2009年11月27日 ジョイントゼミ 共通テーマ「地方議会ってなに?」
宇都宮大学 中村ゼミ 赤澤 林太郎
「合併によって生じる地域格差と日光市議会の現状」
日光市議会について
<議員定数>
・日光市の議員定数は、人口規模を基準として、条例により30名と定められている。
・合併後の選挙では旧市町村単位で選挙区が設けられ、各選挙区の議員数は、今市地区14名、日光地区6名、藤原地区5名、足尾地区3名、栗山地区2名となっている。
・次回の一般選挙からは、選挙区はなくなる。
<新日光市議会議員選挙>
・2006年3月20日の2市2町1村の合併に伴う、同年4月23日に投開票された選挙。
・有権者数:77729人 ・投票者数:56654人 ・投票率:72.89%
選挙区 立候補者数-定数 有権者数/当選者 死票率 最下位当選者得票率 平均齢
今市選挙区 21-14 3,594.7 20.7% 4.0% 56.5歳
日光選挙区 12-6 2,297.0 33.2% 8.4% 60.2歳
藤原選挙区 10-5 1,827.8 41.3% 10.2% 57.0歳
足尾選挙区 4-3 929.7 8.9% 29.2% 57.0歳
栗山選挙区 3-2 846.5 24.1% 33.9% 65.6歳
宇都宮選挙区 53-45 3,870.1 8.2% 1.4% 56.9歳
(新宇都宮市議会議員選挙 2007年4月22日投開票)
・年代別内訳
40歳代−5人 50歳代−25人 60歳代−17人 70歳代−3人
平均年齢−59.2歳 最少年齢−42歳 最高年齢−72歳(2006年4月)
・職業別内訳
会社役員等−21人 農林業−10人 政党・議会関係−7人 その他−12人
【参考】
日光市/市議会の役割http://www.city.nikko.lg.jp/kurasi/gyosei/gikai/gikaiyakuwari.html
ザ・選挙/日光市議会選挙 http://www.senkyo.janjan.jp/election/2006/9/00002133.html
平木チサ子日光市議会議員(今市地区)インタビューメモより
旧今市市議会の議席は26であったが、新日光市議会選挙での今市地区の定数は14人と決められたため、約半数に減ることとなった。
新日光市を人口比で5地区に分けた場合、今市地区は16から17の議席を持つべきであるが、新日光市議会の定数は30であり、5つの自治体が合併するにも関わらず1つの旧自治体が過半数を持つのは公平さに欠けるという他地区からの意見により、今市地区の議席は14と決められた。
来年の市議選に関して。
5地区が統一されるので、大票田である今市地区で前回以上に立候補者が増えることが予想される。しかし、他地区の候補者も今市地区内で選挙活動をするため、改選前の14を下回る可能性がある。また、近年は他地区から今市地区へ転居する住民が多く、新しく移り住んだ有権者が、今市地区以外の候補者に票を投じることも考えられるため、今市地区を基盤としている候補者が有利というわけではない。
日光地区にある大企業(古河電工グループ)の従業員の多くが今市地区に住んでいることも、票の行方を左右する要因にも成り得る。
なお、今市地区への転居は、藤原、足尾、栗山の各山間部地区の住民が多い。
自治会と市議会議員の関係。しがらみ。
今市地区の場合、自治会の力が強いので、市議会議員の意義が疑問視されている。
例えば、旧今市市内の各地区の中でインフラ整備などの細かな問題が起きたとしても、地元の議員はすぐには動かず「自治会の区長を通してほしい。」と返答する。
今市地区の市議の多くは市全体の行政を優先としていて、地元への還元が少ない。
平木さん自身も地元の市政を見る余裕はなく、現在は民主党の一会派に属し、他地区である湯西川ダム問題を担当している。(建設水道常任委員会の構成員。平木さんの専門は福祉関係。)
党の会派に属さないと、議会内での発言権が薄れてしまう。
本来であれば、党を越えた政治をしなければならないのに、会派の存在が邪魔をしている。
今市地区の市議会の中には、執行部が作成した質問文を議会内でそのまま読む議員もいる。自治会の推薦を受けて、地元で力のある有権者や区長の肩を借りて当選するような議員である。俗に「葬式議員」とも言われ、自治会の有力者などの関係者に不幸があったときだけ顔を出して、参列者に存在をアピールしている。そうした議員は、議会以外での政治活動はほとんどしていない場合が多い。
政権交代で官僚制度改革が始まったが、この機に中央だけでなく地方議会も、執行部に頼りきりの市政を変えていかなければならない。そのためには、市議自身が市民の立場になり、地方議員として何を優先してすべきなのか、それぞれが学びなおしてほしい。
