国際関係演習                                  02/06/13

レーニン『帝国主義』「第4章 資本の輸出」              000104A  板倉世典

 

自分なりの要旨

 資本主義の発展段階としての、金融資本の輸出による独占が世界を分割した。しかし、資本*の蓄積と分割範囲との不均衡は必然的に戦争をもたらす。つまり、資本主義は戦争が不可避である。

 

第4章 

独占が支配している資本主義は、商品ではなく資本の輸出*が典型的である。

 →@資本主義発達国の資本家たちの独占団体の形成。A最も富んだ国家による独占的地位の形成。→先進諸国では膨大な「資本の過剰*」が生じた。

◎資本主義は・・・労働力も商品となる発展の最高段階にある商品生産。国際間の交換の増大が特徴。発展の不均等性と飛躍性が不可避。

 

第5章

◎資本家たちの独占団体(カルテル*・シンジケート*・トラスト*)はまず国内を分割。

→国内が飽和し必然的に国外市場へ→国際カルテルの形成→世界の分割へ

◎資本家たちが世界を分割するのは、彼らの特殊な悪意からではなくて、集積の到達した段階が利潤を獲得するために彼らにいやおうなしにこの道をとらせる。その際、彼らは世界を「資本に応じて」、「力に応じて」分割する。

どうやって独占が生まれた?・・・恐慌による小企業の没落と大企業による併呑(背景に銀行の存在)

数十億の資本と世界中の隅々に支店等を置く世界的トラストに対し、競争することが困難なのは自明。(石油トラストの例) しかし世界の分割は、力関係が変化する場合に再分割を妨げるものではない。(発展の不均等性、戦争、破産等が原因で)

 

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◎独占資本主義の段階への、金融資本への、資本主義への移行が、世界の分割のための闘争激化と結びついている。金融資本の植民政策はこれまでのものと異なる。

金融資本*に対して最大の便宜と利益を与えるものは国家、民族の隷属である。隷属国=半植民地国=半従属国を獲得する闘争が金融資本の時代に特に激化した。

 

国際的資本家団体は競争のあらゆる可能性(油田、鉄鉱山等)を敵の手から奪い取る(買収する)ために熱心に努力している。資本主義の発展、原料の欠乏感、全世界の競争と原料資源に対する追及の尖鋭化→これらが進むほど植民地獲得のための闘争激化

◎金融資本はすでに発見されている原料資源だけでなく、技術発展で将来役立つかもしれない土地をも熱望する。要するにできるだけ多くの土地を占取しようと努力する。

              ↓

◎金融資本の基礎の上に成長する政治やイデオロギーは、植民地征服の熱望を強める。

ヒルファーディング「金融資本の欲するものは、自由ではなくて支配である」

歴史家ドゥリオー「従来何ものをも得ていない国民は、今後決して自分の分け前をもらえず、また次の世紀(20世紀)の地球の開発にも参加させてもらえない危険がある。…『帝国主義』熱にとらわれてしまった理由はここにある。」

自由競争の全盛期…イギリスの指導的ブルジョア政治家は植民政策に反対していた

        ↓ 転換

チェンバレン「帝国主義は真の、賢明で経済的な政策である。」

ステッド「住民を内乱から防ぐために植民政策家は、過剰人口の収容、工場や鉱山で生産される商品の新しい販売領域獲得のため、新しい土地を領有しなければならない。」→世界のまだ分割されていない部分の占取を急ぐ。→19世紀と20世紀の境で世界の分割完了。

 

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資本主義的な自由競争が資本主義的独占にとってかわられた。独占は資本主義からより高度の制度への過渡である。帝国主義の定義=資本主義の独占的段階。帝国主義にとってまさに特徴的なのは、産業資本*ではなくて金融資本である。

◎金融資本とトラストは世界経済の種々の部分の発展速度の相違を強める。だが、力の相互関係が変化した場合、この矛盾の解決は資本主義の下では、力による以外何があるのか?

◎資本主義の基礎の上では、生産力の発展および資本の蓄積と、植民地および金融資本の「勢力範囲」の分割との間の不均衡を除去するのに、戦争以外にどのような手段がありうるだろうか?

 

論点

・現在の資本主義も「独占」が支配しているといえるのか。

・やはり資本主義は必然的に戦争を引き起こすものなのか。

 

キーワード解説

資本(capital):生産の三要素(土地・資本・労働)の一。新たな営利のために使用する過去の労働の生産物。また、剰余価値を生むことによって自己増殖する価値。(『広辞苑 第五版』)

資本輸出(capital export):一国における過剰な資本が、より高い利潤を求めて国外に流出する現象。対外投資と同義。(『経済辞典 第3版』、有斐閣)

過剰な資本(superabundance of capital):資本主義が高度化し、寡占的企業に生産と資本の集中が進み、国内市場に投資機会が少なくなるとき、資本の余る状態のことを言う。(『経済辞典』)

カルテル(cartel):同種もしくは類似の産業部門に属する複数の企業が相互の独立を維持しながら、市場を支配するために共同行為を行うこと。(『広辞苑』)

シンジケート(syndicate):生産割当てや共同販売を行う企業連合。(『広辞苑』)

トラスト(trust):カルテルよりも結合の程度が高い企業の合同。(『広辞苑』)

金融資本(finance capital):銀行資本と産業資本とが融合して生じた独占的な資本。(『広辞苑』)

銀行資本(banking capital):一般市民の預金を資本家に貸し付ける仲立ちをする資本(『経済辞典』)

産業資本(industrial capital):原材料および労働力を購入・加工し、剰余価値を生み出す資本。(『経済辞典』)