最盛期の1975年(昭和50年)ごろの半分以下である。客層としては市役所や病院帰りの年寄りである店が多い。

3・中心商店街

この計画において中心市街地と定める地区は計画案より「市街地の整備改善および商業活性化を図る中心市街地は、黒沢尻地区内の北上駅前および十字路商店街を中心とした地区」である。決定理由としては、

まず第一に、主たる都市機能として、駅、病院、高等学校、官公庁等の公共・公益施設を有する地区、

第二に、商業活性化の観点から、主に都市計画法の用途が商業地域、近郊商業地域となっている地区、

第三に、区域の境界線として、道路、鉄道、河川などで区分できる地域

があげられる。

北上市が提示する商店街のあり方は「中心市街地の整備改善及び商業活性化の基本的方針」より岩手中部広域市町村圏と胆江地域で構成する岩手中部生活圏の中核都市の拠点でありまた、北上市の都心としての存在であり、さらには地区住民の利便施設ゾーンである。

中心市街地の問題点と課題として現時点で挙げられるのは

a・アクセス条件の悪化

b・夜間人口の減少

c・都市機能の低下

d・商業活動の停滞

4つであり、さらに課題としては以下の5つが挙げられるだろう。

a・中心市街地の都市機能、中心機能を高める。

b・中心市街地の都市機能を高め、交流人口を高める。

c・定住人口を高めて、賑わい性を高める。

d・商業機能の魅力を高めて地域住民のニーズに対応する

e・広域都心にふさわしいアメニティ―性を確保する。

中心市街地における機能構成をみてみると、北上市の中心市街地は、現状はやや弱体ながらも『中心商業』『駅前商業』『夜型商業』の各ゾーンで構成されている。

 将来においては、核店舗の進出による広域拠点の形成とあわせて利便型商業機能含む幅広いを『中心商業』機能を高めるとともに『駅前商業』ゾーン『夜型商業』ゾーンの役割分担および連帯を強化する。

 また『公共公益』ゾーン、『業務サービス』ゾーンとの有機的一体化を図り、中心市街地としての複合機能を高めていく。

北上市の中心市街地の街づくりのテーマを考えていくと、北上市の中心市街地には、周辺の4市4町村の中心的役割を担いながら、技術、活力とともにさまざまなものが交流する拠点であり地域の発展をリードし波及させる拠点都市としてのイメージが抽出される。

 これらのうち特に「集い、ふれあい、賑わい」の創出を促進するため北上市中心市街地の街づくりのテーマを北上市では「夢広がる交流の都市づくり」と定めている。

これは主にこれら世代間、伝統・先進、構造物・自然環境、住民・来街者、商品・生活文化間での交流という5項目において交流が推進されることを前提としている。

中心市街地の骨格としてきた上市が提示しているのはまず、3つの回遊軸である。これは、道路アクセスのいっそうの向上を図るとともに、自転車や歩行者の回遊を容易にするための歩道環境整備や景観の向上、街中のアメニティの確保を図るため、次の3つの回遊軸を設定し、拠点開発の整備とあわせて、商業核相互の有機的結節に努めることによる。

北上停車場線---駅前シンボルとして位置付けている幹線街路

北上駅鍛冶町線---3つの商業核を直接結ぶ幹線道路

飯豊相去線---ほかの2本の交通軸と交差し、核商業核と都市内外を結ぶ幹線街路

また北上市では3つの商業核として以下の3地区を挙げている。

<十字路地区、本通り・新穀町地区>

広域的な複合拠点と位置付け35万人商圏の中核都市として付加価値の高い商業・サービス業で構成するものとする。また、主に若者向けの交流ステージととらえ時間消費、先端情報発信型の都市空間の創出を図ることとする。

<諏訪町地区>

本通り・新穀町地区と接していることから、これと連帯した商業集積を図るとともに、地場の産業や特産物を活かし、匠の枝に触れられ、ふるさとの息吹が感じられる商業空間の形成を検討する。

