2001年度ジョイント合宿まちづくり分科会レジュメ
市民活動活性化のために
宇都宮大学3年 清水 文香
田面木 千香
はじめに
“まちづくり”のソフト面を担うアクターとしての市民活動団体*に注目する。活動するにあたって、彼らが現在抱えている問題や課題から、より活動しやすい、よりよい形での活動ができるような環境について考える。
*ここで指す市民活動団体とは、NPO、ボランティア団体を言う。
1、市民活動団体が担い得る“まちづくり”とは。
“まちづくり”には行政はもちろん、企業など様々な団体や人が関わっているが、今回、私たちは“まちづくり”のソフト面を担うアクターとして、市民活動団体にスポットをあてることにした。なぜ市民活動団体かというと、これに携わる人たちというのは、日頃の自分たちの生活やこれを取り巻く環境に対して何らかの問題意識を持ち、これを改善すべくさまざまな活動をしている人たちであるため、彼らの活動というのは、行政が行うと公平性を重視するがために広く薄くなってしまうサービスも、彼らが必要であると感じ、ニーズがあるところには狭くとも厚いサービスが提供できるという、柔軟性がある。こうした人たちの草の根的な活動が盛り上がっていき、住民の間に広がっていけば、個々に生活における問題意識が生まれ、一人一人が意識を持つことによって住みよい環境が築かれていく、社会というものが良い方向に向かっていくのではないかと考えたからである。では、このような市民活動団体が、現在抱えている問題とはどんなものだろうか。現在、彼らが活動している環境に注目し、今後、彼らの活動がより盛り上がっていくためには、この環境、状況がどのようになればよいのか、どういった環境というのが望ましいのか、ということについて、実際に活動に関わる人たちから伺ったお話をもとに、考えていきたいと思う。
2、市民活動団体の活動環境の現状
現在、市民活動団体が抱えている問題を知るために現在の活動状況を、市民活動団体で活動していらっしゃる方と彼らの活動に関わる方にお話を伺った。(訪問、メール、電話によるインタビュー形式)
・宇都宮市民活動サポートセンター[1]職員の中里さんのお話
Q.「宇都宮市民活動サポートセンター」とは?
A.「宇都宮市民活動サポートセンター」は市民と行政のパートナーシップ、協働をテーマとし、ボランティア活動など市民活動に関する情報の提供や人々の交流の場として、市側で去年の4月から立ち上げのための準備を行い、平成12年10月にオープンした市の施設。当初は平成14年立ち上げの予定であったが、平成10年11月の市民活動支援に関する研究会の報告書、平成11年に市の広報課が行った市民と宇都宮市市民活動団体、宇都宮市の企業に対する企業の社会貢献活動に関する調査といったアンケートの結果(回答は半数程度)、ボランティア活動に興味関心をもっているという市民が、実際に携わっている人も含め、全体の約6割に達しているとことから、立ち上げが大幅に早まった。今市市など近隣でも こういった施設の立ち上げが検討されているため、ちょうど1年を迎えたこのサポートセンターの見学者は多い。職員として宇都宮市役所市民生活課の職員が入っているが、今後の予定として来年(平成14年)の10月には、運営を民間でやってもらいそれに対し行政が委託金を払うという民間委託のかたちをとることになっており、そのための準備を今進めている。
Q.「市民の手によるまちづくりを話し合う会」とは?
