「国民が見る郵政三事業の行方」

 

 

 

目次

第一章      はじめに

第二章      郵便事業民営化のメリット・デメリット

第三章      郵便貯金民営化のメリット・デメリット

第四章      簡易保険民営化のメリット・デメリット

第五章 まとめ

 

 

 

 

宇都宮大学国際学部国際社会・文化学科3年

磯 加奈子

熊本 真一

鈴木 邦江

田仲 純子

中澤 匠 

 

 

 

    

はじめに

私達は郵政三事業の問題点を取り上げてみて、民営化に関わる問題の多さと複雑さに驚いた。どの問題も考えるべき必要がある重要なものであるが、私達はその中から郵政民営化のメリット・デメリットというテーマを扱うことにした。しかしメリット、デメリットは見方や立場によって多様に変化してしまう。そこで数ある選択肢の中から一番身近に感じられる消費者の視点を選んだ。消費者の視点から郵便局と民間のサービスを比較してみることにした。

 

第1章 郵便事業民営化のメリット・デメリット

第一節 信書における問題について

 現在、郵便事業において郵便局が独占しているのは「信書」と呼ばれる分野についてだけである。信書の定義はどういうものかというと、「特定の人に対して、自己の意思を表示し、または事実を通知する文書」である。旧郵政省が例として挙げているものに以下のものがある。

〈 信書に該当するものの例 〉

書状/納品書、受取書、請求書、見積書の類/願書、申込書の類/営業日報・月報等報告書の類/連絡・通知文書、指示文書の類/会合・催し物の案内状/ダイレクトメール/許可証、認定証、表彰状の類/クレジットカード/地域振興券/投票場入場券/添状、送状

*貨物に添付する無封の添状または送状は、信書に該当するが、貨物とともに配達することができる。

〈 信書に該当しないものの例 〉

書籍、雑誌/新聞/商品目録/小切手、株券/絵画

 

 郵便局以外でこういったものを配達した者、及びそれを依頼した者は「百万円以下の罰金、もしくは三年以下の懲役」という罰が与えられる。たとえば小包の中に「元気にしていますか?」と一言書いた紙を入れるだけで刑に処せられる可能性があるのである。

 信書に関する定義は曖昧であり、そのことをめぐっていくつかの問題が起きている。それを通して旧郵政省の問題点を見ることができる。

 一つ目は地域振興券に関することである。地域振興券は特定の人に送られるものであるがそこに書かれている内容は商品券やその他のギフト券等と大差がない。当時の郵政大臣は国会での答弁の際、「商品券は特定の人に送っても信書にはならない」と述べていたが、旧郵政省は「地域振興券は特定の人に送られるから信書になる」と述べていて、大臣と省で考え方が矛盾していた。 

 「地域振興券の交付」はかなりの量のものを短期間に配達しなければならないものである。そのため郵便局の通常体制では対応できない、ということで各自治体から民間の宅配業者に交付の依頼がなされた。しかし、結局は郵便局側から「民間の宅配を利用すると信書問題が生じる」とのクレームがあり、郵便局による交付が行われた。この覆しが適正なのかどうかは信書の定義がはっきりしない今は何とも言う事ができない。しかし郵政側のこの対応により、私達国民はサービス面やコスト面で不利益を被ったことは事実である。コスト面については民間が予定していた料金より高い料金で配達された。サービス面に関しても地域振興券は信書だということで窓口交付を行い、順番待ちの長蛇の列ができてしまった。

 チラシやカタログについても地域振興券と同じような問題が生じている。たとえば新聞に記載されてもおかしくないような広告の文書をある家庭に送ったとしても、旧郵政省は「特定の人に対して自己の意志や、事実を表示している」として信書になると述べている。元来、「広告、チラシ、パンフレット」というもの自体は特定の人に宛てたものではなく、広く一般の購買者向けに作られたものである。しかしこれに宛名を張ることで信書になってしまうのである。同じ物が新聞の折り込み広告として入れられた場合はどうなるのか、という質問に対しては「即答しかねる」ということしか述べられていない。

