自治体における国際協力のあり方
国際社会学科k990112大槻 久美
国際化と呼ばれる時代になって、国と国だけではなく、地域や個人同士における国際交流も当たり前のようになってきている。そして、国際交流から国際協力へと広がりを見せている。各自治体のホームページを見てみると、それぞれに国際交流課というものが設置されている。他国に姉妹都市を持つ自治体も多く、また、姉妹都市としての交流だけでなく国際協力として支援を行う地域も目立ち、市民や自治体の国際協力への意識の高まりが伺える。それぞれの地域の特性を生かした国際協力活動はこれからも多いに注目されるだろう。財団法人自治体国際化協会では、自治体国際協力促進事業としてモデル事業をはじめ、自治体による国際協力の支援を展開している。
<モデル事業>
1.期間
平成11年4月1日〜平成12年3月31日2.対象となる事業:地方自治体が実施する新規事業及び質的改善が認められる
継続事業であって先駆的な国際協力事業を対象とする。
3.(財)自治体国際化協会の支援内容等
助成金の交付: 一事業につき対象となる事業経費の合計額の2分の1以
内に相当する額で、300万円を上限として交付する。
4.
モデル事業の評価・周知 :モデル事業終了後、評価を行い、他の自治体に対し事業を周知し、国際協力事業の促進を図る。
平成11年度モデル事業一覧
自治体 | 事業名 |
秋田県 埼玉県 板橋区 (東京都)神奈川県 富山県
樽川村 (長野県)四日市市 (三重県)
鳥取県 島根県 島根県 横田町 (島根県)香川県 北九州市 (福岡県) |
ロシア極東鉱物資源利用協力事業(新規) 海外研究機関との姉妹提携事業(新規) モンゴル国への再生自転車支援事業(新規) 環境保全技術交流事業(新規) ロシア沿海地方との渡り鳥に関する共同調査事業 ( 継続)漆工芸を通じた友好協力事業 (継続)中国天津市を対象とした産業公害防止技術研修 ( 継続)井戸等給水施設モデル事業 (新規)タイ国へのそろばん指導者派遣事業 (新規)中国吉林省ビジネス情報発信事業 (新規)タイ国へのそろばん製造技術移転調査事業 (新規)香川県国際協力センター整備事業 (新規)北九州市・仁川中小企業振興モデル事業 (新規) |
上の表からも分かるように、自治体による国際協力の特徴は特別な技術移転や人材派遣を行っているのではなく、その地域の特性をもとにし、支援という形にとらわれずお互いにとってプラスとなる面を持っていることである。また、地域の資源利用を積極的に行っているため、その地域に根差した事業として、地域作りにもつながるだろう。しかし、問題も残ると思う。
・先駆的な事業としての判断…本当に相手国のニーズに合った事業であるか。他の自治体や姉妹都市にも適用できるか。
・期間の設定…継続があるにしても、一年という期間の中での事業がどこまで進められるか。現地だけでの継続へつなげられるか。きちんとした計画を基に事業が行われているか。
・費用の設定…国際化協会からの支援は限られており、自治体がどの程度負担できるか。
以上のように、個人的に疑問点を挙げておいた。国際協力とは、支援後現地の人々によって継続でき、自助努力の精神を高めるものであるべきだと思う。
具体的な活動様子は以下に自治体にホームページを載せておいた。あまり、モデル事業として掲載している地域が少なく残念だった。
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/aitic/index.htm「板橋区国際交流協会」ホームページ
http://www.chiiki-dukuri-hyakka.or.jp/book/monthly/index.htm「月間
地域作り」 12月号(島根県によるタイ国へのそろばん技術移転事業)<自治体とNGOとの連携>
近年、国際協力の分野において様々なNGO団体の活動がとても注目されている。その規模も様々であるが、専門的な活動を行っている団体も多い。そして、非政府組織として一般市民の役割も大きい。「市民国際プラザ」は、地方自治体とNGO(非政府組織)が協力しあい、地域の特色を生かした国際協力活動を推進することを目的として設置した施設である。「市民国際プラザ」は、(財)自治体国際化協会とNGO活動推進センター(JANIC)が共同で管理・運営を行い、 自治体やNGOなどが行っている国際協力に関する情報の収集、提供及びPR ・国際協力に関するノウハウの提供 ・国際協力を担う人材の育成 といった活動を通じて、連携しようとする地方自治体とNGOのバックアップに努めている。
