(1)ピナトゥボ災害に対する日本の国際協力の特徴、貢献性、問題性について。
今回の大きな特徴はインフラ分野を中心に援助が行われたことである。特に教育・保
健などの社会インフラより、道路、橋梁の建設といった経済インフラ中心に供与された。これは今までの日本のODAを踏襲している。
貢献性としては以下の2点がある。諸外国の中でにほんのODA拠出額は世界一であったこと。そして、これまでのODAを踏まえたインフラ分野に力を入れたことで、これまで蓄積されてきた技術や業績がピナトゥボ災害でも生かされたことである。
問題性はいろいろ挙げることができるが、まとめると以下のようになる。経験・人材不足、現地の自助努力を原則とする、案件が通るまで時間がかかるなどのODAの仕組みや政策が絡んだ問題により、必要であった社会サービスや生計分野で採択された案件が極めて少なかった。以前から指摘されている、ODAとNGOの結びつきがまだ弱い。よって、NGOが必要とした資金提供がうまくなされなかった。大きな割合を占めた商品借款の内容が公開されておらず、不透明である。以上のことは今後改善されるべきである。
(2)ピナトゥボ災害に関わってきた日本の民間団体のうち、あなたが参加してみたい団体はどれか。民間団体の活動全体を概観した上で、選んだ理由や団体の活動内容を述べなさい。
選択した民間団体:(社)アジア協会アジア友の会
この団体は1992年6月から1993年3月にかけて、アエタ族の生活向上・改善を目的とした農漁村開発事業を行った。その後、1993年から1994年にかけての2年間は植林事業を行った。現地の行政や関係諸団体と協力し、自然との共生をライフスタイルとするアエタ族の生活環境の回復、竹林の植林を行った。この植林は苗づくりから成長した竹を材料とする家具、工芸品づくりまでの過程を展望している。2年間で合計40ヘクタール、3万本の植林が行われた。植林作業をしたアエタ族の人々には賃金が支払われた。また、コミュニケーションの場としての小屋も建築された。
私がこの団体を選んだ理由はその行動目的の適切性である。この災害で最も甚大な被害を受けたのはアエタ族であるが、そのもっとも助けを必要としている彼らは自然とともに生きている。彼らに必要な植林、さらには自立への手助けを極めて体系的に行っている。アエタ族を含め、広範囲からの協力体制を組んでいることも評価できる。また、私が自然保護に大変な関心があることも、この団体を選んだ理由の1つである。
(3)「日本の国際協力の将来」について
日本はこれまで世界一の国際援助を少なくとも金額の上では行ってきた。日本は多方面で各国と協力しなければ経済発展ができない国である。ODAはこれからも日本の武器として拠出する必要があろう。しかしながら、1で提示した国際協力の問題点が少なくないことも事実である。加えて、極めて厳しい日本の財政下で国際協力を進めていくには、より効率的に、かつ質を落とさないように活動する工夫をこらす必要がある。
ピナトゥボ災害では、日本のノウハウが活きたところもあった反面、災害救援という他の協力とタイプが異なるニーズに十分応えられなかった。日本も阪神大震災などの国内大災害を経験し、災害に対しては復興以前に、日々の生活を維持する必要を痛感した。今後はその緊急性により応えられる協力が求められる。また、1990年時点よりも国内NGOは発達しており、彼らとの積極的な協力は大きな効果を期待できる。エルサルバドルやインド西部の大地震に対する国内反響の大きさを見ても、災害認識は10年前と比べ明らかに高まっている。富士山噴火や東海地震の被害対策などをもとに、これらのノウハウを被害が予想される地域に、予防的な国際協力をするのも可能な限りしたらよいのではないか。