 これらのことから信書が郵便の独占であると主張するならば、どこからどこまでが信書なのかはっきりしなければならない。また私達国民にかかわる問題としては、旧郵政省の事業獲得のために私達がより良いサービスを選択する自由を奪われてしまう可能性がある。郵便と並ぶ通信手段の電話は既に民営化されて今も私達に満足のいくサービスを日々与えてくれている。

 そうはいっても、民間が信書分野に参入してくることが私達へのサービスの質が向上する、と単純に言えるものではないだろう。現在郵便事業にはユニバーサルサービス確保の義務が課せられている。そして前納制の全国均一料金制を採用している。ユニバーサルサービスと全国均一料金制によって、宛先によって異なる配達費用の取引コストを発生させることなく郵便サービスを低廉に提供できるのである。

 信書配達事業の法的独占が廃止された場合、信書配達サービスにも勿論、価格競争やサービス改善などが郵便局、民間が共に行っていくことになるだろう。しかし現在の全国均一料金のその「料金」は維持可能なものではないと言われている。そうなれば価格競争がはたらくといっても現在の料金よりさらに低料金で今と同じサービスを私達が受けることはできなくなってしまうのではないか。

 そして郵便局による郵便サービスの質の向上というのも今より大幅に上回るとも考えにくい。なぜなら郵便事業は郵貯や簡保と違い、一般財源からの補助は一切受けていない。つまり独立採算制による特別会計により企業的経営が行われているのである。現在も民間宅配便や情報通信産業からの競争圧力下にあり、郵便事業の経営効率化は進展してきている。よって信書配達におけるサービスの質的向上が見込まれないとすれば、郵便事業全般と併せてもあまり大きな効率化があるとは考えにくい。

 以上のことから民間の信書分野への参入が必ずしも私達に良い結果をもたらすとは言い切れない。しかし民間が参入するにしてもしないにしても信書の定義をはっきりさせることが今後の一番の課題であろう。

 

第2節 民間参入による郵便事業の活性化

近年、郵政事業は赤字に転落している。その理由として考えられるのは次の2点である。

@     旧郵政省が郵便事業について活発に手を打った。大口割引を積極的に拡大し、結果単価が下がっていくという施策を実施した。そのため今までと同じ数量を売り出しても、収入は減っていく。

A     民間との競争のため、様々なサービス改善を行っている。しかしサービスアップはすべてコスト増を伴っていて、それに見合うコストダウンはできていない。

1998年度は625億円の赤字である。これをどうにかするために、おそらく郵便の独占分野である信書域での料金値上げが行われる可能性がある。割引が行われること、多様なサービスが行われることは私達国民にとってはよい事である。しかしそれに伴う郵便事業の赤字の穴埋めは結局国民の税金、郵便料金の値上げ、という形で私たちに跳ね返ってくるのであれば、結果的に望ましい改善とはいえないだろう。

次に宅配便のシェアについて、チルドゆうパックを例にとると「冷やしたまま送る」というサービスではヤマトの「クール宅急便」が全体の8割。郵便のチルドゆうパックは約1割。そして日通のペリカン便もまた約1割、というシェア率になっている。「チルドゆうパック」に関して旧郵政省は民間と提携している。集めることはそう難しくないが、ネットワークや設備投資はあまり得意ではないという民間業者は「配達は郵便」に持っていってもらっているところもある。(それを含めて約1割)

「民間でもユニバーサルサービスを展開できるのか」という点について、 旧郵政省は「独占領域(信書)に民間が参入した場合クリームスキミング(いいとこ取り)が行なわれ、その結果ユニバーサルサービスの維持が困難になり、過疎地の郵便局は撤退する」という。現在持っているネットワークを強みにするどころか過疎地は切り捨てる、という考えなのだろうか。過疎地までをも配達しているのは、国営だからできることで、民営化すれば、利益の望めない過疎地や弱者を切り捨てることになると言っている。しかし、民営化にしてどうしても利益がでない地域などには、国が民間に対して優遇措置をとればいいように思える。