A.月一回のペースで行われるこの会は、ボランティアやそれを通じたまちづくりというようなものに興味関心のある人達が集まって話し合っているもので、今後こういった話し合いから行政の政策などにつながっていくことは考えられるが、今すぐ行政にどう関わっていこう、などというものではない。会の話し合いには様々な年代や立場の人が参加しているが、この話し合いを通し人々が年代をこえて交流を深めるというのが大きな目的となっている。現代の日本社会が抱える様々な社会問題なども、人とのふれあいが少なくなっていることに原因があると考えられるところもあり、こうした交流の場は大切だと思う。会に参加する人達との話し合いのなかで、自分が今まで気づかなかった部分や目を向けたことのなかった部分に目を向けることにより、視野が広がり、見方や考え方について共通の認識をもつこと、というのが大事なのではないかと考える。今ある身の回りの問題をひとつづつ解決していこう、現状を改善していこう、bestよりもbetterをめざして自分たちができることは何だろう、というのを考えるのがこの、話し合う会である。
・特定非営利活動法人とちぎボランティアネットワーク[2]の矢野さんのお話
Q.特定非営利活動法人とちぎボランティアネットワーク(とちぎVネット)とは?
A.平成7年設立(特定非営利活動法人としては平成11年8月9日認証を受ける)。活動範囲は県域。ボランティアをしたいという意志をサポートする中間支援団体。ボランティアの情報収集と提供(斡旋)を行っている。職員として勤務しているのは自分を入れて2人(民間公務員)だけであとはボランティア。
企業はもうかることをやる、というのに対して非営利団体は必要なことをやる。
Q.行政との関わりについて
A.市はとちぎVネットがあるのに、なぜ宇都宮市民活動サポートセンターつくったのか。民間を圧迫しているのではないか。
行政側の財政が厳しいから民間に委託する、というのではなく、民間ができることだから民間でやる。例えば、生活保護など今すぐやらなければならないようなことは行政がやるべき。他は民間でできる。
行政の仕組みが変だ=市民が変だということ。住民は自立していない。行政に依存している。
Q.今後の課題
A.客観的に見ることで共通のイメージをつくること(個人の中の社会性をどう育てるか)
によって、良い面、悪い面が見えてくる。良い面は伸ばし、悪い面は直していく。自分達の町に自覚的に関心を持って、一人一人の力を合わせればできることがあるのだ、という実感を生むこと。“やる気”の意識を育てていくこと。興味を持って主体的に参加できるような仕掛けづくりが大切。
・NPO法人 南那須まちづくり研究センター[3]の荻野さんとのメールによる聞き取り
Q.現在の市民団体があり方や活動面で抱える課題や問題というとなんだと思いますか?
A.ずばり、資金。でも、最終的には倫理観。倫理観より名誉欲やらなんやらが強くなったとき、市民団体はただの「趣味の会」になるのでは?倫理観もそうだけど、やっぱ、使命感かな。使命感、倫理観を大事にするってことでしょうか。
Q.行政は市民活動団体(ボランティア団体、NPO団体なども含む)やその活動に対して
どれほど、またどのように関わっていくべきだと思いますか?
A.相手の独立性を尊重し、お互いに自立した関係を築くために、ある程度のルールを決めるなどしてつきあうことが大切。なあなあの関係や、逆に、行政の下請けや出先機関のような扱いはつつしむべき。ボランティア団体は自由な意志に基づくフリーな団体であり、行政の お手伝いではない。また、NPO(法人)も独立した組織であり、行政ができないことを安く請け負うための機関ではない。勘違いしないこと。行政の責任転嫁につかわないこと。
Q.その上で市民団体はどのようになっていかなくてはならないと思いますか?
A.まだ現段階ではある程度、距離をもったほうがいいかなー。「協働」には、行政も市民団体やNPOも成熟が必要。あと、ルールも。それらがまだ、確立してないし。今は過渡期かな。市民団体もちゃんと責任もって自立し、行政に過度に頼らない。頼ったツケは必ずくる(自戒も含めて)。
・ウイメンズハウスとちぎの副理事長である中村さんの講演会を聞いて
ウイメンズハウスとちぎは、平成8年に女性の人権を守るという観点に立ちドメスティ
ックバイオレンス(家庭内暴力)を受けている女性の援助を目的に設立された。平成13年8月に特定非営利活動法人に認定される。ボランティアによって運営され資金は会費、賛助会費、カンパ、イベント等の収益金によってまかなっている。以下に活動内容を挙げてみる。
パートナーからの暴力から逃れる女性をシェルター(アパートの一室を借りてそれに当
てている)で安全に保護する。
・シェルタースタッフ養成事業
・暴力のために自立困難に陥った女性の精神的、経済的、生活支援サポート
・女性の悩み相談(面接相談、電話相談)や、暴力のない社会をめざす提言や啓発など
ドメスティックバイオレンスは社会的なところに原因があるというテーマの下、活動している。中村さんがおっしゃるには、宇都宮市でも市民活動は進んでいるが、それを支えるものが少ない。それは何よりも資金の問題である。また活動しながらも「法を変えよう」「意識を変えよう」と日々取り組んでいる。
・わたらせ未来基金の早乙女さんのお話
Q.わたらせ未来基金とは?
