2008年度ジョイント合宿
2008年11月29日
青色街灯導入による安心して暮らせるまちづくり
宇都宮大学 行政学研究室
高荒あかり 米田恭子
はじめに
全国的に見て犯罪は減少傾向にあるものの、地域でのつながりが希薄になっている今、犯罪の脅威は私たちの生活に常に迫っている。
私達は
安心して暮らせるまち=犯罪の少ないまち
であると考える。
そこで、犯罪の少ない宇都宮を構築するために犯罪抑止に効果があると注目され、全国的にも広まりつつある青い光を発する街灯、「青色街灯」を自治体主導で導入したい。この青色街灯導入によって、犯罪者の犯罪を起こさせる気持ちを静め、地域住民や利用者の防犯に対する意識を高める事を目標とする。地域住民の防犯対策への意識は犯罪抑止にも効果がある。青色街灯は単なる対処策ではなく、地域住民や利用者が防犯意識に目を向けるきっかけになって欲しいと考える。地域の防犯に対する意識を高め、犯罪に強い地域づくりを提案したい。
青色街灯導入は単に犯罪者の犯罪意欲を減退させるだけではなく、ソフトな面から地域住民および利用者の防犯意識改善にも効果を発揮する。さらに導入によって青色による景観の改善を行うことができる。また、ソーラーパネルでの自主発電によるエコロジーとエネルギーの有効活用を行い、街灯支柱部分を広告掲示に利用することで地域企業をスポンサーとして利用し企業の防犯意識向上をもはかる。こういった活動が結果的に自分の身を守るための防犯活動の発展につながることを目的とする。
現状の分析
2.1犯罪発生状況
全国的に見ると平成14年度をピークに犯罪の発生件数は下り坂になっている。しかしながら、犯罪別にみると空き巣等の犯罪は減少傾向にあるものの、暴行犯罪は依然増加傾向にあり今後も注意が必要である。犯罪の件数は減ったが、犯罪の傾向としては悪質なものや残忍な犯罪も増えており犯罪の恐怖はいまだ大きい。
栃木県警察は、身の回りで発生し、平穏な生活を脅かす犯罪のうち、栃木県警察が重点的に抑止対策を進めていくものを「身近な犯罪」として指定している。平成20年、栃木県警察では、身近な場所で発生し、その発生総数が依然として高い水準にある、空き巣・忍込み・自動車盗・オートバイ盗・自転車盗・車上ねらい、そして女性・子どもが被害者となる割合が高いひったくり・わいせつ街頭における暴行 の9つの犯罪を「身近な犯罪」として指定している。ここではこの「身近な犯罪」を対象として考える。
宇都宮市においてこの「身近な犯罪」の発生件数は前年比(H19)と比べ、空き巣、忍込み、オートバイ盗難、車上狙い、ひったくりが増加傾向にあり、全体の犯罪の発生件数も増加している。
3. 青色街灯
3.1青色街灯とは
青色街灯とは青い光を発する街灯であり、犯罪抑制に効果があると注目を浴びているものである。下記で詳しく述べるが、発祥の地はイギリス北部である。ここで景観改善目的のためにこの青い光を発する街灯を導入したところ、犯罪発生件数の減少が見られた。この犯罪抑制効果を期待し、日本でも導入する自治体が増えてきている。
3.2 青色街灯による防犯対策の事例
3.2.1 青色街灯普及のきっかけ
資料3:グラスゴー位置(参考URLAより)
3.2.2日本における青色街灯の導入
イギリスのグラスゴーの話は世界中に広まり、日本でも各自治体で導入をはじめるところが出てきた。凶悪事件が相次いだ奈良県と広島県をはじめとして、沖縄県、静岡県、群馬県、愛知県、福島県、富山県など多くの都道府県で導入されてきている。しかしながら、青色街灯に関しては国の正式な見解がないため、これらは各自治体の判断で導入していたが、石川県の野々市町では平成16年に内閣総理大臣が本部長を務める都市再生本部において決定された「全国都市再生のための緊急措置〜稚内から石垣まで〜」の一環として、全国各地で展開される「先導的な都市再生活動」の「全国都市再生モデル調査」として国から支援され「青色街灯による安全・安心なまちづくりの推進調査」として実験が開始された。
