地域コミュニティー・まちづくり

                    『宮まつり』におけるコミュニティー

                     ―栃木県宇都宮市―

 

                       2000.12.2SAT

                     行政学ジョイントゼミin館山

                    宇都宮大学 中村研究室

                         辻裕介・宮田弘美・リザ

 

 

 

            

 ≪目次≫

 

―はじめに

1.『宮まつり』とは?(*1

           (1)成り立ち        (3)まつりの主旨

           (2)社会的背景・きっかけ  (4)経緯

 

 

2.調査報告・諸問題

  【市役所編】(*3) 

                     (1)連携          (5)マンネリ化

2)補助金         (6)アンケート 

3)住民の熱の差      (7)問題

4)パレード 

【警察編】(*4

           (1)当日の警備体制

           (2)交通規制・時間延長について

           (3)問題

          【商店街編】(*5)

           (1)『宮まつり』への取り組み  (4)過去の事件

           (2)露天商との話し合い     5)問題   

3)時間延長について

【宇都宮観光コンベンション編】(*2

(1) 井沢氏の回答

(2) 企画会議調査結果

(3) 問題

         【宇都宮青年会議所編】(*6

(1) 市民アンケート調査

         【企業(NTT東日本栃木支店)編】(*7

           ()宮まつり担当 臼井氏の回答

      

       3.『宮まつり』の今後、意見

 

 

       ***補足資料***(祭りの国際比較)

 

 

―はじめに

   「宇都宮市の政策のなかで、地域に密着したものは何か」、と考えたとき、私たちが最初に思いついたのが、この『宮まつり』である。毎年8月の第1土・日の2日にかけて行われるこの祭りは、今年で25周年を迎えた。地域イベントとしての祭りでは、市役所・警察・学校・企業・自治会(町内会)・商店街・消防等が協力し合いながら、住民とともに、祭りを盛り上げている。そうしたなかで、これらの諸要素が、どのような形で連携をはかって祭りに参加しているのか、どのようにコミュニティーが形成されているのか、そして祭りの現状や課題・将来の展望などについて、実地調査をもとに、自分たちなりに考察していきたい。

 

   (注)便宜上、実地調査機関・日時・担当者等については以下のように省略する。

     

*1

10月11日

宇都宮市役所、観光コンベンション協会

伊沢氏

*2

10月26日

観光コンベンション協会(次年度会議)

 

*3

11月14日

宇都宮市役所商工部商業観光課

大林課長補佐、今井観光係

*4

11月15日

宇都宮中央警察署

剣持課長

*5

11月17日

商店街組合

館野副会長

*6

 11月17日

宇都宮青年会議所

 

*7

11月20日

NTT東日本栃木支店

 臼井氏

 

 

1.『宮まつり』とは?(*1をもとに)

1      成り立ち

     1976年(昭和51年)

→“宇都宮青年会議所設立10周年・市制80周年”記念行事

  一回限りの予定。青年会議所主催。テーマ:出会いとふれあいの広場。

 

2      社会的背景・きっかけ

@     市民相互の「心のふれあいの場」の減少

   交流の場を提供し、市民の意識高揚を図ろう、という市の考え

A     歩行者天国全盛期

   ()市民アンケート「大通りを止めて、何かできないか?」

    →(回答)市民の要望:9割強「市民(住民)参加型の祭りを!」

B     市街地の交通規制反対派との交渉(cf2:市役所)

   約3年におよぶ会合・説得の繰り返し 

 

 

3      まつりの主旨

      社会開発活動としての“祭り”を通して、心のふれあい・人の輪を

      「神事」ではなく、「市民参加」の祭り

      目的:郷土文化の向上、明るい豊かな地域づくり

 

4      経緯

     1で得られた資料・情報をもとに作成

     宇都宮市役所提供

「地域イベント70-75」、『ふるさと宮まつりの経緯』、「H12実績報告書」

      

西暦

昭和・平成

動き(推進委員会・市民・イベント)

1973

  S48

 

   市民アンケート・交通規制話し合い

1976

51

1

宇都宮青年会議所の単独運営

1977

52

2

事後アンケート「まつり継続希望」9割

1978

53

3

実行本部に青少年団体連絡協議会参加

1987

62

12

開催委員会の見直し

 

 

 

    ・出向体制

 

 

 

    ・参加団体→部会ごとの助成金

1991

   H 3

16

企業・商店街「協賛イベント」開始

1993

5

18

“神輿”数で日本一記録

2000

12

25

25回記念:(市)補助金500万円増

 

 

 

過去最高の観客数:2日で55万人

 

 

2. 調査報告・諸問題

【市役所編】(*3) 

     (1)連携…中心は?市役所の位置は?諸機関のつながりは?          

2)補助金…第23-25回までの推移。次年度は?使途は?          

3)住民の熱の差…距離的なもの、世代間によるもの、能動・受動      

4)パレード…親・学校からの苦情・不満の声は?