A.わたらせ未来プロジェクト*という大枠のプロジェクトの推進団体という位置付け。渡良瀬遊水池**だけでなく、渡良瀬川流域の管理も上流と下流から連携してやっていこう、というもの。
*わたらせ未来プロジェクト・・・渡良瀬遊水地における湿地再生事業。渡良瀬遊水地に10年後にチュウヒの繁殖、20年後に白鳥を呼べるように、30年後にはマガン、おおひしくいを呼べるよう、時間をかけて最終的には40年後コウノトリを呼ぶことを目標に豊かな自然を取り戻そうと活動。
**渡良瀬遊水地・・・洪水時に備えて水の遊びを作るための場所。栃木県、埼玉県、群馬県、茨城県の4県に隣接しており、その半分以上が湿地帯。広さは山手線や宇都宮環状線の内側ぐらいの大きさで、よし(葦)が広範囲に生えている。
発足にあたっては渡良瀬遊水地を守る利根川流域住民協議会の協力を得て、今年の3月に発足。
Q.具体的にどのような活動を行っているのですか?
A.小中学校にビオトープを造り、遊水地の土で造った池で埋土種子を発芽させ、子供たちに自然に触れてもらい、発見してもらおうという出前授業を行っている。
Q.現在抱えている活動するにあたっての問題点。
A.@お金がない。
現在の資金は助成金が主。ほかに会費や国土交通省、林野庁からの委託事業(遊水池の調査など)から得るお金。
A自分たちが伝えたいことを伝える(理解してもらう)作業が難しい(気づいていない人に気づいてもらうのが難しい)。
Aについて考えられる理由として、活動自体を知らない。対象が人じゃないので共感が得られにくいなど、NPOなど活動において“環境”というのが難しい。
Aについて、現時点での活動状況
・シンポジウムのパネリストをやって自分たちの活動を紹介。
・子供を対象とした(自然)観察会。
Q.今後の課題
A.・賛同、参加してもらえる確率が高くなるよう、市民の意識の向上。
・(行政と関わっていく上で行政と市民の)対等な立場、関係。
行政に対して市民の側からが積極的にアプローチしていかないと。
・ビオトープを通じての子供に対する教育と、よし刈りのイベントなど地域の人が関心持ちやすいことやりながら、地元住民の理解を得るために、つながりをいかに深めていくか。
・サン・カルチャークラブ[4]の山形さん、高根さんのお話
Q.サン・カルチャークラブとは?