実際、ヤマトのサービスと郵便のサービスを比較してみると、郵便配達が行なわれていない場所がいくつかある。(「郵政民営化論」民間参入による郵便事業の活性化 ヤマト運輸株式会社 代表取締役専務 越島氏の談話より)それに対して、そのような地域にはヤマトが採算は合わないが配達に行ってくれる。過疎地や遠隔地を含めた全国ネットワークがあるということ、それがヤマトの強みである。この現状から、少なくても、郵便が民間にまかされても配達は確かに行なわれるといえるだろう。

「全国一律の郵便料金」は旧郵政省側がいう「官業の利点」であるが、これは民間でも当然のことのようだ。重くて大きな荷物と違ってハガキや封書は小さくて軽い。だからトラック一台にそれなりの量が積め、距離によってコストそのものはほとんど変わらない。逆に行き先別に運賃計算を行なわなくても済むので効率的である。 

 ポスト投函体制についても民間は対応する心構えはできている。全国にあるポストの総数は17万1千本である。それに対しヤマトの宅急便取扱店は全国で30万店ある。これらそれぞれの取扱店にポストの役割を果たすものを設置すれば良い。加えて切手による前払いシステムについても封筒などの販売などを考えているらしい。

国際郵便に関しても民間は郵便の低料金にとても太刀打ちできていない。そしてこの分野に関して郵便局の収支はいつも黒字である。郵便事業が民営化されてもヤマトはこの分野に参入するかどうかは未定だという。

 

第3節 郵便局側の視点

郵便局は1870年以来、国民の通信・輸送システムを担うものとして現代までその信用を培ってきた。手紙などを街角にある赤いポスト、または郵便局の窓口に投函、提出すれば必ず受取人のもとに届くというのはもはや常識であり、歴史の中で生まれた国民の郵便局への信頼の証である。利便性という点では、郵便局は全国3,252市区町村すべてに設置してあり、国民と郵便局間の平均距離は、公的機関の中で最も近い1.1kmとなっており、国民に最も身近な国の窓口機関として定着している。加えて、ポストの数は17万1千本で、郵便局はその設立以来、これらの窓口を広げ、それらを介して国民の生活インフラとしてのネットワークを広げてきた。それは地方の、特に山間辺地における特定郵便局も含めて、全国に展開する巨大な通信・輸送ネットワークともいえ、郵便局はそれを維持しながら全国均一料金による国民が利用しやすいシステムをできるだけ安く提供してきた。民営化された場合、整理・縮小によるサービスの低下や料金格差の発生などを始めとしたネットワークの崩壊のおそれもある。すべての国民に平等に利用されることが前提であった筈で、郵便事業の生活基盤としての機能にも大きな障害が生まれる可能性がある。

郵便事業民営化の際のメリット・デメリットという視点の中で郵便局はネットワーク崩壊の危険性を示唆している。地方の、特に山間辺地における特定郵便局も含め、全国に展開する巨大な通信・輸送ネットワークは生活インフラとしての機能を果たしていた。しかし、今日では様々な通信手段、輸送手段が国内外を問わず行われている。日本においてもその傾向は明らかであり、インフラとしての機能を果たしていないとまではいかないが、民間企業の発展や通信・輸送技術の発達によりその価値が問われている。それは、郵便局が他の民間輸送会社と同じ市場論理の下で競争にさらされた場合、地方における郵便局の整理・縮小が行われ、今まで「国営」の名のもと維持されてきたネットワークが崩れるというものである。

 

4節 考察

国鉄をJRにして鉄道がなくなったり、また電電公社をNTTにして電話がなくなったのかというと答えはノーだ。JRとなって、職員の質やサービスが下がったという人はいないであろう。NTTとなって、通信のタイプが多様化し、料金が下がる傾向は、今でも続いている。民営化によるサービスの向上を無視することはできない。郵便事業における民間企業の参入は私達国民に新しいサービスをもたらすことが予想される。

 

第2章     郵便貯金民営化のメリット・デメリット

第1節 郵貯をめぐる状況

 郵便貯金は1876年貯蓄奨励の目的から始められた。1891年以降、小口の小額貯蓄の手段として、ほぼ小口の消費者を相手に経営してきた。

2001年度3月末現在で郵貯の総額は約250兆円にのぼった。これら巨額の郵便貯金はこれまで旧大蔵省の資金運用部に委託され、財政投融資という形で公共事業などに使われてき

