明星 景子

       国内観光の現状と地方自治体の取り組み

 

はじめに

1 国内観光客の現状

@       過去五年間の観光客の統計

  A 訪日外国人の観光の現状

B 観光PRの現状

C 観光が与える影響

2 地方自治体の取り組み

@       インターネットの利用

A       観光客のためのサービス

 

3 ある地方自治体の現状

@        近年の観光客の現状

A        過疎の町村の試み

 

 おわりに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめに

   日本人の余暇時間が増えるなかで、価値観が多様化し物質的な豊かさよりも、ゆとりや文化、生きがいと言った精神的な満足感をもたらしてくれるものを求めるようになって来ている。

 従来のもの作りの社会から、ゆとり観光の社会への転換が期待されている。

しかし、国内旅行は多様なニーズへの対応不足や不況による観光客の減少から、大変厳しい市場となっている。また、外国人による日本国内の旅行もPR不足や、アジア地域においては、不況のためにその数の増加は見込めない。

地方都市においては、若者の都市流入による過疎化や高齢化、不況による波をもろに受け、財政的に見ても厳しい状況にある。バブル時代にはリゾート化などに沸いた地域も、今では見る影もなく観光客の減少は続いている。

観光する側も、今までとは違った旅というものを求めはじめている。今までは、整っていて豪華な施設を当たり前のように求めていたが、最近では自然を求める傾向にある。このように、観光客が観光地に求めるものというものは日々変化しているということの現れである。

それゆえに、バブルの頃の栄光を棄て、地道にその地方の自然や遺跡をPRし、観光客を集めている地方もある。それにより、日本各地に個性的な観光都市が増えている。そのPRの方法としてはパソコンの広がりにより、インターネットを利用してのPRも盛んに行われるようになってきた。今までは、テレビや雑誌など、多くの金を使ってのPRに限られていたが、インターネットでは、少しの費用で地元の情報を世界に向けて発信する事ができるようになり、地方自治体の観光地ではさらに競争が激しくなってきている。

また、国内を観光するのは日本人に限ったことではない。訪日外国人の地方への観光PRも盛んに行われるようになってきている。訪日外国人が日本の観光産業に与える影響というものは、アジアの経済危機の時の観光地をみても分かるように無視できないものとなってきている。逆にどのくらい訪日外国人を誘致するかで大幅に経済効果というものが決まってきていると言える。このような現状を見ていくと共に、具体的な市町村を取り上げ過疎の町村が観光客誘致の為にどのような事を行っているのか調べていき、様々な角度から現在の日本全体の観光状況や地方都市による観光客誘致の状況を見ていきたいと思う。   

 

 

1章 国内観光客の現状

 第1節 近年の観光客の動向

 長引く景気の低迷の中で、従来、海外旅行に対して割高感が指摘されていた国内旅行の商品について、消費者の低価格志向に対応して、旅行会社、ホテル、旅館等の観光関連産業によって低価格の商品開発への取り組みがされたこと、航空分野において、宿泊を伴う旅行に適応する運賃の最大割引率が拡大され、日帰り旅行についても割り引き運賃に夜パック旅行が可能となった事や航空会社などにより多様な利用者のニーズに対応した料金が設定されたことと、国内航空会社事業に新規企業が参入した事で、旅行料金の一層の低廉化が進展したと考えられる。  

しかし、主要旅行会社50社の平成10年の国内旅行取り扱い額を見ると、前年比で平均23%の減少となっている。この原因としては、法人の団体旅行の落ち込みや低価格旅行商品の販売競争の激化などが考えられる。(注1

 でも最近の国内旅行者数はわずかながらも増加しているという。バブル時代は皆がこぞって旅行へと出かけていき、国内もリゾートブームに沸いた。現在の国民の旅行熱は当時ほどではないが、50代から60歳代の年齢の人の旅行が近年盛んになり、大手旅行会社のターゲットも絞られて企画されるようになってきている。一方、20・30歳代では、旅行回数は少なくても、贅沢に楽しみたいと考えている人が約6割を占め、40・50歳代に比べその傾向が強く、低価格商品と並び多様化した旅行商品が求められるようになってきていると考えられる。(2)

観光地での行動は、「温泉での休養」、「自然風景の鑑賞」が多いが、他方で「特産品の買い物、飲食」、「遊園地・レジャーランド」などの体験型の観光も人気を集めている。(1)

近年は、アジアからの観光客はテーマパークを目当てにしてくるのが大半である。

 