A.総合型地域スポーツ・文化クラブ* テーマ「ふれあい共有しよう!」
*例えば地域の公民館など、それ自体、何か目的をもった施設ではないためそこでは
様々な団体がバラバラに活動。この公民館の機能に目的を持たせたもの。
ここは、実践の活動の場。クラブとしてクラブ会員(に対するサービス)が基本だが、サンカルでは、障害児も一緒になった子供たちの放課後を支援**しようというクラブの目的があって、子供たちの放課後クラブとしてもこのクラブを位置付け。
ボランティアを呼び込んでやろう。このボランティアを通して人づくりも。
はじめはクラブの目的に関わりがなくとも、クラブの“文化とスポーツ”という“趣味”を土台として、こうしたことに関わりが生まれる。
**障害児のことを行政に任せるとこの子達は隔離されてしまうが、そうしたくない。クライミングの施設を設けることで施設を健常者の人など様々な人が訪れる。こうした中で障害児も共に、という環境。
有限会社サン・テクニカ(山形さんの会社)として借りた(光熱費などもここ持ち)土地(500坪のうち300坪を使用)でクラブ運営を行っている。←この“建物がある”というために維持費の問題がある。
クラブとして@営業(営利)的なもの(要素)における(経済的、経営における)自立
Aボランティア的なもの(要素)におけるNPOとしての目的という二つの面。
(@で以下に稼いでAにお金をまわすか。)
クライミングジム、ランニング、トライアスロン、書道など様々なサークル活動(講座)を設け、その利用料が収入となる*。
*大人にはそれなりの利用料を払ってもらい(@)、クラブの目的から子供たちにはかなり利用料を抑えて提供(A)。
Q.活動にあたっての問題点とその解決方法は?
A.@お金の問題(どこからお金をねん出するか?)
現在、助成金や支援金はもらっていない。いずれはお金を出してくれるところ(財団など)に頼まなきゃいけないと思っているが、今は日々の仕事、作業で追われる毎日。
財政は赤字。(有)サン・テクニカのほうからの持ち出しもぎりぎり。
お金でどうこうというのは市民活動団体的な考え方ではないがお金がないと活動は続けていけない。
活動する人が増えれば利用する人が増え、利益が上がれば活動の質を上げたり、活動規模などを広げていったりできる。
A一般の人たちの意識が低い。
今年が「ボランティア国際年」であるなど、“ボランティア”について知らないというわけではない。しかし、このご時世ということもあるだろうが、必要性を感じていても*自分に見返りのないことをしている暇はない、という感じの人が多い。
*目は向けるけど“自分には時間がない”。頭でわかっていても、現実として、今の生活に慣れてしまって当たり前のように感じ、そこから即座には抜け出せない。
例えば障害児を持つ親の、子に対するあきらめ。その先には行政が助けてくれるだろう、人(誰か)が助けてくれるだろう、という甘え。
こうした甘えの利かなくなる状況がくることを考え、今できること、本当にやらなくてはいけないこと(お金を稼ぐことではないはず)を、今、やらなくてはいけない。
市民活動やボランティアに関心のある人は様々なところで関わっているが、(多くの人が関わっているわけではないので)人手不足。眠っている人を呼び起こさなくては。
ボランティアや市民活動に興味すらない人をいかに取り込むか。
状況をつくっても来る(べき)人が来なければ成り立たないので、興味を持ってもらうには興味を持ってもらえるような要素が必要。つまり企画は大事。勉強会、情報交換も大事。
何か一つのことをやっているとどんどんつながってくる。(→ネットワークの必要性。)
人の社会のことなのだから人がやっていくしかない。
人を動かそうと思ったら自分が動いていないと。動くといってもただ動くのではなくて動きをもって動かないと意味がない。
気づくことが大切。これが始まりだから。一番の問題点は人。
伺ったお話から、どの市民活動団体も一番に資金の問題を挙げている。
内閣府が平成12年度に行った委託調査「市民活動等基本調査 報告書」を見ても、市民活動団体は必要な行政支援として、「活動に対する資金援助」をまず、望んでいるということがわかる。
資金援助が7割、場の確保・整備が5割
・ 行政や企業等からの支援を団体の59.6%が利用している。・ 行政支援の内容について、要望が多い順に「活動に対する資金援助」(69.7%)、「活動や情報交換の拠点となる場所の確保・整備」(49.7%)、「活動に必要な備 品や器材の提供」(44.1%)、「活動への理解と参加を促すための広報・普及活動」(39.7%)、「活動メンバーの能力向上のための研修」(36.2%)などである。
「市民活動団体基本調査」要旨 内閣府ホームページより
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/2001/0409shiminkatsudou/main.html
また、この報告書によると、外部支援の利用状況として、行政や企業からの支援を59.6%の団体が利用しており、これは、市町村からの支援が最も多く(70.1%←注:支援者別に支援状況を見た場合)、2位が社会福祉協議会(36.0%←注)となっている。
この結果を踏まえ、市と市の社会福祉協議会ではどのように考えているのか、伺った。
・宇都宮市社会福祉協議会ボランティアセンターの内田さんとの電話による聞き取り
Q.社会福祉協議会とは?