図1  銀行による個人預金の割合

                  銀行などの値は平成12年度末、郵貯は13年4月資料:日本銀行「金融経済統計月報」と総務庁調査

た。しかし1997年の橋本内閣による行政改革の中で郵便局は2003年の公社化が決定され、資金も2007年までに全額自主運用へと移行する予定である。郵貯事業は公社化することで資金運用面を中心に体制の改善が行われている。ここでさらに踏み込んで民営化を論ずるのは「民間でできることは民間に任せる」という行政改革の目的をさらに徹底しようとするものである。仮に民間が公社と同等もしくはそれ以上のサービスができるならば公社を民営化したほうが財政上好ましい。そこで消費者の目から見て「メリット・デメリット」を考えながら民間と公社を比較したい。

 

第2節 郵貯と民間金融機関との比較

 金融機関は預けていて安心であり、気軽に利用しやすく、自分の望む商品があるというのが基本的なニーズではないかと考えた。そこでこのニーズを@安全性 A利便性 B金銭利益と分けて一つ一つ取り上げて考えたい。

一つ目の「安全性」は預金はどのくらい確実に返ってくるのかとどれくらい健全な経営ができるかで比較する。二つ目の「利便性」は消費者の利用しやすさと捉え、特に店舗までの距離とネットワーク性に絞って考えたい。最後の「金銭利益」は利子率や預金システムなどの商品性を中心に比較した。また今回は税金面での損得も大きな意味での「金銭利益」と捉え利益に含めた。

 預金の返済について、銀行では預金は全額返済できるよう預金保険制度(*1)に加入したり、不良債権が出た場合に備えて「準備金」という蓄えを用意することが義務付けられている。預金保険制度によって預金している金融機関が破綻しても別の金融機関に預金が引き継がれたり直接払い戻しがなされるので預金は100%保証されている。これに対して郵政公社は預金保険制度には加入していない。そのかわりに国のバックアップがあるので、おそらく万が一の時は税金の投入などが行われるためこちらも100%保証されているといえる。

*1・・・預金保険制度は、預金者を保護する制度で預金をすると自動的に保険関係が成立する。この制度は政府、日銀、民間機関が出資して設立された預金保険機構によって運営されている。                       

次は経営の健全性について考えてみたい。

健全性の確保のためにはリスク管理体制及び貸出審査体制の強化、不良債権の早期処理、などが挙げられる。

 リスク管理体制と貸出審査体制について栃木銀行でのインタビュー結果から考えたい。 

表1  インタビュー結果

1、銀行の情報公開はどうなっているか

・・・・・・ディスクロージャー冊子を発行している。これはほかの銀行も同じ。

逆に情報公開がなければ信用性にひびいてしまう。

2、銀行にとって郵便局が預金限度額を1000万円にしているのは高いですか。

・・・・・・あまり興味がない。現在は資金を集めることよりも出資先を見つけるほうが困難3、資金運用は難しいですか。

・・・・・・難しい。例えば土地担保の査定一つとっても同じ面積でも立地条件によって価格は違う。資金の運用について人材は非常に時間と労力がかかる。またこの不良債権のためにいつも準備金を用意しておかなくてはならない。

4、不採算地域に店舗を出す可能性はあるか?

・・・・・・銀行のネットワークは大事だが、不採算地域に引きずられて本店が倒産してしまうこともある。

インタビュー結果と話を聞いた感じから、資金の運用にもっとも苦労するということが分かった。担保を査定したり、投資先の情報を常に整理し投資の是非を判断するのは専門技術を駆使することになり、その方針や能力が健全性をあらわす指標となる。民間銀行では運用リスクの扱いを経営上の重要課題と位置付けたい制の充実・強化に勤めている。これに対して郵便局はどうであろうか。郵便局の話では2,3年前から公社化にむけて自主運用の準備をしているということである。郵便局の資金運用能力はまだ分からないが「資金運用」の是非が民間にとっても公社にとっても運営上重要な要因になる。