 また夜間ゾーン(飲食店街)に接していることから、地場の食材や産品を活用した食文化の発信拠点とする。

<北上駅前地区>

 通勤・通学客など駅やバスの利用者に対する利便機能に加え地域居住者の生活商業拠点の機能を担うとともに、ホテル等のコンベンション機能の集積を生かし、来街者との交流を視野に入れ、北上市の玄関口のふさわしい商業核と快適な交通空間の整備を図る。

これらをふまえて「市街地の整備改善のための事業」があるがこれは先に提示したテーマに基づいて12種類の開発・整備事業が計画・施行されている。

この中で商店街に大きなインパクトを与えるであろう大型店としてビブレがかかわってくるのは「本通り・新穀町地区市街地再開発事業」である。事業主体は本通り・新穀町地区市街地再開発組合であり、この事業は現在実施中である。事業目的は地区の土地利用の高度化及び都市機能の集積を進めるとともに本通り、新穀町の商業機能の向上を図り、地区の活性化を促進する。地区面積は2.3haであり施設内容としては百貨店、専門店、多目的ホール等である。ちなみに北上市ではこの地区の商業施設は情報発信力のある若者の交流ステージとして位置付け、ファッション性の高い施設と位置付けている。では次の章でこの核になっているビブレについてみていこうと思う。

4・北上都心開発公社

この北上都心開発公社というのは、市民の間には広くビブレという名前で親しまれているが、この一連の事業を進める上でできた第3セクターである。ビブレの進出は先に述べている「北上都市計画本通地区第一種市街地再開発事業」の一貫として行われたものである。郊外の広い土地に大型店が単独進出したものとは違い、旧来の商店街に共同ビルを建設し、これまでの商店は地権者として入居する等の手法が取られており、都心部中心商店街の再生の試金石とされてる。 この大型店の核店舗は、マイカルグループのダックビブレが北上ビブレを出店、7館ある複合映画館ワーナー・マイカル・シネマズ北上、会員制スポーツクラブのピープルエグザス北上も入居している。 専門店は、地元商店を中心に20店以上も出店しており、集客吸引力のある大型店のメリット活かし、 個性的な店作り、お客様に喜ばれる商品の選択、サービスも要求されており、共存共栄を目指すこととなっている。土日のお客様はかなりの数にのぼり、とくに日曜日は、駐車場の満車ランプが消えることがなく、館内のフードコート、飲食街に入りきれなかったお客様が近隣の商店街に足を運ぶほどの活況を呈している。

会社概要

<会社名> 北上都心開発株式会社

<設立年月日>平成12年4月20日

<施設規模>

敷地面積  17450m

建設延面積  86,700m

建築期間  平成11年3月〜平成12年2月

開店年月  平成12年3月

事業費    約160億円

1,479台の市営駐車場を確保している。

事業経過の概要は以下のとおりである。

平成3年10月  十字路商店街振興組合連合会から北上市に対し商店街整備計画策定の要望書提出

平成4年10月  北上市特定商業集積整備基本計画を策定

平成5年2月  北上市中部地方拠点都市地域指定 

平成5年11月  再開発協議会設立

平成5年10月  再開発準備組合設立

平成7年3月  事業計画作成

平成9年10月  核店舗(ダックビブレ)出店表明 

平成10年3月  北上都市計画審議会

平成10年4月  大店法第5条届出・事業協力者決定

平成10年6月  岩手県都市計画地方計画審議会決定

平成10年7月  本組合設立認可申請

平成10年9月  本組合設立および事業計画認可

平成10年11月 権利変換計画認可 

平成11年1月  既存建築物等除去工事着手

平成11年3月  施設建築物新築工事着工

平成12年2月  施設建築物新築工事竣工

平成12年3月  施設建築物オープン予定

<商圏>
 1997年(平成9年)10月、北上市本通り・新穀町地区再開発準備組合(現再開発組合)とダックシティ(現ダックビブレ)は、東北通産局に大店法の三条申請(建物設置届け)を提出。北上を中心に水沢市、石鳥谷町など半径30キロ以内の11市町村34万人を商圏と見込んだ。 北上市が92年に作った特定商業集積整備基本構想は十字路商店街を、35万人の広域都市圏の中心・北上の都心として整備する方針であった。

