国際政治学レポート2

「冷戦後10年を経た国際社会が直面する課題」〜混とん期における国連のあり方〜

 

冷戦が終わって10年が経過し、世界には新たな問題が噴出している。その最たる例として、ロシアの弱体化によるアメリカへの一極化が進む中、民族の対立がより鮮明になったことが挙げられる。まさに現代社会は、イデオロギーを失った混とんとした状態にあると言えよう。こうした中で、見直されてきたのが国連の存在である。世界各国が協力しなければ解決できない問題が多くある現在、国連がより有効に機能するよう期待されているが、まだまだ課題が多いようである。この前も、コソボ問題でその弱さが明るみに出た。では、これから国連はどうしていけばより国際社会で有効に機能できるのだろうか、考えてみたい。

まず、国連外について考えてみる。もし国連の強化を目指すならば、他の強力組織は邪魔な存在となる。国連への依存の必要性を減じてしまうからである。国連の存在を特に脅かすものとして、やはりNATOの存在が挙げられるだろう。NATOはかつて対東側の軍事同盟としてできたものであるが、ほぼ東側が消滅した現在も存続している。コソボへの武力介入もNATO軍であった。結果的には騒動を収めたものの、これは国連の弱さを露呈するものとなった。ソ連が崩壊し、社会主義体制が下火になるなか、もはやこの同盟は不必要のはずである。また、NATOは特定の国の利益をもとに動くことも注意すべき点である。ここからも武力介入といった警察的役割を担えるような存在ではないといえる。

次に国連内について考えてみる。私は、現在の国連では、各国を動かすほどの力は発揮できないように思う。つまり、国連の地位の問題である。世界の問題を国連で解決を探るのなら、それなりの権威が必要となる。ただし、それは世界政府としてのそれではない。それには議会のあり方や、出席者を考慮することもせねばなるまい。真に各国の代表が集まる場として、そしてNGO、研究者の意見交換の場としても、その立場を確立させたいところである。それは国連決議に信頼と重みを与えることになる。

恐らく、現時点での国連の最大の問題は、拒否権と理事国についてだろう。拒否権は5大国を国連内に引きとどめる効果があった反面、多くの事項が可決できなかった経緯をもつ。理事国については、本来常任であるべき国が非常任であったり、地域格差があるなどして、過去の歴史を引きずったままの状態にある。私は、大国の優越は認めたほうが良いと思うが、それは拒否権で示されるべきではないと思う。ほかに小国と差をつける何らかの方法に変えるべきである。少なくとも、国連を時に有名無実にした原因はこの拒否権にあったと言っても過言ではないからである。それにともなって理事国の再編も視野に入ってくる。現在議論の的であるこの問題については、今の15ヶ国から増やすとなれば、28ヶ国になってしまうそうだが、私はそれはそれで良いと考えている。例えば、緊急時には地域の代表という立場を踏まえた、理事国のみの会議というのがあればどうだろう。現在よりも迅速かつ的確な行動がとれそうに思う。

最後に、国連内にしっかりとした法体系が構築されることを提案する。現在もいくらか存在するが、あくまで基本的なことにとどまっており、法として十分であるとは言えない。

また、国連外も含めた国際法もまだ途上段階であるように思われる。国際法違反だといわれる行為もよく聞かれる話で、解釈もまちまちだったりする。これでは組織はよく機能しない。できるだけ早い法整備が、国連権力強化の近道であるように思う。しかし、これには十分な議論と時間が必要とされることだろう。

  昨年の2000年、国連で、国連改革の決議がなされた。長年の懸案だったことが、ついに実行されようとしている。国連は新たな時代を迎えようとしている。これまで、一方的に国連の強化について論じてきたが、これは、世界の諸問題の解決を国連以外に求めるのは難しいと考えたからである。逆に言えば一番の近道であると考えるのである。今までの結び付けるものがなくなってしまった上にグローバル化が進む現在。新たな秩序は間違いなく必要である。個々の問題が1つの問題の断片となるこの時代、その断片を集め、まとめていくことが必要である。それが国連の役割であり、存在意義であると私は考える。