A.民間であるが行政(市)から人件費と、何かやるといった場合の事業費の補助を受けている。
Q.現在、センターには何団体が登録しているのか?
A.167団体(市内に事務局があるなど市内に活動拠点をもつ。代表者が市の人など。)
Q.市民活動団体に対する資金援助を行っているか?
A.宇都宮ボランティア協会に対しては補助金を出している。これは協会の研修や会議に使われている。
個々の団体に対しては“法人”であるので、法人に対する援助は必要でないという考えのため、NPO法人に対する援助は行っていないが、協議会のほうにきた助成団体の依頼に対し、条件に見合う団体の推薦書を書くということはしている。また、全登録団体に対してボランティア活動保険の肩代わりをしている。
Q.今後の課題は?
A.補助をしない理由は内部に活動内容の見極め、審査する機関がないため。
社協の運営委員会は学識者や行政の人間などから構成されるが、このため、(意見や議
論が)現場の声と離れている、ということもある。もっと実際に活動している市民の声も取り入れていかなくては、と感じている。こうした情報をもっと外に発信していく必要はあるだろう。
登録している団体は福祉関連の団体が多いのだが、そうでない活動をしている団体の支援を行っているところ(国際交流協会など)と宇都宮市民活動サポートセンターが中心(取りまとめる場所としてよこのつながりをつくるパイプ役)となって情報交換を行うなど連携をはかっていく必要性。ネットワークを結び、どういったニーズに対しどう対応していくかという代表者同士の話し合いが行われるような環境。
・これを受けて宇都宮市民活動サポートセンターの中里さんのお話
Q.行政内部に市民活動団体に対して一括して資金援助を一括して行っているような部署はあるのか?
A.福祉関係は福祉関連のところが、農業関係は農業関連のところが、というようにそれぞれで行っている。
Q.市民活動団体に対する行政の資金援助についての考え
A.行政が推進していこうという方針や政策と合致するような活動を行う団体に対する助成
ならありえるが、そうでなければ行政が援助する必要はない。
Q.市民活動団体、また、これと深く関わってくる団体との連携、ネットワークについてどのように考えているか?
A.今はサポートセンターができてから1年程しか経っておらず、前例のないことをやっているので内部の仕事やそのやり方についての模索の段階。このめどがたったら、来年4月あたりから各団体の代表者を集めて、連絡会(意見交換会)をサポートセンターが中心となってコーディネートしていこうと考えている。
・とちぎ教育ネットワーク[5]の中野さんとのメールによる聞き取りから
とちぎ教育ネットワークは栃木県内に居住する子供達に対して、地域に根ざした教育支援
事業を行い、将来の日本を担う子ども達の健全育成を図ることを目的とし、地域社会における教育支援態勢の確立と民間教育者の育成事業、自然・社会・体験学習などを通して子ども達の「生きる力」の育成を支援する事業などを行っている特定非営利活動団体である。
Q.活動をする上で何か問題はありますか。
A.NPOは民間団体でなおかつ非営利活動法人ですから、会員の会費だけでの運営には厳しいものがあります。しかし、今後の活動の中から独自で経営を確立する手段を各法人が獲得しなければなりません。
Q.とちぎ教育ネットワークがもっと活動しやすくなる環境とは。
A.NPOに限らず民間団体がそれぞれの垣根をはずし、それぞれの情報公開をし、それぞれが助け合っていけるような環境づくりが必要です。しかし団体どうしのネットワークが進まない現状がここにあります。その一つに行政のパクリがあります。言葉は悪いのですが、実際、民間団体ではじめた小さな活動がその必要性と重要性によって一般に求められ次第に大きくなっていきます。ある程度、経済的に採算が取れるようになると、行政は名前を変えて同じような団体を作ります。行政ですから多大な資金も投入できますし、人材も豊富です。結局、民間団体が最も煽りをくらうわけです。そういう意味もあって、民間団体は自分のノウハウ、技術を外部に明らかにしてはいきません。しかし、本来そういった垣根を全て外して誰もがそのノウハウやスキルを共有できるようになれば、もっと大きな輪が広がっていくのではないかと思うのです。だからこそ、行政も民間も互いに敵対視することなく、お互いが尊重し合い、認め合い、助け合っていけば、日本の様々な問題は解決していくのではないでしょうか。