1章  国内観光客の現状

 第2節   外国人による日本観光

 日本への来訪者数は、年間約400万人前後にすぎない。(2)そのうち観光客は前年比1.4パーセント減の236万人、業務その他の客が4.5%減の164万人であった。訪日外国人全体に占める比率は、観光客が57.4%、業務その他の客が39.8%となった。この数は、国内総生産の(GNP)及び人口規模により国際比較すると極めて少ないことになる。受入れている外国人旅行者数をGNP10億円ドル当たりで比較すると、我が国はシンガポールの0.8%、オーストラリアの0.9%にすぎないという状況である。また、各国の人口1000人当たりでみると、オーストラリアが2424人、シンガポールが1938人と人口のほぼ2倍であるのに対し、わが国は0.028人となっていて、人口の3%弱に過ぎないと言うにが現状である。(注3

国籍・地域別の訪日外国人数は、台湾が84万人(前年比2.8%増)、次いで韓国が72万人(28.3%減)、アメリカ67万人(同7.2%増)、イギリス30万人(同29.0%増)、中国27万人(同2.5%増)の順になっている。伸び率では、中国、イギリスオーストラリアが高い伸び率を示している。

特に、東京ディズニ−ランド、長崎のハウステンボス、福岡のスペースワールド、三重のスペイン村などのテーマパークがアジアからの観光客をひきつける観光魅力となっていた。

しかし、最近はアジア経済の不調のため、特に九州におけるテーマパークは、観光客の減少という大きな痛手を受けていた。最近ではようやく観光客が戻りつつある。

このように、国内観光をする訪日外国人というには、もはや無視できない存在となってきている。このことに早くから目をつけていた企業や市町村では、訪日外国人を対象にした割引制度を設けているところもある。ヨーロッパの各都市ではかなり普及している鉄道の割引制度は、日本ではJRがジャパン・レール・パスとして発行している。ジャパン・レール・パスは、外国人観光客に対して発行されるもので、JRのすべての鉄道、バスに乗車できる乗車券である。これは日本国内では購入できない。(注4(2)

市町村では、滋賀県長浜市のカルチャーカードがある。これは、地域内の博物館、美術館、交通機関の乗車などについての割引カードである。これも、ヨーロッパの各都市では普及している制度である。

 

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 第3節  観光PRの現状

  現在の国による日本の観光PRは、在外大使館や国の各省庁で行われている。観光関連の省庁の数は30を有に超えてある。(3)

 国が行っている海外への日本のPRはの具体的な例では、海外における観光展等への参加・協力がある。これは、日本の観光宣伝を効果的に行うために、韓国国際観光展、香港国際旅行博、米国旅行業協会世界大会トレードショー、中国国際旅遊交易会、ベルリン国際旅行見本市、シンガポール国際旅行見本市など海外の有力な国際旅行見本市への出展、海外の自治体、各種団体等を通じて日本の観光魅力の紹介を行った。また、この他に各国の有力紙、テレビなどを通じた広報活動を行い、効果的な外客誘致をするために日本の各地の紹介、日本人及び日本文化とのふれあいなどの紹介や低廉観光の紹介などを行っている。

 特に、平成10年度においては、緊急経済対策の一環として、米国からの訪日旅行者の飛躍的な増大を図るために、米国におけるもっとも有望な訪日旅行市場である西海岸に重点をおき、「対米訪日旅行促進キャンペーン」を現地の有力な新聞、テレビなどを通じて総額2億円をかけて行った。

次に、観光のPRを行っている機関の例えを出してみると、財団法人に国際観光振興会というものがある。この団体の事業内容は、

(1)          外客誘致事業、

(2)          2)受け入れ対策事業、

(3)          3)日本人海外旅行安全対策事業がある(注5)。

1)は海外に向けて日本への関心を高めるために、イベントを中心とした外客誘致、海外への観光情報の発信をしている。また、具体的な訪日誘客支援をしており、国際コンベンションの誘致、国際交流の支援を行っている。

2)は訪日外客への情報提供を行っており無料電話相談や、総合観光案内所等の運営をしている。また、安い宿泊施設の紹介ではウェルカム・インやホームステイのネットワーク化にも努力をしている。

3)は海外に出かける日本人への海外安全情報の提供を行っている。

また、この他にJNTO海外観光宣伝事務所では、海外に14の事務所を開設している。 

北米 ニューヨーク・シカゴ・サンフランシスコ・ロサンジェルス・トロント 

中南米  サンパウロ

欧州  ロンドン・パリ・フランクフルト

アジア・太洋州  ソウル・北京・香港・バンコック・シドニー

以上のところに事務所を設置しており、今後も増設していく方針だと言う。

また、国内に向けての国内旅行のPRは日本観光協会が行っている。こちらは、インターネットを使って日本全国各地の情報の提供を行っている。このページではすべての都道府県の情報を見ることができ、見たい県をクリックするだけで名産品や季節の行事を知る事ができるようになっている。また、個人旅行をする人のために安いホテルの紹介から予約までできるようになっており、飛行機の予約もできるようになっている。(6)

