1.
水田環境の重要さについて地形、河川との関連性から述べなさい。
水田環境そのものは、人類が水田耕作を初めて以来の人工的なものであるが、その水田は自然環境を生かして作られているものである。水田の元の地形は湿地帯である。まず、湿地の形成から述べる。山から流れてきた水は川を作り、海へと流れていく。その水量は一定ではないので、時に洪水を起こし、自然堤防を乗り越えて水は低地にあふれ出る。そこに湿地帯ができる。これを人間は利用したのである。
昔の水田は、確かにそこの自然環境を変えるのもであったが、それは常に人間的要素と自然的要素とを含んでおり、対応できる生き物にとっては棲みやすい場所となる。また、川は危険が多いため、生き物の繁殖地としても湿地帯は使われている。水田はその代替地としても機能していた。また、低地が広がっているため、人間の住む場所としても都合が良かった。よって、都市に住む生き物は、水田のものとよく似ている。いわば、平地を好む生物にとって、水田環境は最適の環境であることを意味する。平地の水田に対して傾斜地にある水田は谷津田と呼ばれる。ここは当然ながら水を必要とするので、山林やため池、用水路などが必ず必要になり、セットとして環境を形成する。その集まってくる水のおかげで、多くの生き物が生活できる。これは、豊かなとんぼ相をみればすぐに分かる。
水田環境は、以上のように必ず水のあるところに存在している。生物は皆水を必要とするので、湿地の地形を受け継いでいる水田は、生き物にとって、生きていくためのかけがえのない場所である。よって、非常に重要であると言えるのである。
2.
景観生態学上、6つの重要な景観のモザイクを図化して、内容を説明せよ。
(a)大型パッチ状構造……農耕地マトリックスに囲まれた大きめの残存林などにみられる。
(b)小型パッチ上構造……針葉樹林のなかの湖沼などにみられる。
(c)樹枝状構造……サバンナのなかの拠水林をもった河川などにみられる。
(d)直角線上構造……農耕地のなかの境界の生け垣、防風垣などにみられる。
(e)チェッカー盤状構造……異種の作物畑、人工林の伐採モザイクなどにみられる。
(f)入れ子状構造……丘陵地の谷津田などにみられる。
3.
水田環境(里山環境)が高い生物多様性を保っていた理由を、水陸の植生が作
るパッチダイナミクス、エコトーンの視点から説明せよ。
まず、生物多様性に富むとは、個体数、種数が多く、偏りがない状態をいう。また、それを実現する基本的条件は、土地が広いこと、林、湖沼、牧草地など、自然が多様であることが挙げられる。また、多少広い土地があっても、自然とは程遠い状態であったり、限られた場所だけ保護して、残りは開発してしまったりしては意味がない。遺伝子交流が途絶えるおそれがあるからである。以上を踏まえた上で、自然の多様性、水陸の植生について考える。
パッチダイナミクスの、パッチとは、場所によってその程度を示すもので、草しか生えていないところもあれば、低木が生えているところまであるなど、その段階が異なる。まずギャップ層から始まり、一年生草本、多年生草本、低木林、陽樹林、混交林へと発達する。それらは、人の手によって利用されるので、用途にしたがって草だけのところ、あるいは混交林のところと多様に分かれる。これが絶えず循環することになる。このパッチ間の関係をパッチダイナミクスという。もちろん、生息する生き物も、その植生によって変わる。また、狭いパッチの下では、生き物の移動が楽という反面、広い土地を必要とする生き物にとっては棲みにくくなる。よって、人為的利用によってできる小さなパッチダイナミクスでは、比較的定住し、弱い生き物にとって都合の良い場所となる。
次に、エコトーン(推移帯)について述べる。エコトーンとは、先ほど述べた相互パッチの境にできる、特に水域と陸域との間の線状の生育地のことである。ここは互いに接するいずれの生態系が改変されても影響を受けやすく、開発や汚染などによって破壊されやすい生育立地のひとつである。よって生物絶滅の原因ともなるところでもある。エコトーンには、境を埋める、両域に適した植生ができる。逆に言えばどちらの環境とも異なっているところである。例えば、河川と陸地との間にはアシなどが生える。草地と林との間にはつる植物や低木などが生える、などである。ここは生き物の繁殖地としても大切である。このエコトーンのある状態は、自然ではごく当たり前のことだが、人の手が入ってコンクリートの水路などができると、とたんに姿を消す性質がある。
さて、このパッチダイナミクスと、そこからできるエコトーンと水田環境(里山環境)との関わりを考えてみる。水田を見ると、水田とあぜとの間にエコトーンが存在しているのが分かる。水田はある程度の大きさで区切られているから、水田地帯全体としてみればエコトーンだらけと見ることができる。用水路やため池なども含めれば、広大なエコトーンであるといえよう。これらの場所すべてが生き物を育むのである。また、水田は大抵広い面積にわたっているので、生物、遺伝子移動も容易であり、高い生物多様性が保全される。このエコトーンによる生物多様性の向上は、周縁効果 (adge effect)と呼ばれている。以上のことから、水田環境(里山環境)は高い生物多様性を保つことができるのである。
4.あなたは地域生態学に興味がもてましたか。また、特に関心のあるテーマについ
て自由に述べて下さい。
高校では生物を学んだが、本格的に生態について学んだのはこれが初めてで、非常に興味深かった。我々が住んでいる環境が元々どのようなものか、なぜ水田が大切なのか、自然保護を考えるには何が必要なのかを、少しではあるが自分なりに理解し、納得できた。教科書を見ると、関連することが山ほど載っているので、より学ぶ必要があるように思う。授業の初めのほうのレポートにも述べたが、私は地域生態学に興味がわくというよりも、はじめから興味があったので受講した。この授業が受けられたことをうれしく思っている。
特に関心のあるテーマについてだが、実際のところ、自分でも良く分からない。漠然とあらゆる分野に興味が向いてしまっている状態である。人間にとっての身近な環境と、世界規模で危惧されている地球環境とのギャップも依然ある。私は元々、身近な自然も好きではあるが、何よりも地球規模の環境問題について関心が強い。身近な自然との関わりももっと知識を増やしたいと思っている。今の自分には何を取っても不足だらけである。少しでもこの問題に迫れたらと考えている。これは少しでも経験を積むことで分かってくる問題であろう。