Q.活動をする上で行政との協働の必要さを感じますか。必要だとすれば、それはどういう点から感じますか。
A.行政との連携は絶対必要です。というより、今後、行政の方が民間との連携を必要とするはずですが。というのは、我々の活動で、「栃木県内の不登校・ひきこもり・非行・いじめなどの親の会や子供の居場所・フリースクール・フリースペースを広く一般の人に知ってもらう」という大きな柱がありますが、この不登校や引きこもりに対する行政の考え方は、ますます子どもやその親を苦しめる傾向があります。それには根本的な行政とのズレがあります。だからこそ、あらゆる手段を講じながら不登校の数が減らないのはここに理由があります。そのためにも行政は民間と協働すべきです。
以上のインタビューより感じたことは、どの市民活動団体も資金面の問題を抱えているということとボランティアや市民活動に対する興味、関心の低さである。
このような問題を改善した上で、今後、市民活動団体伸ばしていくためにはどうしていったらよいか、考えていきたいと思う。
3、考察
まず、資金面の問題について前出した「市民活動団体等基本調査 報告書」を見てみたいと思う。
「市民活動団体等基本調査 報告書」p76より
このグラフから、市民活動団体の主な収入源は、会費と行政からの補助金だけで5割を占めていることが分かる。このことから、会費と行政からの補助金に関して改善が図られれば、資金面での問題は解決できるのではないか。では、どうすれば、会費と行政からの補助金が増えるのであろうか。
会費というのは、会員となった一般市民から得られるお金である。会費を得るにはまず、会員になってもらわなくてはならない。会員になる動機となるのは、多くの場合、その団体の活動や活動理念に共感したからである。行政や企業についても同じことが言えるだろう。その団体の活動や活動理念が理解、評価されるから資金援助などを受けることができるだろう。つまり、一般市民、行政や企業の人々に市民活動団体とその活動に対する理解を得ることで、資金面の問題は解決されるのではないか。資金の問題を一般市民と企業、行政とに分けて述べていく。まず、一般市民について述べる。彼らには大きく二つのタイプに分けられる。市民団体の活動に興味はあるが、その情報を知らない人。知っている、知らないを別として、全く興味のない人。彼らの理解を得、市民活動へと取り込むにはどうしたらよいのか。
まず、一般市民について、前者の理解を得るためにはどうすればよいだろうか。
多くの場合、市民活動団体に、興味があってもその情報を持っておらず、全く気づかない、という現状がある。では、いかにしてこうした団体やその活動に目を向けてもらうか。
宇都宮市には、NPO法人であるとちぎボランティアネットワーク、行政機関の市民活動サポートセンターがある。これらは情報の仲介役として、市民団体、一般市民に多く公開されており、そこに行くと何でも情報は揃っている。しかしそれらの存在にさえ、無知な人は多い。この二つの機関が連携を取り、市民団体の情報を公開しながらも、自分らの存在をアピールしていってはどうだろうか。また、それらの情報に気軽に触れられる場所が、小スペースでもいいのでいたるところに存在するようであれば、目に触れる回数も増え、よいのではないか。
また、市民団体独自の広報も必要である。多くの団体は、月に一回、広報紙を発行するなど広報活動を行っているが、インターネット、講演会などを通じての広報活動というのも、もちろん、これまで以上に活発に行っていく必要があると思う。