4. 施策事業の提案
上記で青色街灯の導入例・効果を見てきた。ここで、具体的な例として宇都宮市を取り上げ、どのように導入していくか地域例を用いて提案する。
4.1 青色街灯導入での期待される効果
先に述べた石川県野々市町の実験結果によると「青色街灯導入によって住民の防犯意識が高められるとともに夜間の犯罪防止に一定の効果があったものと考えられる」とする報告があげられている。これをもとに、青色街灯導入を通して犯罪抑止効果と地域住民の防犯意識向上が期待できると考える。
<導入による基本的イメージ図>
4.2
4.2 宇都宮市における青色街灯設置箇所案
1)宇都宮市オリオン通り周辺
宇都宮市オリオン通り周辺はアーケード街においては終日明るく通り自体も明るいので安全だが、一本入った路地になると道幅も狭く暗い印象を与える。また、近隣には飲酒可能な飲食店も多く、同時にカラオケ店などのアミューズメント施設もあるため学生を含め夜でも幅広い年齢層が集まっている。こういったオリオン通り周辺に集まる人たちは宇都宮市の他地区から来ている場合が大半で防犯に対する意識に幅が差がある。
この地区の犯罪については他の地区と比べ暴行等の犯罪の発生件数も多く、常に犯罪発生の多い地区となっている。警察もパトロール等を行うなどして犯罪の抑止を行っているが依然として犯罪は減少していない。
写真2:宇都宮市オリオン通り周辺2008/11/11撮影 写真3:宇都宮市オリオン通り周辺2008/11/11撮影
2)宇都宮市駅東公園
宇都宮市駅東公園は宇都宮市の東部に位置し東部地区の中では最大の面積を有する公園である。休日にはフリーマーケットなども開かれ市民の憩いの場として利用されている。その一方で夜になると内部には街灯が少なく、木々が多いがゆえに暗い印象を与えている。近隣には高校も存在し、この公園内の道路を登下校に使用する学生も多く日が暮れた後は犯罪の起こりうる可能性もある。
写真4:宇都宮市駅東公園
2008/11/11撮影 写真5:宇都宮市駅東公園
2008/11/11撮影
4.3 設置する青色街灯の経費と構想
1)青色街灯導入にかかる経費
青色の蛍光灯自体は1000円から1200円程度である。それに設置費として4000円程度かかり、毎月の電気代がかかる。そのためソーラーパネルを使用し太陽光をエネルギー源とする、環境に配慮した街灯を提案する。これは、エネルギーが太陽光であるので、電柱のない場所にも設置可能である。
ソーラーパネルをつけた街灯は1基あたり約15万〜120万(工事費別)を様々な種類がある。
資料5:青色街灯設置イメージ
(参考URLDより)
ここで、そのうちの一つを例に提案する。「株式会社アイエール電器」ソーラーLED外灯・街灯・防犯灯 2本柱タイプEY-005DS LED120個型を使用した場合、街灯代は1基あたり工事費別で58万円でありこの製品は太陽光をエネルギーとするため、電気代がかからない。さらに、この製品の期待寿命は約10年である。これは決して安いとは言えない。これを何基も設置すると大きな負担となってしまう。
2)設置の際の構想
上記のことを受け青色街灯自体にスポンサーを募集することを提案する。この街灯に広告を貼っていいこととし、街灯に広告を貼るには市からの許可が必要とする。
例えば、地域の企業からの長期契約広告やフリーマーケットのお知らせ、お祭りのお知らせなど各種イベントの短期契約広告などを募集し、その広告費として1ヶ月あたり5000円集めるとする。
一基当たり…
1ヶ月5000円×120ヶ月(12ヶ月×10年)=60万
これで一基分あたりにかかる費用がまかなえることとなる。もちろん自治体からもいくらか予算をだすことで、この広告費を下げることも可能である。
