国民体育大会について
国際学部国際社会学科3年 980106M 遠藤 東太
1.
動機
2.
国体の内容
3.
国体の問題点
4. これからの国体
1.
動機
高校時代にちょうど国体が地元開催であったという機会に恵まれて地元福島の、福島国体に開会式と閉会式の役員として参加することができた。そこで今まであまり興味のなかった国体というものにじかに接することができた。そこで国体を開催するということがどれだけ手間のかかることであるかを知ることができた。また国体をめぐる様々ないざこざを実際、現場で実体験することがあったことから多少ではあるが国体の裏舞台を垣間見ることができた。そこで国体というのものが傍目から見た華やかさとは裏腹にその陰ではさまざまな問題があるということを知った。そこで国体の現状、そして国体をめぐる様々な問題、国体開催県の悩みといった国体が引き起こす問題に興味を持ちこのテーマを調べていきたいと思った。
2.
国体の内容
国民体育大会とは
国民体育大会とは、「広く国民の間にスポーツを普及し、アマチュアリズムとスポーツ精神を高揚して国民の健康増進と体力の向上を図り、併せて地方スポーツの振興と地方文化の発展に寄与するとともに、国民生活を明るく豊かに」(国民体育大会開催基準要項より)するために、都道府県持ち回りで毎年開催されます。
大会は冬季、夏季、秋季の各季別に分けて開催され、主催者は、財団法人日本体育協(日体協)、文部省及び開催地都道府県ですが、各競技会については、日体協加盟の各競技団体及び会場地市町村が加わります。
[国体の歴史]
国体は昭和21年に、戦後の荒廃した世の中でスポーツを復興させ、青少年に希望と喜びを与えるとともに、人々に活気を取り戻してもらおうと、戦災まぬがれた京阪神地方で第1回大会が開催されたのがはじまりです。この第1回大会から起算し暦年を基準として回数を重ねていき、昭和62年に沖縄で開催された第42回大会で一巡しています。第43回の京都大会からは2巡目開催となります。
http://www6.shizuokanet.ne.jp/nomura/kokutai.htmlより抜粋
[国体の概要]
○開催県について
夏季大会と秋季大会は、原則として同一都道府県内で開催することとしますが、複数の都道府県が一致して開催を希望した場合は2つ以上の都道府県において開催すことができます。
○参加資格について
日本国籍を有する者(ただし、学校教育法第1条に定める大学、高等学校及び中学校に在籍する学生及び生徒は、大学の留学生を除き、日本国籍を有しないものでも成年又は少年の種別に参加できる。)で、参加都道府県の各競技団体及び体育協会が選抜された者が参加できます。
○実施競技について
実施競技は、正式競技(日体協加盟競技団体の競技のうち、原則として40都道府県以上で実施されているもの)及び公開競技(スポーツ芸術、高等学校野球及び開催地都道府県が希望する競技)の2種類で、正式競技は都道府県対抗として行います。
また、開催地都道府県から希望がある場合は、当該都道府県の範囲内において、デモンストレーションとしてのスポーツ行事(デモスポ行事)を加えることができます。
○種別について
各競技の実施種別は、成年男子1部、成年男子2部、成年女子1部、成年女子2部、少年男子、少年女子があります。
成年とは大会開催年の4月1日に18歳以上の者とし、少年とは同18歳未満の者とします。なお、中学生以下の生徒及び児童は参加できませんが、水泳、陸上、体操の3競技については、一部の種目で中学3年生の参加が認められています。
○表彰について
冬季、夏季及び秋季大会を通して実施した全正式競技の男女総合成績第1位の都道府県に天皇杯を、女子総合成績第1位の都道府県に皇后杯をそれぞれ授与します。
また、各正式競技の男女総合成績第1位の都道府県に、大会会長トロフィーを授与します。
http://www6.shizuokanet.ne.jp/nomura/kokutai.html より抜粋
開催地の決め方
全国を三地域に区分。さらに地域内を三ブロックに分け、ブロックや地域で調整、五年先まで決める。共同開催となった東四国国体(一九九三年)は、四国の四県がともに誘致を要望し、ブロック内での調整が難航。投票案まで出たが、過去に陸上競技の会場となった愛媛が外れ、高知も次に四国の番となる二〇〇二年にメーン開催地となる条件で降りたため、徳島、香川の二県開催に落ち着いた。
(http://www3.yomiuri.co.jp/osaka/monosiri/ms1003.htmより抜粋)
3.国体が引き起こすさまざまな問題点