そして資金運用など消費者にとっての選択肢を増やすのが銀行側の情報公開である。現在銀行でも郵貯でも情報公開のための冊子を発行している。経営の指針から現在の経営状況、そして不良債権の額なども載っている。冊子を発行することは経営の健全性をアピールすることにもつながる。逆に発行できなかったりあいまいな内容だったりすれば消費者に不安感を抱かせることにもなる。金融機関同士の競争が高まることは情報公開の透明度を上げる効果もつ可能性がある。

銀行側の情報公開は消費者のチェックがはいるが、それとは別に「監査」としてのチェックがどれだけはいるかというのも安全性に関わる問題である。現在民間の銀行はすべて金融監督庁の監査下にある。これに対して郵貯は監督当局の監査外である。そのため郵貯は独自に民間の外部監査を行っている。

表2 欧州主要国における監督体制

国名

機関名と性格

監督機関

イギリス

National Savings  公社

大蔵省外局の国民貯蓄庁

ドイツ

Post Bank     株式会社

連邦銀行監督局

フランス

La Poste            公共企業体

大蔵省の監督

資料:『郵便貯金に関する私どもの考え方』 全国銀行協会

銀行側は郵貯も監督庁の管理課に置かれるべきだと主張している。確かに同一の基準で監査を受けることは公平であるし消費者にとっても比較しやすい。

 

 次に利便性について考えてみる。郵便局は幅広く分布し、偏りが少なく数も多い。

自宅から近いところに局(店舗)があるというのは利便性の面で大きなメリットである。

しかも全国的に展開しているので例えば旅行などに行って急遽お金が必要になったときなどは大変便利である。これに対して民間銀行も郵便局のATMと提携という形で全国ネットワークを築いている。しかし、いわゆる田舎では近くの店舗は郵便局だけというところも多い。ATMだけでは補いきれない業務も多いので店舗を構えてあるというのは消費者にとっては好ましいのである。しかし銀行は「現時点では不採算地域に出店する予定はない」とという方針だ。不採算地域に引っぱられて本店の経営が難しくなることもある。人と人というネットワークの面で郵便局は伝統的なつながりを築いている。そのため郵貯民営化を考えるときもこのネットワークをどう生かすのか、民営化しても生かせるのかが重要な点になる。

 最後に利益について、利益性は一重に商品のよさにある。その代表格といえるのが郵便局の定額貯金である。その特徴は6ヶ月以降は自由に解約でき、半年複利、金利は一度設定したら変動しないので金利が高いときに申し込めばその金利が最長10年間保証される。バブル当時は利率が6%前後という高金利であった。この当時定期貯金を申し込んだ人は満期になって元金の2倍近くになったケースもある。

表3 定額郵便貯金

預入期間

6ヶ月以降自由満期、最長10

利率

預け入れ後の利率は変わらない

付利方法

半年複利

『郵便貯金のご案内』 関東郵政局貯金部営業課

しかし定額預金は国の信用や税金の免除あっての商品であり、例えば半年後から解約できたり高い金利を維持することなど「民間ではできない」と郵便局でも銀行でも言われた。では税金面を見た場合郵貯はどれほど免除されているのだろうか。

税金の面を見ると今年は年間約4000億円が各種税や保険料の免除によってういている。

税金という形で吸われるが良い商品性である定額貯金を支持するか商品としては定額貯

 

表4  郵貯の特典と思われる項目

 

内容

税金面

法人税、住民税、印紙税、事業税、固定資産税等の免除

信用面

国営というブランド、預金などの保険料免除、運用リスクなし

 

表5  「官業としての特典」に関する試算

年度

95

96

97

98

99

経常費用としての税

1863

1219

1701

1337

1285

預金保険料

1660

1793

1889

2021

2122

準備預金相当分の運用利子

847

847

698

514

607

法人税・住民税

3021

4540

750

0

0

免除額の合計

7391

8399

5038

3872

4014

45共に資料:『郵便貯金に関する私どもの考え方』 全国銀行協会

金に劣るが明快な商品性を支持するかは個人の判断によるところが大きいと思われるが

大きな囲いで金銭利益をみると公社も民間もあまり差がないといえないだろうか。

 

