2009年度副査担当の修士論文コメント(中村祐司)

 

*執筆者名と修論タイトルは省略

 

 

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インターネット虚偽ニュースを減少させ、記事の信頼度を増加し、ネットニュースの健全発展を目指す、という研究目的の崇高さと論文の中身とのアンバランスが目立つ。ブログや個人ウェブといった新興メディアの発展に所与の前提としている点も気になる。読み進めても、偽ニュースが出てくる背景、理由、要因がよく分からない。

 

偽ニュースポーツ形成の要因にしても意図的なものと過失によるものとの区分けが必要ではないか。

 「採点制、記者資格剥奪制、検索エンジン制、訂正制度などの総合的な取り組みを通じ、虚偽ニュースの防止策について検討する」とあるが、説明が明確でない。例えば、採点制には「読者採点制」と「記者採点制」があるとしているが、採点者は何を基準(事実を確認するための基準)に採点するのだろうか。採点そのものに対する操作の可能性はないのであろうか。「厳正に審査する」とあるが、その具体的中身について記述しなければ。

 

また、ネット閲覧者が「検索エンジン制」をめぐって、そんなに簡単に「比較と鑑別を繰り返すこと」ができるのであろうか。ニュース発信者の「実名制度」が記者による「不実報道行為」を防ぐ決め手といえるのであろうか。

 

 後半の自作による採点制導入の試みに、もっとページ数を割くべきであったように思われる。(20099月修了)

 

 

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 広く日本語文献に当たり、切り貼り感がなくはないものの図表作成など、それなりに整理・把握した労は伝わってくる。「ストックホルダー」「ステークホルダー」「内部ガバナンス」「外部ガバナンス」といったキーワードも興味深い。さらに、市場経済改革の中国の憲法改正をもたらしたことや、中国の会社法改正の立法作業に日本のNPO(日中企業法制研究会)が関与した点など、事実認識において勉強になった。

 

しかし、最初から最後まで概論テキストを読んでいるようであるし、また、「豊富な知識」「公正な見識」「誠実」「積極的に有効な」「効率的かつ効果的な」といった抽象用語が結論として乱発されており、こうした言葉の具体的な中身を提示してほしかった。現地調査は無理だったとしても、例えば経営学領域における中国語文献への積極的なアプローチをしてほしかった。

 

 

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