一見すると華やかに見える国体もその裏側ではさまざまな問題を抱えている。国体の開催地となった県はさまざまな国体施設の建設や交通をスムーズにするための設備を整えなければならない。しかしこれらの設備を整えるには、莫大なお金がかかりそれがさまざまな論議を呼んでいる。高知のよさこい国体を例にあげるとたとえばその一例として香川県観音寺市の体育館問題が挙げられる。このケースでは、あらかじめ新設したばかりの県立の体育館が国体の会場の規定にそぐわずまた新たに市立の体育館を作ってしまったという問題である。この結果、市立の体育館を作るのに同市はその起債として十一億五千三百万円を費やし、結果としてこの体育館に約十六億円ものお金を費やした。しかしながらこの事が同市にとっては大きな打撃となった。なぜなら同市の年間の一般会計予算は百六十億円程度であり以前は十数億円あった競輪からの繰入金は近年激減している、そしてそれに加えて下水道特別会計も多額の累積赤字を抱えているという現状があったからである。またせっかく造った市立体育館だが、新築にしてはその後の利用者が少なく十年度は四百五件。一方、県立は二千五百二十五件。それにもかかわらず市立体育館の年間維持管理委託費は約二千五百万円掛かっている。周辺の各町にも体育館が新設され、利用増は簡単に図れそうにない状況になっている。また、そもそもこの市立の体育館の建設によって老朽化したし尿処理施設と給食センターの改築が遅れるという事態も発生し、最近やっと着手された。当時としては国体事業を先行させねばならず、結果的に大きな事業は後回しになってしまった。
これと同じような問題としては広島国体の場合の国内最大の施設「つつがライフル射撃場」(筒賀村)の国体後の利用に関する問題があげられる。こちらも作ったはいいが、国体後のことをまったく考えておらず、その後の利用者数と管理費の問題を抱えるにいたった。神奈川国体においても同様に「銃剣道競技」の会場となっていた寒川町の体育館に町は47億円も投入し、その結果年間の維持管理に約2億円もかかるという事態を招いてしまい、これもまた寒川町民に多大な負担をかけることとなった。
ところで、高知のよさこい国体は一昨年の神奈川国体の流れに沿いこれら財政状況の厳しさなどから国体の簡素化を打ち出している。
主なものでは▽「歓迎行事」―既存の祭り等で対応▽「接待」―湯茶程度とする▽「記念品・土産品」―贈呈しない▽「服飾整備」―競技会役員は平服を基本とする。その他役員は識別等のため最低限の整備を行う▽「練習会場」―必要最小限とする▽「国体旗引継式」―実施しない(いずれも本大会)など。
ところがこれに対し競技団体からは「簡素化と言うより手抜きだ」「みんなばらばらの服装で格好がつくのか」「必要最小限という表現ばかりであまりに寂しい。表現に工夫を」「従来の形と高知国体とでどこがどう違うのか、両方示してくれないと判断しようがない」など批判が続々と発生し、やはりこうした簡素化を実現するには、さまざまな困難が生じてしまうということを如実に示してしまった。(高知新聞 2000年1月13日朝刊、http://www.kochinews.co.jp/ketei06.htmより一部抜粋)
また、その他には工事の遅れによる自転車ロードコースの問題がある。これはコースの承認条件の柱になっている使用道の拡幅工事が本番に間に合わないことが判明した事で大きな問題となった。それによって「選手の安全が保証できない」とする県自転車競技連盟と、「運営方法で対応する」とする県国体局が対立し、コース距離や人員配置など開催マニュアルづくりに着手できない状態になった。これによって準備が止まったままの開催自治体は一様に困惑している。(高知新聞 2000年3月11日朝刊より一部抜粋)
ところで自分が高校時代に役員として参加した福島国体では雨天時での国体リハーサルで、役員に雨合羽を支給せずそのままリハーサルを行ったということがあった。国体を行うにあたっては選手はもちろんのこと、それと同じくらいの役員が様々な準備、演出をする上で必要となる。それにはたとえば小学生や高校生などのいわば学生が多数借り出されるが、時にはその練習のために学校の授業を欠席してというケースがある。それはごくわずかのケースであるが、ともかく国体という名のもとに様々なことがすべて国体中心になって、それは時には個人や自治体を拘束することにつながってはいないかということがそのときにとても気になったことである。もちろん国体はその開催県の地元の人々が盛り上げていくことが原則であるから地元の老若男女を問わず様々な人を国体に参加させようというのも理解できる。しかしながら、現実問題として国体はそれ自体を実現させるために県民の税金でもってさまざまな国体施設を作り、または自分のように一部の県民の役員としての参加を半強制的に求めている。それだけに時にそれはとても強い権力を私たちに感じさせ地元県民が楽しんで国体に参加できない状況を生み出すことさえもあると自分は感じた。
4.これからの国体