5)マンネリ化

6)アンケート…回数・時期、内容

7)問題…モラルとゴミ

 

 

 

【警察編】(*4

1)当日の警備体制…人数の推移、報酬の有無

2)交通規制・時間延長について…警備側からの意見

3)問題…不満(住民・現場の警察官)

 

  【商店街編】(*5)

     (1)『宮まつり』への取り組み

     (2)露天商との話し合い…どんな取り決めがなされるのか。円滑か?       

3)時間延長について

4)過去の事件…火災。場所取り(露天)にからむ抗争。

5)問題…ゴミ、大通りの汚れ 

 

【宇都宮観光コンベンション協会編】(*2

1)主催者である宇都宮観光コンベンション協会 井沢 敬一氏より

@宮まつりの内容・日時・開催エリアの決定の仕方について

       月一回の企画会議        運営委員会        総会

       年度ごとのまつりの反省と     企画会議の     4050名の会議議決

       改善点・次のまつりの討議     案の討議      最終的決定権を有する

   

 企画会議参加者       運営委員会参加者     総会参加者

              実行本部長       宇都宮観光コン代表者    企画会議参加者

          宇都宮青年会議所理事長      自治会連合代表者     運営委員会参加者

             実行副本部長       商工会議所代表者       宇都宮観光コン協会会長

          宇都宮市青団連協議会      商店街連盟代表者      宇都宮観光コン協会副会長                 

宇都宮青年会議所     青団連協議会代表者       宇都宮市自治会連合会長

              みこし部会        青年会議所代表者      宇都宮商工会議所福会頭

パレード部会       みこし代表者         宇都宮市商店街連盟会長

郷土芸能部会        パレード代表者        宇都宮市青団連協議会長

おはやし部会       郷土芸能代表者        宇都宮青年会議所代表者

おどり部会        おはやし代表者      参加団体代表者

和太鼓部会        おどり代表者

                         和太鼓代表者

                         山車代表者

                         新規参入種目代表者

 

               上記参加者たちがふるさと宮まつり開催委員会として宮まつりの中心的活動を行う。

 

     A自治会を通しての市民からのまつり開催の寄付に対する市民の反応

 

     連合自治会       第一回ふるさと宮まつり終了後のアンケート調査の

        集まった     中で、まつり資金調達方法は全市民のまつりなので

        寄付金      自治会が中心となり募金という形で集めようという

     各自治会        案が出され、まつりを全市民の輪に広げようという

                 意見が目立った。

        寄付

      市民

   良好

 

B他の団体とのつながり

       警備担当の宇都宮市中央警察署から当日の警備、注意事項に関して実行委員会に

      連絡がある。

       それをもとに、各参加企業、学校、自治会などに連絡がされる。

       総会時には各参加団体の代表者も会議に出席し、ふるさと宮まつりに関する

      討議が行われる。

 

      C現状での井沢氏の考える宮まつり問題点

人員不足、ゴミ問題      

 

2)第1回『2001年度ふるさと宮まつり』企画会議調査結果について

@部会ごとの提案

<パレード部>

少子化⇒パレード難⇒より多くの学校参加希望

 

 

 

 

 

(写真:宇都宮市ホームページより)

<おはやし部>

           1日目におはやしの安全祈願を希望

           2日目におはやしを開催

 

<みこし部>

明確なプログラム作成の必要性、無許可団体の浸入の防止

 

<おどり部>

          神社まで範囲を拡大

          日曜      土曜に変更希望      一度も変更ならず

         *変更希望理由

           おどり部の8〜9割が企業の社員であり、ほとんどが宇都宮市外(JRNTTなど)

の企業からの参加のため、翌日の仕事に影響が出るから。

  

<和太鼓部>

           号令小さい、目立つところで号令

 

A今会議で出された問題点

          まつりの時間延長及びエリアの拡大

 

 【宇都宮青年会議所編】(*6

1)第1回ふるさと宮まつりアンケート調査

2,500人にアンケート用紙を配布し、2,053人から回答(回収率82,1%)

性別 男性―36%、女性―64

年齢別 10代―25%、20代―3%、30代―40%、40代―30%、50代以上―2

まつりを見た人―67%、直接参加した人―3%、まつりを見なかった人―29

 

2)アンケートの質問事項

@まつりに対する評価

大変良かった―36%、良かった―40%、普通―18%、良くなかった―4%、

大変良くなかった―2

Aまつり継続について

         継続希望―96

B何年ごとに開催したらよいか

         毎年―53%、1年ごと―20%、3年ごと―15

C開催時期

         8月―78%、7月―7%、10月―5

D開催期間

         3日―46%、2日―44%、1日―4

E時間帯

         夜―55%、一日中―23%、昼間―11

F会場としての大通りは適当か

         適当―79%、不適当―19

G広さ

         もっと広く―66%、適当―31%、もう少し狭く―1

H交通規制を知った手段

         市制ニュース―30%、新聞―27%、チラシ―13

       Iまつりの演出

          良かった―48%、普通―45%、良くなかった―5

       (以上、昭和51年の栃木新聞、下野新聞及び宇都宮青年会議所発行物より)

 

*第一回目のアンケート結果であり現在の市民の意見は不明だが、本部や警察に

苦情などがあまりないことから市民の意見もさほど変わっていないように思われる。

 

  【企業(NTT東日本栃木支店)編】(*7)  