第3節           考察

 民間金融機関と公社を比較してみて、まず安全性について、郵貯がもつ国の保証は依然として私たちに安心感を与えてくれる。しかし、注目したいのは民間も安全性について十分に考慮しているということだ。特に民間でも預金は保証されているということは意外に知られていないように思う。また、郵政公社化によって資金の自主運用が始まると運用の合理化といういい面とともに運用リスクが発生することになる。健全な運用は民間にも公社にも求められる。情報公開はどちらの機関でも積極的に行われている。公社の監査制度については考える余地が残っていると思われる。より公平さを目指すためすべての金融機関は一律の検査基準の下で監督されるべきだ。

 利便性について、ネットワークの維持が問題になる。この問題は郵便事業でも触れたが、郵便局のもつ生活インフラのような全国に展開するネットワークは崩壊させるのはもったいない。ネットワークが公社でなければ存続不可能ならば郵政民営化について考え直さなければならない。郵便局の全国ネットワークはそれだけ価値のあるものだと思う。

 最後に金銭利益について、特に税金の免除について触れたい。郵貯の民営化を考える際に国家財政の得を抜きにしては考えにくい。もし税の免除がなくなり逆に郵貯から税

を払ってもらえれば国の財政は出費を減らして収入を増やせるという2倍のメリットになり、国家財政は今までより潤うことができる。

 

4章     簡易保険民営化のメリット・デメリット

第1節      簡易保険を巡る状況

 簡易保険は大正5年、まだ生命保険事業が十分に発達していない時代に民間生命保険会社が取り扱っていなかった小口保険を提供することにより、生命保険の恩恵に多数の人が浴することを可能とすると言う社会政策的目的から創設された。

 平成12年度の保有保険金額(個人保険分野の保障総額)のシェアは簡易保険12.2206兆円、農協14.2240兆円、民間生命保険73.61,244兆円である。総資産においては、簡易保険は122.6兆円、民間生命保険業界第一位である日本生命の個人保険分野において32.4兆円である。これらにより、簡易保険は総資産が大きく保有保険金額が小さいことから貯蓄性を、民間生命保険は逆に総資産が小さく保有保険金額が大きいので保障性を特色としていることが分かる。この点をふまえて、消費者の立場から簡易保険民営化を考えたい。

第2節      簡易保険と民間生命保険

 簡易保険の主な特色は身近な郵便局を通じ全国あまねくサービスを提供できる・加入にあたり医師の診査は不要(無診査)・職業による加入制限がないなどの手軽な加入、保険金・貸付金は原則即時払い・非常災害時における非常即時払い等の入院・死亡・その他急な資金需要、保険金の支払いに対する国家保証と言う安全性である。

平成12年度の簡易保険新契約種類別加入状況を見ると、養老保険分野が全体の8割を占め、その中でも普通養老保険が総計の5,756件中2,59745.1%を占めている。このことから、簡易保険に対して消費者が求めているものが貯蓄と保障を兼ね備えた養老保険(保険料払込期間中、一定額の死亡保障があり、満期を迎えた場合にはその死亡保険金と同額の満期保険金が受け取れる保険)であることが分かる。これに対して、日本生命では平成13年10月の商品別保険資料請求数の第一位から第5位までを終身保険(被保険者が死亡または高度障害となった時にのみ保険金が支払われる死亡保険の一種。同じ死亡保険である定期保険とは異なり保障が一生涯続く)と医療終身保険(入院や手術などの医療保障を一生涯行う)が占めており、同じ個人保険と言っても保障性の高い商品が特色となっている。従って、消費者は保険の加入に際して保障内容や保障金額を個人に適した検討を行うものであるので、一概に簡易保険及び民間生命保険のどちらの商品が良いと判定することは難しい。

 