商店街の置ける大型店の存在

ビブレの進出によってその周辺地域はどのように変わったのだろうか。ある日の様子をここに紹介してみる。諏訪町のアーケードを抜け周りを見渡してもほとんど人通りがなく、あまり変化が感じられないまま店の中にはいると様相は一変して、まるで、ビルが人を飲み込んでいるかのように、デパートの中には驚くほど多くの買物客、見学者がいるのである。1階の食料品、フードコートは、昼時で大入りだが、階を昇るほど人が増えてくる。とくに4階には、雑貨、ゲーム等があり、春休みも手伝って若者で超満員の状態であり、5階には、話題のシネマもあり、まさしくシャワー効果で上から下へと客が流れている。土日は、高速道を利用してのお客が増えるということで、まさしく巨大商業集積を持つ都市が人を吸引する都市間競争が激化していることが伺われる。人はほとんどがこのビブレの中にとどまってしまいほとんど商店街に行っていないのが現状である。しかしこのような悲観的な状況だけでなく、明らかに好調になっているのではないかと思われる変化もある。それはこのビブレが進出したことによって、このビブレの前にある商店街の空店舗物件を探す小売商業者も多く、盛岡等の他都市からの進出もあるからだ。まだこれについては詳しい数値はわかっていないがどのような変化が見られるかというのは今後調べていく価値があるかもしれない。 また、車の混雑を避け、一関方面から電車での来店客が増加したこともあり、駅からの通過点となるピア諏訪町のアーケード街も今後、変化が現れると考えられている。更には、この大型店には地下売場がなく、食料品は東館で「ビブレ」、西館では「たしまやフード」がともに1階に入居しており、毎日の買物に忙しい主婦にとって便利な構造になっている。この食品売り場に来店した客が向かいの本通り、新穀町の商店に回遊し始めており、このお客様と商店主がビブレの商品との違いなどについての情報交換もしているようであるとのことだ。東館の店舗フロアーは、長方形に設計されており、専門店を縦に配列する形式は、仙台のザ・モール仙台長町に似ているが、しかしフロアー歩道をはさんだ反対側にも地元の専門店が配置されるなど、第三セクターとしての店舗コンセプトが感じられる。
  あらゆる年齢層の人々をお客様として集客する店舗構成は、5階がシネマズ北上で、7館同時に1,317人が映画を楽しむことができる。4階には、400坪のゲームコーナーがあり、県内初登場の本屋兼雑貨店のヴィレッジバンガードや他6店の雑貨専門店がそれぞれ個性的な商品を並べ競い合っている。同じ4階の飲食街には家族団欒を楽しむ家族連れを招き入れ、2階には便利なリフォーム専門店が存在し、2つの100円ショップがボリューム陳列で訴え、2か所ある子供の遊び場は母親をほっとさせている。ハートビル法の認定を受けたこのビルは、身障者、高齢者に対する配慮もコンセプトの一つで、今後の商業集積の方向を示しているとともに、北上市の商圏地図を塗り替えるのではないかと注目を集めている。

 これはツインモールプラザを好意的に見た見方ではあり、この事業はうまくいっているという確かな手ごたえが感じられる。第三セクターとしての大きな特徴もありいい方向で進んでいるのではないだろうか。建築上の特徴もあり実際若者や他地域からのうけはかなりいいらしい。その一方でこのツインモールプラザの存在やあり方について問題を投げかけている人もいるのは事実である。