3)青色街灯導入後の管理
青色街灯設置後に広告を掲示したとしても、雨風などによりぼろぼろになったまま放置されたり、イタズラ書きをされてしまってはならない。破れた広告やいたずら書きをされた広告がそのまま放置されていることは、その場所に周囲からの関心が薄いということの表れになってしまう。つまり「犯罪をしやすい場所」だというシグナルになってしまう。
この青色街灯導入の目的・効果は「青色街灯による犯罪減少」だけではなく、「青色街灯導入による市民の防犯意識の向上」である。「青色街灯を導入したから大丈夫だ」という認識ではなく、青色街灯導入をきっかけとして防犯に対する意識をもってもらいたい。
そのために、以下のことが必要である。
広報:なぜ青色街灯を導入するのかを市民に説明する必要がある。オリオン通り・駅東公園への導入は自治体が中心となって行う。そのことに対して、市民の目を向ける必要があり、地域がその地域や防犯に対して関心を持たなければ効果が期待できない。広域的な市民へ自治体広報誌を通じて青色街灯の導入とその期待される効果を説明することができる。
広告のチェック:街灯に掲示してある広告の破れやイタズラ書き等を発見した場合は自治体に連絡することを求める。「広告に注目を集める」ということになるが、それを通して、青色街灯への注目、その場所への関心を高めることを目的とする。
警察と市民によるパトロール:各自治会では小学生の下校時刻に合わせた「見守り隊」や自主パトロールを行っていることが多い。一方、人が集まるところでも、自分の属する自治会地区では目を向けることは少ないだろう。そこで、警察がパトロールの中心となり、一緒にパトロールすることを呼びかけ市民を防犯活動に引き込む必要がある。ここで、警察と市民が協力することで情報交換の場になりうる。
5.おわりに
防犯活動というと警察主導で行うものと考えていたが、山本町をはじめ各自治会などで積極的に防犯活動を行っているところも多く地域での活動が一番効果のあるものだと感じた。そこで、自治体が主導となり地域住民への防犯意識向上を行うことで「安心・安全なまち」を形成していくことができると思う。青色街灯がそのきっかけとなることを期待する。大事なのは青色街灯を導入しても青色街灯だけが犯罪を防ぐのではなく地域住民の意識・関心こそが犯罪を未然に防ぐということである。
調査協力
栃木県警本部生活安全部生活安全企画課
山本町交番
山本町自治会長
石川県野々市町役場 環境安全課
フィールドワーク
山本町青色街灯設置箇所 2008/10/15
宇都宮市オリオン通り周辺 2008/11/11
宇都宮市駅東公園 2008/11/11
参考文献
小宮信夫『犯罪は「この場所」で起こる』光文社新書 2005年12月25日
小宮信夫『犯人目線に立て!−危険予測のノウハウ』PHP研究所 2007年12月10日
参考URL
栃木県警察HP/ 犯罪被害にあわないために>身近な犯罪について 2008/11/17
http://www.pref.tochigi.jp/keisatu/mizika/index.html
栃木県警察HP/防犯ベルくん犯罪情報(犯罪発生マップ)2008/11/17
http://www.pref.tochigi.jp/keisatu/bell/tochigiken.html
石川県野々市町HP 2008/11/17
http://www.town.nonoichi.ishikawa.jp/cgi-bin/odb-get.exe?WIT_template=AM040000
簡単ダイエット教室HP>青色防犯灯で犯罪が激減? 2008/11/17
http://www.blue-diet.com/hanzai.html
株式会社アイエール電器HP 2008/11/17
-