問題は、後者への取り組みである。ボランティアや市民活動に特別興味を持っていない人は、目の前に市民活動の情報があっても何ら興味、関心を示さない。
では、どうやって興味、関心を持たせるか。市民活動団体の活動に対して興味、関心がないのなら、その人が興味、関心を持つ趣味の分野から取り込みを図ろう、というサン・カルチャークラブの活動から、大きなヒントが得られるように思う。サン・カルチャークラブは一般のスポーツクラブと異なり、“障害児も一緒になった子供たちの放課後を支援”という目的を持っている。はじめは、目的への関心や理解がなく、ただ純粋にクラブの講座や施設を利用したいという人を、スポーツという趣味を通じてクラブの目的を理解してもらい、こうした活動に取り込むことが可能となる。このような“趣味”を仲介とした、人が興味を持てる分野からの活動への取り込みというのも、今後、大いに期待できると思う。
さらに、もっと根本から人々の意識改革を、という場合に“教育”が大切であると思う。わたらせ未来基金が小中学校行っている「出前授業」は、子供たちに周辺の環境に対して問題意識を持ち、それを解決するにはどうすればいいのか考えるきっかけを与えるだろう。子供のころから、環境に対する問題意識をしっかり持って、大人になってそれをまた子供に伝えていく。即効性は期待できないが、そうした意識が着実に根をはるであろう。
では、行政や企業に対しての取り込みはどうだろうか。ボランティアや市民活動団体というのはその性質上、社会的な信用度が低く対外的な信用を得にくい。よって行政から「幽霊団体」と呼ばれるように、特に、法人を持っていない団体は全く話に応じてくれないケースが多いようだ。行政の理解を得るために、働きかけが特に必要であると考えられる。
例えば、とちぎ教育ネットワークの例をとってみる。彼らは、不登校やひきこもりに対する行政の考え方がますます子どもやその親を苦しめる傾向があるとして、現場に携わっている人たち(この場合、教育の分野における教員や教育委員会など)に問題を投げかけている。これがいわゆる行政への働きかけである。市民活動団体はそうした行政の性質を変える役目をも担う必要がある。それは行政の意識改革にもつながっていくだろう。実際、ドメスティックバイオレンスに無知だった検察官にドメスティックバイオレンスの全容を話したことによって、彼のドメスティックバイオレンスの理解を得、裁判に勝訴した、という事実もある。(ウイメンズハウスとちぎの中村さんの話から)
働きかけを、団体同士でネットワークを形成し、行っていけば、団体が個別に働きかけるよりもさらに効果的ではないかと思う。
このようにして、市民活動団体への働きかけが進むと、会員の増加、つまり会費の増大へとつながる。現在活動する市民活動団体は、その資金をもとに活動をより活発に行うことができ、サービスの質の向上や事業規模の拡大ができる。これは、利用者である市民からみても歓迎されることだ。また行政や企業に働きかけたことによって、資金面はもちろん、彼らの理解を得、これが、行政や企業の意識改革にもつながり、市民活動団体の活動しやすい環境というのが生まれてくるのではないだろうか。
[1] 宇都宮市民活動サポートセンターへようこそhttp://www4.ocn.ne.jp/~saposen/index.html
[2]特定非営利活動法人/とちぎボランティアネットワークhttp://ex.as.lancenet.or.jp/tvnet/
[3] NPO法人 南那須まちづくり研究センターhttp://www.machi-japan.com/npo/
[4] サン・カルチャークラブhttp://www2.ocn.ne.jp/~sunn/index.htm
[5] とちぎ教育ネットワークhttp://homepage2.nifty.com/tenet/