この開発をめぐってある裁判が起きている。裁判とは、西郊外、江釣子の大型店・江釣子ショッピングセンター(SC)と周辺住民3人が1996年12月、高橋盛吉元市長を相手に市費7500万円の支出差し止めを求める訴えを盛岡地裁に起こしたもので、理由はこうだ。
 −再開発で市が、商業ビルを管理する第三セクターに出資するのは、特定企業への不合理な優遇になる。第三セクター(資本金3億円)への市の出資は昨年秋の市議会で議決され、市の出資差し止めの勧告を求める住民監査請求の動きがでた。請求の申し立ては棄却されたため、今回の裁判となった。
川徳誘致のときは手順を踏み説明も十分だったのに、ビブレは説明なし。納得できないとして原告の1人は理詰めに説く。再開発に反対ではないが、ビルは私企業の営利目的。なぜ税金を使うのかと首をかしげる。市が37億円で駐車場を買い、ビルの保留床を三セクが買う計画にも結果的に組合が事業費を負わないのと同じ。行政丸抱えと厳しい指摘をしている。
 十字路商店街は、アーケードを整え、勉強会を開き、努力はしてきた。切り札の再開発は1991年、市に陳情して、のろしを上げた。まず、盛岡市のしにせ百貨店「川徳」が出店を表明。一昨年夏、川徳は「経営環境の変化」から出店をやめ、1カ月後にビブレが急浮上した。
  裁判の行方を見守る再開発肯定派は言う。「非公式にビブレ側と一昨年1月から接触していた。(川徳がだめという)万一に備えるのは当然」「市外からの集客もでき、街全体の活性化の起爆剤になる」と話し、江釣子を意識する。駐車場を設け歩道を広げる、アーケードを架け街灯に凝る、ビルを建設と、中心市街地活性化の事業は多彩。各地でさまざまな試みがなされてきたが、にぎわいが復活した例はあまり聞かない。


 原告側の中心人物が経営する江釣子SCは、江釣子村(91年に北上市と合併)当時の地元小売業者が出資し協同組合をつくった。借金して約30億円余のビルを建て、81年(昭和56年)核のジャスコ、専門店40で始めたものであり、行政をあてにしないで開業にこぎつけた。さらに、専門店を70に増やすなどして農村部に人を呼び込んだ。彼らは地元の立役者として中心商店街から一目置かれている。だからこそ十字路商店街に触れると、江釣子と比べ甘えていると思うのであろう。再開発をめぐっては、西郊外、江釣子の大型店などから第三セクターへの出資で、市費の支出差し止めを求める訴えが起こされた。

 これに対して、この事業に好意的な人の間では、試算はしていないが、600人程度の雇用が生まれ、工業団地の企業誘致も有利になるという人もいる。江釣子の大型店から、「行政丸抱え」と批判されようと、市の後押しを心強く思っている。本通りの商業者は被告ではないが、「再開発を妨げるのか」「客を奪われるのを恐れている」と心中穏やかではない。市の姿勢は、高橋盛吉元市長が「地盤沈下している中心市街地の再開発は、市の計画などに位置づけられている。三セク出資は当然」と言うように、はっきりしている。

この事業をどう見ているかの意見を参考にすると、本通り・新穀町地区再開発組合の重役によれば、核店舗は量販店ではない。既存商店街と共存共栄でき、波及効果が望める、ということである。 再開発区域約2.3ヘクタールの対象店舗は25店。本通り、同1丁目、諏訪町、新穀町の4つを合わせた十字路商店街の約200店と比べれば、少数派にすぎない。大多数の区域外の人々は、やっかみなどとは関係ないものの、置き去りにされる不安が消えない。
 本通り隣、諏訪町の男性店主は、今度も、かつて諏訪町や駅前に誘致した大型店と同じ結果になる。にぎわうのは大型店だけで商店街の生き残り戦争に変わりない、と訴えている。
 