 

1

4節 観光が与える影響

 観光は、国民生活に不可欠なものとなってきており、経済活動、地域振興、国際交流においても重要な役割を果たしている。この観光を担っている観光産業は、消費総額で245000億という大きな産業となっており、21世紀のわが国の基幹産業として期待されている。(注7)だからこそ、観光が21世紀のわが国の経済社会の発展の重要な役割を果たし、このような期待に適格に応えるためには、良質なサービスの提供をはじめとした、観光振興への総合的な取り組みが重要になってくる。

観光サービスを提供する側は、自らの観光施設にいかに観光客を集めるかを考える。一方、観光客側は、一回の旅行で色々な体験をして充実した旅行にしたいと考える。色々な期待を持って観光地を回ろうとする旅行者に対して、自らの観光施設でお金を落としてもらうために様々なサービスを提供する。旅行者は「何だか息苦しい」「もっと楽しみたい」と感じるかもしれない。

観光客を招き、楽しませ、また来てもらうためには、旅行客の立場に立っての、地域ぐるみ型観光サービスへの脱皮が必要である。観光は、地域を活発化させ、文化を発見し、創造させるものである。地域ぐるみで魅力ある観光地創りを進めることが重要である。

観光が与える影響のものとして真っ先に挙げられるのは経済である。数ヶ月前に起きた茨城県東海村で起きた原子力事故では、観光産業に多大な影響がでた。放射線汚染を心配したために、事故現場周辺だけでなく、茨城県全体に観光客が来なくなったせいである。観光客の多大な減少の為に、旅館が潰れるという被害も出ている。

また、平成7年に発生した阪神・淡路大震災によりわが国でも有数の国際観光都市である、神戸を中心とした一大観光地域を形成している阪神・淡路地域では、文化財、ホテル、旅館などに被害が出るなどの大きな影響がでた。しかし、国などの助けもあり最近ではやっと、観光客も戻ってきて平成6年の観光客数と変わり無くなってきている。(8)

このことから、観光客が特に地方の経済に与える影響というのは、絶大なものである証明になる。

一度失ってしまったイメージというものは、簡単に回復できるものではない。

大げさに言えば、観光客に接する地元の1人1人の態度でイメージは変わってくるものなので、観光地の人々というのは常々気を付けなければいけないであろう。

 

第2章                   地方自治体の取り組み

第1節   観光客へのPR方法

最近はパソコンの普及により、地方自治体の観光PRの仕方にも変化が見られる。インターネットを利用した観光PRである。今までは地方の観光PRの媒体としては、テレビや新聞や雑誌など何気に目にする機会のものであった。しかし、パソコンの普及によりインターネットで地方色を出したPRが増えてきている。その証拠に今では全都道府県において、インターネットのホームページを活用した「観光地の紹介」「観光イベントの等の紹介」「特産品の紹介」等の情報の発信・提供を行っている。都道府県の庁にアクセスしてそこから興味のある市町村に行くと言う方法もある。都道府県の庁のホームページはよくできているが、パンフレットを読んでいるのと変わらない感じがする。もし、興味がある場所の事が書かれていなかったら、個人の開設したホームページの方が良い場合がある。これらには都道府県のホームページからも行けるので、より深く観光地の情報が得ることができる。いまでは、地方を紹介したホームページは2000を超えるといわれており、こんごも益々増えていくと思われる。

また、都道府県では、観光客の平訪を促進するために、首都圏や関西圏等の大都市圏において「観光客誘致キャンペーン」を実施しており、観光客の誘致を図ると共に鉄道会社や飛行機会社とタイアップした「ディスティネーション・キャンペーン」を展開している。また、複数県による観光圏を形成し、各県共同による「観光客誘致キャンペーン」を実施している。

地方自治体は、訪日外国人の地方誘致の促進にも力をいれている。東京等の大都市を目的に来た訪日外国人を地方に観光誘致しようとするものである。

 

2章                

第2節      観光客のためのサービス

  観光地には年間数多くの人々が訪れる。その人達の多くは、訪問回数の多少に関わらず、観光資源の価値、歴史的背景、さらには、シャッターポイントなど様々な視点から、自分が訪れた観光地のことをもっと知りたいという欲求を持っている。