「恩で票を入れる時代は終わり。」(平木さん談)
一般市民も地方議会に興味を持つべき。
民意が反映されない ⇔ 発言しなくてもやっていける
新日光市議会の議員報酬は月38万円。
これは旧今市市議会のときの額と同じで、合併の際に、これより低額であった他の4地区が、今市地区に合わせたかたちである。
経費削減の一環として、この議員報酬を5%カットする動きがある。
議会報告会の開会。
議員の中で4、5人の組をつくり、別地区に出向いて議会内で採決されたことを報告する。
一般市民に参加してもらいたいが、地元で力のある有権者や区長しか出席しないのでは、と予想される。他の自治体を例に。
新日光市内の地域格差に関して。
栗山地区の要介護者は14.5%(05年)
しかし、都市部の人間が思っているほか、農村部の人間はタフ。考えているほどシビアな状況ではない。
逆に手を出し過ぎて、ありがた迷惑と捉えられることもある。
藤原地区の過疎部に新しくデイサービスセンターができたものの、利用者は少ないときで1人か2人。地元の高齢者は、デイに行く時間があったら畑を弄ったり、散歩がてらにご近所さんとおしゃべりをしたりしていた方が有意義である。
高齢者の中にも、都市部と農村部で違いがみられる。
財政難であるために、もう行政には頼っていられない。自民の自立、地域の自立が必要。
「老老介護」の時代に立ち向かう。
藤井豊日光市議会議員(足尾地区)インタビューメモより
日光市は選挙区が統一されても議員の定数に増減がない。これは全国でも稀なケース。
2010年の選挙でも定数は増減なく、30のまま。
足尾や栗山などの山間部の地域からは「選挙区を統一すると、地方の議員がいなくなってしまう」という懸念があるが、選挙区を統一することは合併する前から決定されていた。
足尾地区も、今市地区と同様に見えない選挙戦に不安を募らせている。
日光市議会議員の給料を全体で一千万円分カットした。このような歳費を削減する動きは、他の自治体よりも活発に見られる。
日光市には行政視察などをする際の政務調査費がない。
市議選の結果が、県議選や知事選に影響をしてくる。
来年の市長選では、市長選候補者が「市議の中に自分のブレーンを作っておきたい」という働きが強くなり、組織だった市議選になると予想される。政権交代で活発化。
保守派から衣替えする候補者も出てくると予想される。
日光市は議員年金が枯渇している状況であるが、意見書を採択しなかった。
総務省に懇願するのが一般的であるが、市民の目線で見た結果、意見書の不採択は全会一致で決定した。
湯西川のダム問題が次の市議選に影響する議案の一つとして注目されている。
自民・公明などに属する議員たちは完成を目指し、民主・共産などに属する議員たちはこれに反対をしている。
ダムを作って観光事業を成功させた例は少なく、藤井さんは再検証すべきと意見している。
ダム事業に関する問題について、合併前に旧足尾町議会で、旧足尾町内にある砂防ダム建設の是非を巡って採決が割れる議論を展開している。
湯西川ダム問題について、この事例を参考にしてもよいのではないか。
足尾銅山を世界遺産にする動きがあるが、国内選考から落とされたり、似たような島根の石見銀山が登録されたりするなど、一時期よりは話題が大きくなっていない。
日光市長はこの活動に関する予算を一千万円も組んでいるが、マスコミの食い付きが悪く、また公害問題の図中にある古河機械金属が、資料の公開に難色を示していることなどから、今後も世界遺産の登録は厳しいとされている。
日光市には、「日光の社寺」という世界文化遺産があるが、同市内とはいえ関係性が全くないため、登録に向けての連携をとることも難しい。
今市地区は市議よりも自治会の区長の権力が強く、市議の存在意義があまりないように見えるが、足尾地区や栗山地区は山間部であるということもあり市議と住民の結びつきが強い。
旧足尾町は銅山の町として現在の10倍以上の人口をかかえ、その大半が銅山に勤める労働者だったため、住民の半分近くが共産党員であった。
足尾地区の住民は、日光市と合併したことによりサービスが悪くなって負担も増え、生活に不便をしている。今市地区と同額の国民健康保険や水道料になり、値上げに打撃を受けている。
インフラ整備に関しても、新日光市の都市部である今市地区が中心となっていて、山間部の整備が遅れているのが現状である。
旧足尾町の高齢化問題。
新日光市の中で過疎化が進んでいる足尾地区と栗山地区は、過疎法に基づき国からの補助を受けている。しかし、政権交代によって今後この補助がいつまで続くのかはまだ決まっていない。
以上の検討から見えてきたこと(結論)