選択課題:なぜ地球的規模で経済社会的な不平等が生じるのか?

 

この問題は、南北問題はなぜおきるのかと言い換えてもいいだろう。この問題を考えるには歴史、経済、社会をはじめ、多方面から見ていかねばならない。授業内容を参考にしつつ、不平等の原因を挙げていく。

まず歴史的経緯から見ていくと、大航海時代以降の、ヨーロッパによる植民地化を挙げねばならない。現在発展途上国と呼ばれている国々のほとんどが過去に植民地にされた国である。帝国主義の時代を経てこれらの国々は第2次世界大戦後独立を果たすが、その時にはすでに後を追う国として立場が決まってしまっていた。搾取的利用の結果生み出された単一作物の大量生産のための土地利用、一部の者だけが利益を得る体制、政治体制の未熟さなどによる足かせを今なお途上国は引きずっている。また、人口の急激な増加も貧困層を増やし、経済発展を難しくしている。

途上国は決して資源に乏しい国ばかりではなく、労働力も豊富である。しかしなぜいつまでも豊かになれないのか。一つ確実に言えることがある。それは先進国のルールに乗って、同じ土俵で競い合ったのが現在の差を生み出したということだ。自由貿易は強者に有利なルールである。独立したばかりで何も持たない国は、第1次産品で外貨を獲得しようとする。しかし、需要が活発であればよいが、需要が低迷すれば価格も低迷してしまうので、第1次産品は長期的には不利になってしまう。

現在途上国が経済発展に苦しんでいるのは70年代に大きな原因がある。オイルショックのために石油価格が上昇し、輸出が低迷したときに、世界銀行などは国際的な銀行貸付を行った。これが累積債務となり、途上国を苦しめている。また、途上国のためにと行った先進国による援助も、結局は先進国経済の需要を増やしただけに終わってしまい、ますます差が開いた。

基本的なことながら、その国の機構、風土などにも大きく左右されるだろう。今日の先進国は比較的温暖、もしくはやや寒い地域に固まっていることは偶然ではないだろう。これらの国は農業にも適し、大きな災害も少ない。しかし、赤道付近の国々は猛暑と戦わねばならず、疫病も発生しやすい。乾燥地帯にすむ人々は、厳しい風土に耐え、不毛の地で経済活動を行わねばならないのである。

その国の豊かさを以前は経済、GNPだけで測ってしまったのも問題であった。東南アジアなどはもともと豊かな地方のため、暮らしていくには不自由がなかった。この自給自足による豊かさは、ものの動きに現れないのでGNPで測ることはできない。しかしながら、この豊かさを「貧しい」と捉えられたことによって、各国からは近代化を迫られ、世界の中に放り出される結果となった。結果、国内のバランスが崩れて本当の貧困に陥ったということもある。

安全保障面からも経済発展を考えることができる。軍事費には巨額な資金が必要であるが、途上国の中には巨額の軍事費を使わねばならない国もある。内戦も含め、安全保障が十分でない国にとっては国内の発展に手が回らないまま軍事力を維持し、時には戦争を行っている。勝手に引かれた国境線にも、その原因を向けることも可能であろう。

最後に、不平等から立ち直ろうとしても、対外依存が強いうちは、なかなか自立ができないことを挙げる。経済面、政治面、軍事面で先進国に従属的立場を取りつづけている限り、これからの先進国化は難しいようである。なぜなら先進国はこれらの国々を踏み台にして発展を持続させているからである。

いろいろと不平等の原因と考えられるものを挙げたが、さらに問題なのはこれらのことが別個に存在するわけでなく、すでに構造として定着していることにある。アジアで発展に成功している国以外では、残念ながらこれからも経済の格差が広がると予想される。なぜなら、その国々はこの構造を打破するだけの鍵を持ちあわせていないからである。