近年の観光客のニーズは、従来からの観光地における「もの」とのつながりに加え、地域での様々な体験、人と人との語らいなど、その地域の「人」との心のふれあいを求めるようになっている。このため、これからの観光地づくりにおいて、観光地づくりにおいて、観光客に対して「人」と「人」のふれあいの機会をどれだけ創出することができるか、ということが極めて大切な意味を持つものと考えられる。  

 そして、観光客がもたらす経済効果に頼る地方自治体は、観光客誘致のために様々なサービスを考え出している。そのひとつに観光ボランティアガイドというものがある。観光ボランティアガイドの組織は全国的に広がってきている。ここでの観光ボランティアとは、「人に自慢できる豊かで楽しいまち作りに寄与するという社会的な事業に自発的に参加する人」をさす。(注9)このサービスは、観光客が集まる名所旧所などに詳しいその土地の人が案内して回るというものである。原則的には無料で行われており、一定の成果を収めている。その他では、大きな駅前には観光案内所を設置し、日本人だけだけでなく訪日外国人にも対応できるように英語や中国語を話せる職員を配置する自治体もある。また、特定期間の無料バスの運行等は評判がよく、期間を延長するなどの配慮がなされた事例もある。

 

3章  徳島県に見る観光客誘致の現状

第1節                   近年の観光客の状態

 四国は、近年観光者数の減少に悩まされている。これといった産業もなく観光客が与える経済効果に一喜一憂する状態である。最近は明石海峡大橋の開通といった明るい話題と観光客誘致の材料に沸いたが、当初の期待よりもかなり少ない観光客数にとまどいを隠せないでいる。また、全国で唯一、高速道路が走っていなかった徳島県に高速道路が開通したものの、観光客数の増加にはつながらないでいる。

  焦点を徳島県に絞ってみると、四国に見られる地方都市の過疎化と観光客の減少に悩まされている。観光白書によると、ここ最近の徳島県を訪れる観光客数はほぼ横ばいであるという。しかし、この状態を黙ってみているわけでもない。徳島県下の市町村のそれぞれが開いているホームページの数は50を超えてあり、それぞれの自慢のものをPRしている。また、主要な駅には徳島出身の写真家によるポスターを張り、観光客誘致を図っている。しかし、四国の真中にあたる町村は、全国的にあまり知名度もなく交通の便も悪いこともあり、四国を巡る団体旅行のコースには入っていないし事もあり、観光客の誘致も非常に厳しいものとなっている。そんな中で唯一の明るい事といえば、明石海峡大橋とつながっている地域である。当初の予測よりも観光客数が伸び悩んでいるとはいえ、開通する以前とは比べ物にならないくらいの観光客が来ている事は事実である。その中でも、鳴門市では関西圏からの観光客が大幅に増加している。開通前までは、四国に車で渡るには岡山と香川県とつながっている瀬戸大橋を渡るか淡路島まではフェリーで行くしかの方法でったが、明石海峡大橋の開通により香川に流れていた観光客が徳島の方へ流れてきているということになる。関西圏の人にとって、四国が近くなったから観光しに来ているのであるから日帰り観光が圧倒的に多く、ホテルや旅館などの経済効果はあまり見込めないが、リピーターが増えることにより宿泊しての観光の増加も期待される。

 

 

3

第2節  発展する市

先に書いたように、徳島県の中でも著しく観光客が増加し施設などが出来ているのが、明石海峡大橋に近い鳴門市である。全国でも知られている鳴門の渦潮を見に来る人もいれば、最近建てられた美術館に来る人もいる。鳴門の新しい名物となったこの美術館は、鳴門市出身の企業である大塚製薬や建てたもので、世界各地にあるピカソやダビンチなどの有名な絵画を忠実に陶器の板にコピーした、最新の技術を使って創られた美術館である。これは世界で唯一の方法の美術館で、四国を巡る団体の旅行のコースにも含まれており、観光客の誘致に大いに役立っている。

また、この他にも、第二次大戦中のドイツ人捕虜を収容した施設後に建てられたドイツ館など、観光客を飽きさせることのない趣向になっている。鳴門は、飛行場からも近く交通の便も良いので今後も益々の発展が予想されている。

 

第3章

第3節   過疎の町村の試み

   四国のちょうど真中に当たる場所にある町村というのは、例外なく過疎と高齢化、財政の逼迫というのが現状である。先にも書いたが、大手の旅行会社が企画する四国をまわる観光ツアーに含まれる事はまずなく、それゆえに、観光客の獲得には個人の旅行者にターゲットを絞るしかない。このような町村では、大都市化ら観光に来る人をターゲットにした行事を企画している。海・山・川等その豊かな自然環境とともに、地域の特徴(温暖・寒冷・雪等)や文化財を利用したイベントを企画し、観光客誘致と四季を通じた観光客の平準化に努めている。