NGOと自治体の連携によって国際協力の幅が広がると思う。実際に、自治体のホームページにその地域のNGO団体の紹介を載せているところも多く、関心が高まっている。実際、自治体での資源や特性をどのように生かすかをNGOが助言する例もある。自治体による資源提供とNGOに専門的知識の双方が連携することで、より効果的な国際協力活動が展開されるだろう。
<海外の自治体>
The International City Management Association(
国際市支配人協会) アメリカ国際市支配人協会(以下
ICMA)は、地方政府の行政の専門家を育成するため、1914年に設立された。ICMAの主な目的は、地方政府に対し情報と支援のネットワークを提供することにある。正式会員はカウンティと市の行政官であるが、どのような政府機関や研究者でも、準会員となることができる。ICMAは、会員に対し、印刷物、調査レポート、研修プログラムなど多様なサービスを提供しており、これらの出版物の売り上げや、会費、補助金、地方団体との委託契約料によって運営されている。国際市支配人協会では、特徴的プログラムとして「国際地方自治開発プログラム」を行っている。最も典型的な支援形態は、開発途上国の地方団体に対して、行政の専門家を紹介するものである。例えば、以前にテキサス市の土木部長であった方は、ホンジュラス、コスタリカ、エクアドルで埋立地の管理と固形廃棄物サービスの民間化についての技術援助を行っている。また、ニューヨーク市輸送公の副社長は、ジャマイカのキングストンにおける有料道路の建設の実現可能性の調査を行い、カナダのあるコンピュータ技師は、都市計画を改善するための地形情報システム(Geographic Information System)の企画を支援するため、モロッコのある市に赴いている。その他の支援形態としては、開発途上国に対するモデルとして役立つ多くの環境問題の解決策についての調査研究がある。*カウンティについて*
カウンティは、州の事務のうち住民に、より密接にかかわる行政事務を代理で行う目的で州によって設置された団体であり、住民側からの意思に基づいて創設された「地方自治体」と異なり、「準地方自治体」という範疇に分類される。カウンティの所管事務としては、警察、裁判、教育、課税・徴税、及び道路の建設・管理等の従前からの業務に加えて、最近では、都市化の進展等に伴って、下水、ゴミ処理、公害防止、消防、都市計画、病院の建設・運営、社会保障事業、地域の産業振興事業等に関することにまで業務範囲が拡大する傾向にある。
海外においても自治体による国際協力の意識は高い。例としてアメリカの自治団体を取り上げてみた。行政官、以前の部長や副社長と言った人達が、技術援助を行ったり、その専門知識を途上国で生かすのはとても興味深い。こういう人々が率先して国際援助に協力する姿勢が大切だと思う。今回は自治体による国際協力と言うテーマを取り上げてみたが、自治団体としてより積極的な国際援助への取り組みを期待したい。途上国に向けて、まず先進国の自治体同志が協力する事が重要であり、ニーズ合った支援を行って欲しいと思う。国内の問題も、途上国や他の国での解決策として、日ごろから関心を持ちつずけて欲しい。
http://www.clair.nippon-net.ne.jp/HTML_J/CLAIR/CLAIR.HTM
「CLAIR
(財)自治体国際化協会」今回紹介したモデル事業を始め、研修員受け入れなどの国際協力関連事業についてや、海外情報なども紹介してある。
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/aitic/index.htm
「AITIC
板橋区国際交流協会」板橋区の国際交流についてのサイト。モンゴル国をはじめ、カナダや中国など他の姉妹都市との交流やイベントなどの情報を紹介している。
http://www.chiiki-dukuri-hyakka.or.jp/book/monthly/index.htm
「月間
地域づくり」横田町の月ごとに町の出来事やイベントなどを掲載している。