行政学演習A （020610）
国際学部国際文化学科3年
０００５５７Ｕ 屋比久 美樹
＜テーマ案＞
米軍軍用地の返還跡地利用と地域開発
現在、那覇新都心として新たな街づくりが行われている天久の広大な土地は、以前は米軍基地として使用されていた場所である。1953年に公布された「土地収用令」により、天久の土地が米軍軍属の住宅地の建設を目的に強制接収されて以来、国は「公用地暫定使用法」、「地籍明確化法」、「特措法」とその期限が切れる度に形を変えて強制使用を継続した。その後、1973年と74年の2回の日米安保協議委員会で返還について協議された結果、施設を嘉手納飛行場に移設することで返還が合意された。しかし、1977年の一部返還から1987年の全面返還まで要した時間は実に10年間に及んだ。
第一次返還時に土地を返還された土地所有者は、それまで土地を提供することで得ていた地代はもちろん入らなくなった。かといって、返還された土地を個々に活用し、収入を得ることもできなかった。なぜなら、この広大な土地を一括して利用できる機会を生かし、手狭になった那覇の中心部を天久に移すいいチャンスだと行政側は考えたからである。そのためには、一部返還がなされた土地からコマ切れに開発を行うのではなく、1987年の全面返還を待って、一斉に行う必要があった。
返還軍用地と周辺の既存住宅地を合わせた、新都心開発事業対象面積は214ヘクタールであり、そのうち93％が民有地であった。新都心開発のためには道路や学校、文化施設、行政施設といった公用地や内地の大手商業施設を誘致するための商業地区の設置が必要であったが、残りの7％の土地ではこれらの土地を確保することは不可能であった。そこで、那覇市と土地所有者との協議の結果、30％の減歩率と、20％の買い上げが決定した。これは、土地所有者から言えば土地の半分を取り上げられたようなものである。それでも、彼らはそうするしかないのである。一斉開発が決まった以上、彼らには選択の余地はなく、減歩率を30％に抑えることがせめてもの成果だったのである。
米軍占領下時代から、土地を強制接収され、国によるその場しのぎのような法律によって土地を奪われ、無計画な返還により収入は途絶え、挙句の果てには土地の半分を取り上げられた所有者は、いったいどれくらいいたのだろうか。現在の活気にあふれた新都心は、このような様々な矛盾に翻弄された土地所有者達の闘いの上に成り立っているのである。
那覇新都心のあゆみ
1945年（昭和21年）●沖縄戦終了
1951年（昭和26年）●日米平和条約調印、琉球政府発足
1953年（昭和28年）●米軍による強制接収開始
1972年（昭和47年）●日本復帰
1973年（昭和48年）●日米安全保障協議委員会で移設条件付きで返還合意
1977年（昭和52年）●接収地一部返還
1978年（昭和53年）●那覇市が軍用地跡地利用基本計画を決定
1983年（昭和58年）●沖縄県と那覇市が地主代表向けに牧港住宅地区開発についての説明会を開催
1985年（昭和60年）●接収地一部返還
●沖縄県と那覇市が「那覇新都心地区開発整備構想」をとりまとめ地域振興整備公団に「基本計画調査」の実施を要請
1987年（昭和62年）●米軍接収地全面返還
● 「天久地区開発地主協議会」を設立（平成３年に「那覇新都心地主協議会」へ改称）
1988年（昭和63年） ●那覇新都心開発整備事業に関する協定書調印（沖縄県、那覇市、地主会）
1989年（平成元年） ●「那覇新都心開発整備事業」の事業要請（沖縄県知事、那覇市長から公団総裁へ）
●地域振興整備公団「那覇都市開発事務所」を設置
1992年（平成４年） ●「那覇新都心土地区画整理事業」事業認可
●工事着工、起工式開催
1993年（平成５年） ●「那覇新都心街づくり推進協議会」（沖縄県、那覇市、公団、地主協議会）設立
1994年（平成６年） ●「那覇新都心株式会社」（第3セクター）設立
1997年（平成９年） ●「那覇中環状線」開通
●地区計画の都市計画決定
1998年（平成10年） ●「沖縄県立国際高等学校」開校
1999年（平成11年） ●「沖縄職業総合庁舎」開所
1998年（平成12年） ●仮換地指定完了
●「那覇新都心南北線」開通
● 「沖縄振興開発金融公庫」営業開始
● 那覇新都心街びらき祭開催
（http://www.nahashintoshin.naha.okinawa.jp/history/index.htm 那覇新都心ホームページより）
http://www.nahashintoshin.naha.okinawa.jp/kousou/index2.htm 土地利用計画図