@       文化財の利用

四国の真中に近い美馬郡脇町という所では、文化財を利用した観光客誘致を活発にしている。この町が、文化財を利用して観光客誘致をしようと動き出したのは、この町で映画が撮られたことにある。町にはオデオン座という古い映画館があるのだが、大手の映画会社がこれを舞台に映画を撮影した。このことから、観光客が増えるようになった。また、映画館の近くには文化財でもあるうだつの町並みというものがある。こちらも観光客が増えると共に、ボランティアガイドや店を開店させるなど観光客の増加に力を入れている。(10)

A       文化財と自然環境の利用

四国のほぼ真中に位置する西祖谷山村というところは、自然を利用した観光客誘を図っている。この村は山の中にあるために交通の便は非常に悪い。しかし、そのために都会ではめったに見ることができない動植物が残っており、都会からきた観光客には好評であると言う。この地域は温泉が涌き出ていて秘境の湯として人気があり、またかずら橋という木と縄で編んでできた橋が観光客がここを訪れるもう1つの理由でもある。この橋を年間30万人の人が渡っている。この村では、これらの観光地をレトロ調のバスで回る定期観光バスを走らせるなど、観光客誘致を行っている。(注11

B       自然環境の利用

徳島の真中に位置する阿波町には世界的に見て非常にめずらしく国の天然記念物に指定されている自然地形がある。それは土柱というもので世界では、イタリアのチロル、アメリカのロッキーと阿波町のものの3つしか存在しない希少なものである。阿波町ではこの地形を利用して観光客の誘致を行っている。土柱の近くに多目的広場の建設や駐車場の設備の充実を計り、県外から車で来た観光客にも対応できるように準備を整えている。(12)

以上のように、過疎化や高齢化に悩む町村では観光を柱として施設などの設備ができていっている。このような町では無理をして大きなホテルや施設を建てる事はせずに、自然と共生するような形での観光誘致となっている。

 

おわりに

  今後、様々な要因によってますます、人が旅行をする機会は増え続けていくだろう。 また、観光が与える経済効果というものの価値は変わる事はないだろう。観光客が来る観光地と観光客が来ない観光地との格差はどんどんと広がっていくことになるだろう。だからこそ、地方自治体は各々の特色を生かしたPRの仕方を問われることになってくるだろうし、それが観光客数に結びついてくるだろう。その情報を伝える手段はテレビや新聞などのメディアであり、今より更に広まるであろうインターネットであったりする。旅行をしたい人が行きたいと思う所の情報を即座に知る事が出来るようになる。それには観光地の最新情報を正確、かつ迅速に利用者に伝える事が重要になってくるだろう。

また、魅力ある観光地であるために地方自治体の取り組みが益々重要になってくる。他とは違う観光地、もう一度行きたくなる観光地を目指していかなければ行けなくなるだろう。

 観光は経済を豊かにするだけでなく、町や村を豊かにする。観光だけを頼るというのもどうかとは思うが、ひとつの産業としてみれば、十分な魅力あるものだと思う。

 今後の観光産業は、人の観光に対する意識の高まりに伴い、旅行に対するニーズも変化しつつあり、観光産業は、良質なサービスの向上に努めることはもとより、観光地の最新情報を正確、かつ迅速に利用者に伝える事が重要であろうと考える。

 今は観光客が求めるものは自然などであるが、これがいつバブル時代のような華やかで完璧な施設を求め始めるかもしれない。しかし、そんな時に観光客が求めるままに自然を破壊しホテルなどのリゾート施設を建て始めてしまうようになるのだろうか。そうならないように、その土地にあった観光材料を地方自治体は探し、維持することが長い目で見たときに地元の人にとっても自治体にとってもプラスのことになるのではないだろうか。

 

 

(注1) 平成11年度 観光白書   256

(注2) 平成11年度 観光白書   54

(注3) 観光企画調査研究会編著  観光が分かる本 日本実務出版 1995 143

(注4) 高井 薫著  観光の構造  行路社 1991  61

(注5) 観光企画調査研究会編著  観光が分かる本 日本実務出版 1995 34

(注6) http://www.nihon-kankou.or.jp

(注7) 高井 薫   観光の構造  行路社 1991  115

(注8) 平成11年度 観光白書

(注9) http://www.prefu.tokushama.ac.jp

   (10)同上

 (注11)同上

 (注12)同上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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表3

 

 

 

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            1999年度卒業論文  

 

     「国内観光の現状と地方自治体の取り組み」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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