第3節      簡易保険がうける理由と民営化によって考えられること

民間生命保険の平成12年度保険金額別新契約状況(件数占率)は簡易保険の限度額以下である1000万円以下が73.1%である。郵貯・簡易保険問題に関する金融団体中央連絡協議会の言う簡易保険の国営事業としての存在意義はなくなっているとする主張は一理ある。郵便局の普通養老保険と、日本生命の「ニッセイ養老保険EX」と言う商品を比較してみたが、内容説明は同じであった。民間生命保険で十分に対応し得る小口保険があるにも関わらず、ここ数年間において簡易保険の新契約状況が安定している理由は何であるのか。それは第二節で挙げた特色に加え、解約時の払戻金の差にあると考えられる。養老保険に加入する消費者にとって、この保険の意義は保障のついた貯蓄(貯蓄が優先)であると筆者は考える。手軽な保障は欲しいが、お金はもっと欲しい。そう考えれば、資金需要と安全性、解約払戻金の金額はとても重要なものである。民間生命保険においても資金需要に対する制度として契約貸付制度があるが、即時性はないと聞いている。また、解約払戻金については簡易保険を解約した際に、払込保険料の合計より少ない程度が払い戻されたと言う例がある。これに対して、民間生命保険の解約払戻金は少ないものだと言う。加えて契約年数が少ない場合には解約払戻金は全くないかごく小額になる。(具体的数値については日本生命に問い合わせたところ、ケースによって異なると言うことで回答が得られなかった。)

次に、安全性について考えたい。生命保険主要10社が11月28日発表した2001年度決算の上半期(4月から9月)9月中間報告によると、契約者に約束した支払い保険金額の合計を示す保有契約高(個人保険・年金ベース)は9期(4年半)連続で減少した。昨年度まで続いた生保破綻の余波や、今年前半の予定利率(契約者に約束した保証利回り)引き下げ論による契約者の不安などを背景に、生保離れに歯止めがかからなかった。株安の影響も大きく、支払い余力を示すソルベンシーマージン比率は全社で低下し、これは生保の信用力の低下を暗示し、生保を取り巻く環境は厳しさを増している。大手7社合計の新規契約では、2.5%減の471210億円で、一方で保険の解約・失効額が3.4%増の51229億円と新規契約を上回る状況である。

生命保険会社の経営が破綻(はたん)した場合、契約者を保護する仕組みとして「生命保険契約者保護機構」が創設された(平成1012月発足)。経営破綻の際には、破綻保険会社の契約は救済保険会社または保護機構に移転され、契約は継続できる。保証限度は積立金の90%(20013月までは、特例として生保の死亡保険金は100%保証)。注意が必要な点は、破綻時点の積立金の90%が保証されるだけで、将来の支払金額が保証されるわけではないところにある。契約継続に際して、予定利率が引き下げられた場合、当初の契約よりも受取額が減少する。このように、契約時の予定よりも受取額が減ってしまう可能性を秘めた民間生命保険の不安を考えると、国家としての信用力(国による保険金・年金等の支払い保証)は消費者にとって簡易保険の大きな魅力と言える。この信用力を持って民営化し、将来的に限度額の制限が取り払われた保障性の高い商品が登場するならば、保障性を重視する消費者にとっては先行き不安な民間生命保険よりも将来性のある簡易保険の民営化に期待が高まるであろう。

 

第4節      考察

 簡易保険にとっても民間生命保険にとっても、今後の消費者の保険選びの動向が重要になる。保険料は一生のうち、家の次に高い買い物と言われる。最近では保障と貯蓄を切り離して考え、貯蓄は銀行へ、保障は共済へと分割する志向もあると言う。従って、現時点での簡易保険の保障性と貯蓄性と言う特色が将来的に利用者にとって魅力にならなくなる可能性もある。

民営化によって、具体的に簡易保険にどのような変化が現れるのかはまだ見えてこない。利用者にとって、特色が変わらないのであれば簡易保険が公でも民でも変わらないと思う。それならば、政府の国庫負担を軽くするため、民営化してしまうのは合理的に思われる。

 

第5章     まとめ

1節 まとめ

 消費者のメリット・デメリットを中心に考えてみて、まず郵便事業については信書とユニバーサルサービスについて触れた。信書については信書の定義が曖昧であるため問題が出てきていた。まずはその定義を明確にすることが必要である。この定義は信書をどこまで