この事業に関してもうひとつ注目すべきこととして署名活動が挙げられる。北上市の市庁舎の地下書庫に、2種類の書類。本通りの再開発事業で推進派、見直し派それぞれが署名を集め、昨年春までに市に出した要望書だ。推進派は、再開発に関係のある十字路商店街振興組合連合会で、「市発展のため早期実現を」と要望。見直し派は会社員、農業者ら17人が呼びかけて結成した「正しい税の使い方を考える会」。「駐車場買い取り計画を見直し、第三セクター会社を設立しない」などと訴えた。
 再開発は国、岩手県、市が計約64億円を補助するほか、市は駐車場を約37億円で買う。両派は「街を良くしたい」という点では一致しても、見直し派は巨額の税金を使うことに納得しない。三セクへの市費の支出差し止めを求め、江釣子ショッピングセンターとともに裁判を起こした人もいる。署名集めは先に推進派が始めた。市の説明会で、住民が「きちんと経過を説明してほしい」と不満をぶつけたり、見直し派が、税金を投入しないよう市議会に陳情するなどしたからだった。
 推進派は行政の後押しを受けていたこともあり署名集めにはあまり積極的ではなかった。住民や見直し派の動きを見ているうち、幹部らに「一方的な主張に、市民が傾いてしまう」との懸念が広がり、署名に踏み切った。
 必死に取り組んだ。商店街の各店に要望書の用紙を置き、連合系の労組に働きかけた。昨年の春先、見直し派の「考える会」が署名集めを開始、手分けをして一軒一軒回る戦術で対抗してきた。推進派もさまざまな言われ方をしたが、結果は2万2774人分を集め、目標の1万人を上回った。見直し派の1万2973人分と比べ、数字上は圧勝した。しかし、手放しでは喜べないのが現状である。
 推進派の署名に応じた市郊外に住む女性有識者は、税金を無駄にしないためにも、市民が協力して盛り上げなければならない、と理解を示すと同時に、何より商店街の人々が意識改革をして、消費者の要求にこたえてほしい注文をつける。
  見直し派も強気で、いい点ばかりを強調し、税金の使い方の説明がない。市民につけを回しては困るとし、市は市民が判断できる情報を公開しておらず、街づくりとは言えないと、情報公開の「不透明さ」を突く。
 署名総数約3万5700人。市人口の4割近い数字に市長は「集めた努力に敬意を表する。声なき声にも耳を傾けながら街づくりを進める」と述べる。
 再開発の計画は市と、事業主体の本通り・新穀町地区市街地再開発組合が、都市計画の専門家らと練ってきた。「再開発ビルには百貨店や映画館を備え、市民の要望にこたえた」と市民密着型の計画を強調する。
 実際の駐車場の問題は他の市民の間でも疑問に持つ人が多いということである。ツインモールプラザは広い駐車場を有しているがそれを行政側が一手に引き受けたとしたら、江釣子に既存のデパートが納得いかず裁判を起こすのも仕方ないのではないだろうか。行政というのはいつも情報公開に対して消極的な態度をとる。それがさらに行政不信を招いているのではないだろうか。今回のこの事業には建設省の後押しもある。なおさら地域住民の納得いくような方法でこの事業を進めていかなければならないのではないだろうか。

 

5・終わりに

レポートとしてこのことについていざ調べようとなったとき私は正直言ってどこから手をつけていいかがまったく分からなかった。自分の興味のある事柄と得られる情報がまったく違ってきたからである。自分の興味のあることについての情報は少なくホームページで探し出せたのもつい最近のことである。私はこれをどうしてもレポートとしてまとめたいと思い実行した結果、内容の薄いレポートにしてしまったような気がする。それがやや心残りである。

 北上市はテクノポリスとして全国にも有名な都市である。岩手県は最近商店街だけでなく全体的に閑散とした町並みになってしまっているが、北上はこのような状況をいち早く打開できるのではないだろうか。駅前地区に昔からあったイトーヨーカドーは経営不振によって撤退してしまったが、その跡地には今ニーズの高い100円ショップが入っている。駅から眺める景観はだいぶ変わってきている。しかも駅前にはほとんど人の気配がなくなってきている。これがすべてツインモールプラザに向いているかどうかは不明だが、確実にツインモールプラザは街の顔としての存在になっている。北上から離れたところにすんでいる人からもこのツインモールプラザは人気のデパートである。これからどのように変わっていくかまたさらには北上の発展にこれからも注目していこうと思っている。