1)まつりに向けての 練習開始時期及び練習方法

      練習開始時期:宮まつり事務局から6月ごろに募集がくる⇒7月ごろから練習開始

        練習方法:前回のまつり参加時のビデオを参考にしたり前回のまつり出場者が新人を指導 

             ⇒各職場ごとに昼休みなどを利用し、個々に練習

 

      2)宮まつりの社内での参加人数

      毎年280名ほどを目標に社内で募集(各企業の平均参加人数は200〜300名)

 

3)市役所からの宮まつりに関する指示について

 市役所⇒宇都宮観光コンベンション協会⇒会議の参加連絡を受け、会議に出席

 

4)警察からの宮まつりに関する指示について

       警察⇒開催委員会⇒各企業に注意事項の連絡あり 

 

 

3.『宮まつり』の今後、意見 

今、現在において宮まつりに関しては様々な問題点がある。例年の不況による補助金や

協賛金といった資金は減少している。第一回の宮まつり企画会議で出された時間延長とエ

リア拡大において宮まつり企画参加者の中では両方において望む声が強かったが、市民は

その両方においてあまり強くは望んでおらず、警察の方でもそういったことを新たにする

のには、市民の望む声が強まれば、警察も検討するといっており、市民がこの問題のカギ

を握っているともいえる。なにより企画参加者の意見が十分に市民に伝わっておらず、そ

のような案だけが一人歩きしていることも否めない。そして、近年、明確に問題視される

ようになったのが人員不足とゴミ問題である。人員に関しては宮まつりが当初よりエリア

が拡大したことと若い年代を中心とするまつりの参加減少という二つが重なり今、現在人

員が不足しており、ゴミ問題においてはまつり当初から問題視されてきたが近年めまぐる

しく増加し、今では一日約40トン、タッカー車5台分というゴミがまつり終了後に残さ

れているのである。資金に関しては減少しているとは言え、まつりが開催されるのに必要

な資金はある。しかし、まつりを毎年、見学している人からは以前ほどの華やかさが欠け

ているという声を出てきている。そのような状態の中、まつり企画参加者たちが望んでい

る時間延長及びまつりエリア拡大に関しては資金面の問題や人員不足といった面からも現

実には困難な状態である。今のまつりの状態で資金、人員不足が問題になっている以上、

これ以上のまつり拡大化は事実上、不可能なものといえる。今の宮まつりには様々な企業

が参加しているとは言え、宇都宮市全体から見ればまだまだ、参加していない企業が存在

している。そういった参加していない企業にまつり参加を呼びかけるのと同時に、まつり

 補助金の出資を申し出てみるのも一つの案であろう。まつりに参加しながらも仕事を行っ

ている企業がある以上、可能な手段といえる。人員特に若い年代の人々の不足に関しては

従来どおり広報誌などで宣伝するほかに市政ニュースなどのメディアを利用し、より多く

の市民、若者に今まで以上に宮まつりを意識してもらう必要がある。特に若い年代、学生

などは新聞よりもテレビなどで呼びかけたほうが効果は期待される。ゴミ問題に関しては、

まつり時にのみ複数のゴミ捨て場を設けることが必要だが、何に増しても市民のモラルが

第一の求められ、市民にゴミ問題に対して、より強い認識をもってもらうため、新聞やテ

レビで臨時の宣伝をして呼びかける必要がある。

 現在の宮まつりでは、まつりを通してこれまでに述べてきたように市役所や各種企業、

宇都宮観光コンベンション協会を始めとする開催委員会や警察、商店街や自治会などの各

団体が互いに連絡を取り合ったり、協力し合い、連結して宮まつりに参加してきた。しか

し、今日では上記に述べたような様々な問題や数多くの不参加団体や若い年代を始めとす

る市民不参加の問題などが残っている。宮まつりを通して各団体が一つになり、一つの地

域コミュニティーとして確立されつつある今、より多くの不参加団体や市民一人一人のま

つりへの参加により、まつりを通して宇都宮市が一つの地域コミュニティーとして確固た

るものになるのである。今はまだ、他のまつりに比べると規模の小さいまつりであるが、

宮まつりは市民と行政、企業などが連結して支えているまつりである。行政やメディアの

今まで以上の呼びかけなどでより多くの市民や各団体がまつりに参加することで、宇都宮

市は一つの地域コミュニティーとしてより大きく発展し、宮まつりは宇都宮市の町づくり

に大きく貢献することになるのである。そうした意味でも宮まつりは宇都宮市の地域コミュ

ニティー・町づくり確立に必要不可欠なものであり、様々な団体や市民一人一人がより強

い認識をもつことが今の宇都宮市の地域コミュニティー・町づくり確立に最も必要なこと

なのである。

 

 

*マレーシアの祭り タイプサム

    祭りの紹介、諸問題

 

 

≪参考文献・資料≫

宇都宮市役所ホームページ http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp

『第25回ふるさと宮まつり』パンフレット(ふるさと宮まつり開催委員会発行)

「地域イベント70-75」(市役所提供資料)

『ふるさと宮まつりの経緯』(市役所提供資料)

H12実績報告書」(市役所提供資料)