民間に開放するかということであり、ヤマトなど大手は全国均一料金でやれるといっている。また民営化を軸にした郵便事業の改革の中ではまず、「ネットワークを保つ」思考から「ネットワークを生かす」思考への転換という郵便局の姿勢の改革も行うべきである。そして民間企業の参入という変化に郵便局も新しい変化を必要としている。それが郵便局、ひいては国民全体に大きな利益となるものを生み出せるのではないか。しかし、インフラとしての郵便事業を見直すならば、電気、電話会社と同じく「供給の義務」を負わせることが必要になってくる。民間輸送企業を含めた郵便事業を行うものに対し、供給責任を課すことが出来ればネットワークの崩壊は避けられる。全国の郵便機能がストップすることなくインフラとしての機能が果たされると思われる。また、人口が極端に少ない地域においては郵便局と民間輸送企業が協力することもありうるだろう。そうすることで互いにコストダウンを図り、ネットワークの維持に努める方法もあるだろう。また、それを還元し、一律料金を保つことも考えられる。もしくは料金格差をできるだけ少ないものとするために両者の棲み分けが自然に行われることもある。また、法によって、郵便局に一部独占を認めるなど、何らかの対策がとられる可能性もあげておきたい。これらの点においては、郵便と民間輸送企業双方、特に郵便局には、努力と歩み寄りの姿勢を要するが、民営化するとなれば企業努力、同業企業との関係などは十分考慮されるべきところである。そういった何らかの対策なしにあれだけ巨大なネットワークを維持しようとする方が無理なのではないかと思われる。

 

2節 これからの郵政事業

具体的に言うと、現在三事業に限定されている郵便局のサービスを、計画的かつ効果的に拡張する。今現在の郵便局に「付加価値」をつけることで、国民に郵便局の新しい価値を見出させる。そうすることで国民と郵便局の距離をまた近づけることはできないだろうか。郵便局が登場した当初は国民の生活インフラとして機能していたことは先にも述べた。だから、郵便局が国民の生活基盤となるべき機能を再び手にすることが、郵便局の次なる道へとなる可能性のひとつだといえる。

例えば、無店舗販売事業との提携の拡大、もしくは直接参入することがあげられる。全国的ネットワークを生かして新たな商品の開発を行ったり、少なくとも現在ある「ゆうパック」とは違った色合いの経営政策が求められるが、消費者、経営双方のメリットになるだろう。また、現在の郵便局に民間の銀行や保険会社が提携して共同経営してみるのはどうだろうか。採算の取れない地域の郵便局はそれを扱う企業もしくは公社として分割して運営するのだ。その経営内容は各銀行や生命保険の商品販売の仲介をする。さらに、政府の広報や運転免許の交付、住民票の配布などワンストップ行政の仲介も行う機関になる。

全国に広がったネットワークは非常に重要なものである。

そして地域に根ざした活動もさらに増やしていく方向性を持つべきだろう。今現在も「地域参加」という名目で各種祭事への団体参加などをしているが、これをサービスの領域で行えば地域に貢献することもでき、また地域住民への大きなアピールにもなるだろう。福祉や情報という地域特性の強いカテゴリの中の事業を選択し、地域との距離をより近づけ、密着させることで「地域になくてはならない郵便局」としての存在の新しいあり方を求めなくてはならない。全国的ネットワークと地域的ネットワーク、この二つの異なった繋がりを生かす、そしてさらに強めることで郵便局の価値を高めることは大いに可能だと思う。

 

参考文献

21世紀.を展望した郵便局改革ビジョン』 郵政審議会

『図解 行政改革のしくみ』 東洋経済新報社

『小泉純一郎の暴論・正論』 

『郵政民営化論「日本再生の大改革」』 小泉純一郎・松沢しげふみ   PHP研究所

参考ホームページ

大串正樹のホームページ http://www.jaist.ac.jp/~ogushi/

生命保険協会のホームページ http://www.seiho.or.jp/

総務省のホームページ http://www.soumu.go.jp/

栃木銀行のホームページ http://www.tochigibank.co.jp/

郵政事業庁のホームページ http://www.yusei.go.jp/