選択課題:T.よりよい地球市民社会を目指して、国際協力NGOができること、また、              

              果たすべき役割は何か、考察し、論じよ。

参考文献:『地球人として生きる 市民による海外協力』 岩崎駿介編著 岩波ジュニア新書

 

このグローバル化した時代において、地球レベルで物事を考えなければならない機会は多くなった。かつては自国のことだけ考えれば十分であったし、日本においては外に目をむける余裕がない時期もあった。しかしながら、今日よりよい社会づくりを目指す時、もはや「地球市民社会」を考えなければならなくなったと言える。このような要請の中で、国際協力NGOはどんな特性を持ち、何ができるのか考察する。

途上国の生活の向上を。こういった考えが生まれてから、先進国は国益も考えつつ、途上国に積極的に援助を行うようになった。国連の発足、東西冷戦の激化も1つの要因だろう。植民地からの独立が相次ぐ中、世界レベルではIMF等の資金面の協力、各国からはODAとしてインフラ整備や技術提供などを行った。初めは双方とも成果が上がっていくように思っていたが、それは逆に貧富の差の格差拡大と無意味の援助を引き起こすことに気づきはじめた。援助のための仕事で潤う先進国の企業、先進国が途上国を拾い上げてやるという視点、モノと知識のアンバランスによる援助の無力化、さらには状況の悪化という状況を次々と生み出していったのである。現在もその援助の形には工夫が加えられつづけているが、戦略としての援助、国益重視といった面など改善されていないところも多い。

では、ODA等にはないNGOの長所とは何であろうか。評価も様々であり、すべてあげることはできないが、私の注目している点を挙げる。

一つ目はより細かい視点で見ることができること。ODAはあくまで政府に対して行う協力である。確かに事前に調査隊が入り状況を把握した上で援助はなされるが、実際に役立たない援助に大量の資金を投入しているという批判を受けたことは見逃せない。果たして問題の本質を改善するのに役立っているのか疑問である。対して、比較的少人数だが、自由がきき、草の根的な活動のNGOは、しっかりした団体であれば、かなり実際的な効果を上げることが示されている。プロジェクトの期間を特に定めないことが多いので、短期的な成果を無理やり上げる必要はないし、活動範囲がかぎられるという点が逆にニーズに応えられる活動につながるようである。

二つ目は市民を取り込みやすいこと。つまりは社会の意識変革に市民を参加させることができることである。社会の主役は市民だが、実際は地球規模の活動になかなか参加しないのが実状である。NGOの多くが、財源を一般市民から得ている。これも大切な点で、意識の向上に役立つ。また、日本ではお上意識が特に強いので、市民と同レベルでの呼びかけがより訴える力を持つ。

三つ目は国益に左右されないこと。政府間には見えない、そして越えてはならぬ壁がある。駆け引きもある。従って各国間の連携も簡単ではないし、様々な統制もおのずと加わる。その点、NGOはそのような壁が低い。活動が制限される国もあるものの、基本的には自由な立場で問題にあたることが可能である。また、「仲間」「何とかすべきでは」という意識発の援助である点も、援助の本来あるべき形であると言えるのではないか。

近年においてはNGOの地位も随分認められ、国連においてもしばしば協力を要請されている。NGOの職員は民間の専門家と言えるであろう。今までは援助の専門家といえば、権威のある学者などを指した。しかし、NGOの職員は常に現地の声を聞き、地に足をつけてノウハウを身につけた、下からの専門家である。その視点の違いは、より効果的な援助を提案できる。しかしながら、今まで一部で聞かれた「ODAとNGOとどちらがよいか」「ODAは無駄な出費である」などといった議論は、非生産的である。これからはこの両者が長所を出しあい、いかに協力できるかという点が問われていくべきである。そして、NGOは上記の特性を生かし、より積極的な活動をすることがよりよい地球市民社会を目指して果たすべき役割ではないかと考える。

 

 

授業の感想

僕はずっと国際協力NGOに興味を持っており、この授業も去年から取ることを決めていました。しかし、実際のところ知識は乏しく、NGOに対して、甘い幻想のようなものを持っていたようです。講義を聴講して、注目を集めているNGOの必要性やプロジェクト実行への問題点、問題の背景にある貧困の原因など、本の文字からではなかなか伝わりにくい部分がよく分かるようになりました。また、実際に活動を続けてきた人の話ということで、聞く側としても現実味を感じることができました。たった5回の講義でしたので、できれば15回フルに使った講義が聞けたらよかったなあと感じています。

私は環境問題に大変関心があり、将来は環境保護にかかわる仕事に就きたいと考えています。今回の講義を糧に、さらに勉強を続けて、国際協力の場で役立つ人間になるよう努力していきます。