国際政治論テスト原稿 選択1:日本の敗戦の原因と意義
戦争の敗戦の原因は、ある一大決戦に負けた、あるいは持久戦において負けたなど、ある特定の原因があることが多い。しかしながら、太平洋戦争における日本の敗戦は、相当の伏線的原因多数見当たる。これらの原因は一体何であったのか、そして、日本の敗戦はどんな意義があったのか、論じていこうと思う。
私は、日本敗戦の原因はおおよそ6つに集約でき、さらに3つに分けて考えることができると考えている。その3つとは、直接的原因、特に外交上に見られる間接的原因、そして、戦争以前からある根本的原因である。まず、根本的原因から順を追って見ていく。
根本的原因、それは資源と技術の不足、そして体制内部の崩壊である。日本は元々資源に乏しい国であったから、常に国外に資源を依存していた。アジアにおける勢力拡大も、この資源の獲得が目的の一つであった。南部仏印進駐後アメリカに資源をストップされてからは、鉄に材料になるものはすべて兵器にまわし、時には寺の鐘、ついには敵の爆弾まで利用するまでに至った。45年6月12日には、長谷川清海軍大将が天皇に、残り一回分の大規模戦争分しか海軍の力がないことを進言したことから見ても明らかである。加えて、第一次世界大戦を経験せず、しかも大和魂にこだわった日本は、日進月歩の世界の兵器開発に完全に後れを取った。竹槍は大げさだが、38式歩兵銃で核を保有しようという国と戦ったのだから、負けて当然というべきであろう。内部体制に目をむける。憲法上そして実際形の上では、天皇が統帥権を総攬し、上からの命令によって下が行動するというようになっていた。しかしながら、次第に軍が暴走を始め、軍の意向に天皇ですら押されていた状態であった。特に関東軍にはそれが顕著に見られ、たとえ上意に背いても、結果が良ければほめられるという状態が慢性化していた。おそらくその先駆となったのが、張作霖爆殺事件である。これ以後、石原莞爾らを中心に、満州事変など上意を省みない行動を続ける。その結果、満州国建国、日中戦争も一人歩きし、いつのまにか正確な情報さえも上に伝わってこなくなってしまった。また、負けるということを報告すれば、「売国奴」「非国民」呼ばわりされるということも正確な情報を遠ざける原因となった。これでは戦争中断も決めることができない。
次に、主に外交上間接的敗因を見ていく。一言で言えば、日本の認識の甘さと、外交のナイーブさと言うに尽きる。まず、大陸という視点では、日本の脅威国はソ連であった。関東軍も焦点は中国よりロシアにあったと言える。しかしながら、表向きは日ソ中立条約を結びつつ、内部では仮想敵国筆頭のままであった。対戦前に、日本がノモンハン事件にてソ連に完敗を喫しているにもかかわらず、なお終戦まぎわまでソ連に活路を見出していたとは、愚かと言うに尽きる。また、世界情勢に対する認識も甘い。刻々と変化するヨーロッパ情勢を察知できずに、日本は開戦してしまった。開戦前ドイツがソ連と戦争を始めたことにより、米英がソ連につき、日本はほぼ全世界を敵にまわすこととなる。その外交の稚拙さは、終戦の際の外交政策にも十分見て取れる。真珠湾攻撃までもが実は事前にしくまれていたという文章も見つかっている。
敗戦の直接的原因であるが、これはよく言われるように、原爆投下とソ連の対日参戦である。原爆は戦争を間違いなく早めたが、これは戦争早期終結論のほかにいろいろな意見が出ているので、詳細は措く。ソ連の参戦は、肚では43年1月の段階でソ連がそれを示唆している。ドイツを押さえてからという条件だったので、ドイツ降伏後は時間の問題だったといえる。
以上が目立ってみうけられる敗戦の原因である。しかしながら、実際のところ、はじめから勝つつもりはなかったようで、東郷は敗戦の予言をしたことで有名だし、内部文書にも、米英を屈服させることまではかなわない、と開戦前から言っていることで明らかである。行き詰まった日本を少しでも立て直そうとしたのだろうが、いずれにせよ認識が甘いというほかはない。
最後に、敗戦の意義について述べる。日本は国体護持をぎりぎりまで譲らなかったが、敗戦によって、日本に平和が訪れた。また、それ以上に原爆投下による敗戦が大きい。これから一気に世界は冷戦構造を生み、核の時代へとはいっていくのである。また、敗戦自体とは無縁だが、日本が、予想より比較的早期に降伏したことも大きい。間接統治ではなく、各国の分割直接統治になっていたかもしれないからである。時間が足りずそれは免れたが、これからの不安定な東アジアを迎えるにあたって、これはあるいは大きな影響を与えうることであった。そして、何より大切であろうことが、これによって本格的に帝国主義、植民地支配が終了し、民族独立へと新たな時代を迎えるもととなったことである。日本敗戦は、旧時代と新時代との節目となった。以上が日本の敗戦の原因と意義である。