国民体育大会は日本国内の大規模なスポーツイベントとしてはもっとも歴史の長いものであると言えると思う。しかし、近年、その盛り上がりがそがれてしまっていっているように思えてならない。これまで国体について調べてきた結果として、その理由について自分は大きく分けてそれには二つの問題点があると考える。
一つ目は純粋に競技の質の低下だと思う。それは、例えば、開催県が優勝するという暗黙の了解のもと、その開催県出身ではない有力選手を地元に呼んで地元の選手として出場させるといった事が平然とまかりと通っている事などからも、一つの勝負として質の低いものになっていると思う。それに加えオリンピックに出場するようないわば日本代表レベルの選手の参加が非常に少ない事が挙げられると思う。国体で日本新記録が余りでないというのが、その事実を物語っているように思う。それに日本代表級の選手であれば名前も非常に知られているだけに、人の注目を引きつける大きな要素になると思う。または柔剣道の様な戦前の日本を思い起こさせるような競技が存在する事。これは国体の一つのマイナスイメージになりうると思うし、さらにいえばこういったマイナスイメージをもった競技を実施すること自体資金の無駄であるといえると思う。
競技の質を上げるためにはまずは一つの競技として各種目がレベルの高い見所のある試合を提供する事が望まれると思う。そのためには日本代表級の選手たちをどんどん国体に出場させるべきであると思う。また、常に各県がその地元の選手がのびのび競技に専念できる環境、例えば海外遠征させて経験をつませるとか、その競技施設を造るとか、何も国体の地元開催の時に限っていきなり大金をつぎ込んで施設を作ったりせずに常に地元の選手に対して最良の環境をできる限りでいいから提供すべきであると思う。開催県が、他県から有力選手を呼び寄せるには多大なお金がかかると聞く。そんな金があるのならば自分はそのお金を地元選手の強化に当てるべきだと思う。そしてそういった地元選手団の強化は何も開催県に選ばれたからといって急激に始めるものではなく、常に心がけなければいけない事であると思う。なぜならそうする事によって競技のレベルが上がるからである。現状の国体を見る限り、国体によって盛り上がっているのはその開催をしている県の人々、または地元マスコミだけであり、他県の人や、地元以外のマスコミはさほど関心を示していないと思う。それは、開催県が優勝している事が分かっているからであろう。また前回の国体の主催県のまるで別なチームかと思うばかりの選手団の力の衰退などを目のあたりにすると、これでは競技そのものはもとより前回の国体の主催県の県民は地元の選手団に少しも興味を持たないであろう。この結果の示すものは開催県に選ばれないと地元選手の強化はしませんという事の証明ではないかと自分は思う。それだけに今改めて各県が国体を皆で盛り上げるにはどうするべきかを考える時期に来ているのではないか、そしてスポーツの本当の醍醐味、そのもつ意味を改めて考える時なのではないだろうかと思う。
二つ目は国体のための資金の使い道にあると思う。高知のよさこい国体の例でもあるとおり体育館が無駄にいくつもできてしまったり、本来早急に整えなければならない公共施設の整備が国体の事業が優先されてしまう事で遅れたりといった、国体のためしか考えない無鉄砲な資金の使い方が県民の非難を浴びるのは当然であるといえる。これらの資金が県民の税金でまかなわれているという事実がある以上もっと県民にその資金の使い道を説明するなどして理解を求めるべきであると思う。また地方自治体同士の連係も重要なポイントであると思う。地方自治体同士でこまめに話し合いなどを持ち、施設が重複しないかなどを慎重に話し合うべきであると思う。そうすることによって国体施設の無駄を一切無くす事ができるようになると思う。そこで思う事は国体の為の前準備が足りないのではないかという事である。開催県はもっと国体施設の整備に計画性と時間的ゆとりを持って臨む必要があると思う。国体は長い歴史があるのだからこれまでの開催県の前例というものをもっと参考にすべきであると思う。
国体というものが日本国内最高のスポーツイベントであるのだから自分は国体がもっともっと人々に注目されるべきであると思う。そのためには国体がこれまで以上にもっと魅力のあるものにならなければいけないと思う。そのためには、国体がもっと人々に支持され理解されることが必要であると思う。
<参考文献>
高知新聞 2000年1月13日朝刊 http://www6.shizuokanet.ne.jp/nomura/kokutai.html
高知新聞 2000年3月11日朝刊 http://www6.shizuokanet.ne.jp/nomura/kokutai.html
http://www3.yomiuri.co.jp/osaka/monosiri/ms1003.htm http://www.kochinews.co.jp/ketei06.htm